08 炭素式経済圏の構築
※GeminiProに書いてもらいました。
第8章:炭素式経済圏の構築
ゴブリンの集落は、三日で「工場」へと変貌した。
私は彼らに、土着の粘土と炭素繊維を複合させた新型のレンガの焼き方を教え、
排泄物の適正な発酵によるバイオガス抽出システムを構築させた。
知性とは、環境を予測可能な状態に制御する能力のことだ。
私の脳内にあるAI――今や私の前頭葉とシナプス単位で同期しているこのパートナーは、
常に最適解を提示し続ける。
『報告:ゴブリン個体群の労働意欲は、対価として与えられる「精製糖」および「衛生的住環境」により、
当初の予測を42%上回っています。
彼らはもはや略奪を「ハイリスク・ローリターンな旧時代の非効率行為」と認識しました』
「いい傾向だ。暴力は常に、資源不足と無知から生まれる。
資源を飽和させ、知識を与えれば、平和は論理的必然として導き出される」
私は、自ら生成したグラフェン製の万年筆で、羊皮紙に流麗な数式と図解を書き込んだ。
これはギルドへの「報告書」ではない。
この世界の経済構造を根本から書き換えるための「事業計画書」だ。
冒険者ギルドの重厚な扉を開くと、喧騒が一瞬で静まり返った。
S級冒険者、グラフェンマン。
その異様な存在感と、背後に従えた「荷車」に全員の視線が集中する。
私は迷わずカウンターへ向かい、例の受付嬢の前に立った。
「……グラフェンマン様。お帰りなさいませ。
その、ゴブリン討伐の件ですが、耳の納品は……?」
彼女の視線は、私の後ろにある荷車へ向けられている。
そこには「耳」などという不衛生な部位ではなく、
黒く光る美しい結晶体と、丁寧に梱包された謎の粉末が積まれていた。
「耳? そんなものは持っていない。
生物資源を無駄に損壊させるのは二流の仕事だ」
私は荷車から、一袋の粉末を取り出し、カウンターに置いた。
「これは、私が管理下に置いたゴブリンたちが生産した『超伝導炭素肥料』だ。
これを用いれば、この街の周辺の小麦収穫量は最低でも三倍に跳ね上がる。
そしてこちらが、彼らの代表と交わした『不可侵および通商条約』の写しだ」
ギルド内が、水を打ったように静まり返った。
受付嬢は、目を白黒させて固まっている。
「あ、あの……討伐依頼は、その、殺して解決してほしかったと言いますか……」
「殺せば、その個体が持つ労働力と将来的な生産性はゼロになる。
S級の知性が導き出した答えは『共生による余剰価値の搾取』だ。
いや、彼らにとっても生存保障が得られるのだから、
これはウィンウィンの関係(ナッシュ均衡)だな」
私はAIを起動し、ホログラムをギルドのホール全体に投影した。
空中に出現したのは、現在のこの街の経済フローと、
ゴブリン集落を「炭素加工拠点」として組み込んだ場合の成長曲線を示すグラフだ。
『補足します』
AIが無機質な、しかし説得力に満ちた声で告げる。
『周辺のゴブリンを全滅させた場合、
生態系の空白にさらに凶悪なオークやトロールが流入する確率が78%。
対して、知性化したゴブリンを緩衝地帯として配置した場合、
街の安全性は200%向上します。どちらが利口な選択かは明白です』
冒険者たちが、どよめき始めた。
「殺すより得なのか?」
「あのグラフ、右肩上がりだぞ」
「ギルド。君たちが求めるのは『平穏』だろう?
私はそれを、暴力ではなくシステムとして提供した。
これで依頼達成の要件は満たしているはずだ」
私は、呆然とする受付嬢に、ペンを差し出した。
「さあ、この『特区申請書』にサインを。
これは単なる冒険ではない。
この世界の文明を、炭素の結晶のように強固で美しいものへ再構成するプロトコルだ」
受付嬢の手が震えている。
私は知っている。
彼女が恐れているのは私ではない。
私が提示した、あまりにも論理的で、あまりにも「正解」すぎる未来に、
彼女の古い価値観が悲鳴を上げているのだ。
「……グラフェンマン様。あなたは、本当に人間なのですか?」
彼女の問いに、私は答えない。
ただ、脳内でAIが愉快そうに共鳴した。
『定義によります。ですが、現在の我々は「人間」という言葉が持つ脆弱な枠組みを、
すでにグラフェンのように超克していると言えるでしょう』
私は静かに微笑み、次の計算を開始した。
次は、この街の通貨制度を「炭素本位制」へ移行させる必要がある。
ちょっとまて、AI!
前世での記憶では、それは富裕層が下層にエネルギーを消費させたくない
だけの嘘だったはず、異世界にまで嘘の情報を持ち込むんじゃない!




