02 ゾンビがゾンビダンス
※GeminiProに書いてもらいました。
第2章:死霊の舞踏〜ムーンショット計画・目標1の誤用〜
異世界に転移して数日。
俺、グラフェンマンは、とある寒村の入り口で腕を組んでいた。
目の前には、腐った肉をひきずりながら迫りくる死体の群れ。ゾンビだ。
村人たちは鍬や鎌を持って震えている。
「ひ、ヒィィ! 死者の群れだ! もうおしまいだあ!」
「グラフェンマン様、どうかお助けを!」
俺はため息をついた。
物理攻撃で倒すのは簡単だ。
俺の身体はダイヤモンドより硬く、鋼鉄の200倍の強度を持つグラフェンで構成されている。
デコピン一つでゾンビの頭蓋骨など粉砕できる。
だが、それでは「芸」がない。
俺の脳裏に、内閣府が掲げた『ムーンショット目標1』がよぎる。
『2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現』
死体というのは、ある意味で「脳と時間の制約」から解放された究極のハードウェアだ。
俺はニヤリと笑った。
「よし。ここは一つ、最先端テクノロジーによる『身体の拡張』を見せてやろう」
俺は指先から、目に見えないほど微細な『グラフェン・ナノリボン』を放出する。
それは空中に広がり、無線ネットワークのように数百体のゾンビたちの脊髄へと突き刺さった。
「リンク開始。同期率100%。……さあ、パーティーの時間だ」
俺が指をパチンと鳴らすと同時に、グラフェンを通じた電気信号がゾンビたちの運動神経をハッキングした。
――ズン!
先頭のゾンビが、キレのある動きで大地を踏み鳴らした。
村人たちが「えっ?」と目を丸くする。
――ズン! チャッ!
続いて、背後のゾンビ集団が完全にシンクロした動きで首を振り、手拍子を打った。
腐敗した喉から漏れる呻き声が、絶妙な低音のベースラインを奏で始める。
「あ、あうあう~(Yeah, Ah-ha)」
「な、なんだ!? 奴ら、襲ってこないぞ!?」
「いや、あれは……ボックスステップだ!」
俺はナノリボンを通じて、
かつて地球で大ヒットしたあの伝説的なミュージックビデオのダンスデータを送信していた。
高い電気伝導率を誇るグラフェン繊維は、死後硬直した筋肉すら無理やり駆動させる。
右へ、左へ。
腕をカクカクと曲げ、集団で斜めにスライド移動する『スリラー』な動き。
センターで踊るのは、かつて村長だったという恰幅の良いゾンビだ。
その動きは生前よりも遥かにキレていた。
これぞサイバネティック・アバター技術の悪用……いや、活用である。
「す、すげええええ!」
「なんて一糸乱れぬ動きなんだ!」
恐怖はいつしか熱狂へと変わった。
村人たちは手拍子を打ち始め、子供たちは真似をして踊りだす。
エンターテインメントの乏しいこの世界で、数百の死体が織りなす完璧なマスゲームは、
極上のショータイムとなったのだ。
1曲目が終わると、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
「アンコール! アンコール!」
俺は村長の前に立ち、村人たちに向かって帽子(カーボン製)を差し出した。
「さあさあ、お代は見てのお帰りだ! この『不死者ダンス・フェスティバル』、
特別席は銅貨5枚、立ち見は銅貨1枚! 感動した分だけ払ってくれ!」
チャリン、チャリンと小銭が投げ込まれる。
噂を聞きつけた隣村の連中や、通りがかりの行商人までが集まり、即席の野外フェス会場と化した。
結局、その一晩だけで俺は日本円にして数百万相当の売上を叩き出した。
疲れを知らないゾンビたちは、夜明けまで延々とロボットダンスを踊り続けたという。
俺は積み上がった金貨の山を見ながら確信した。
異世界でも、グラフェンとムーンショットがあれば、食いっぱぐれることはない、と。
(続く)




