01 グラフェンマン、異世界へ行く
※GeminiProに書いてもらいました。
第1話:炭素結合は魔法より硬し
目が覚めると、そこは知らない森だった。
本来であれば、筑波の研究施設で次世代半導体の耐久テストを受けているはずだった。
だが、今の俺の視界に広がるのは、オシロスコープの波形ではなく、
鬱蒼とした緑と、なんとなくファンタジーな色彩を帯びた空だ。
俺は自分の体を見下ろした。
六角形格子状に配列された炭素原子の結合。
厚さはわずか1原子分だが、鋼鉄の200倍の強度を持つ最強の二次元物質。
よし、俺はまだグラフェンマンだ。
「まずは状況確認か……お約束のアレを試すとするか」
俺は虚空に向かって呟いた。
「ステータス、オープン」
『ピロン♪』
軽薄な電子音と共に、半透明の青いウィンドウが目の前に浮かび上がる。
やはりここは異世界。「なろう系」の法則が支配する場所らしい。
【ステータス】 名前: グラフェンマン 種族: 炭素同素体(sp2混成軌道) 職業: 夢の新素材
HP: 測定不能(物理的破壊が極めて困難) MP: 0
【保有スキル】
『二次元の極み』:厚さが原子一個分しかないため、敵の攻撃が当たらない、あるいは透過する。
『超伝導(常温)』:電気抵抗がほぼゼロ。雷魔法を無効化し、そのまま地面へアースする。
『分子切断』:あらゆる物質の結合を原子レベルで断ち切る絶対切断。
『熱伝導率5000W/mK』:ダイヤモンド以上の熱伝導で、火炎魔法を受けた瞬間に全身へ熱を逃し、即座に放熱する。
「……なるほど。チートというより、ただの物理法則の暴力だな」
俺が納得していると、茂みの奥から悲鳴が聞こえた。
テンプレだ。
間違いなく、ゴブリンかオークに襲われている美少女がいるパターンだ。
俺は地面を蹴った。
グラフェン特有の超軽量ボディ(0.77mg/m²)により、風に乗るように加速する。
第2話:物理無効スライム vs 物理最強素材
「きゃあああ! こないでぇ!」
視界が開けると、そこには予想通り、豪奢なドレスを着た金髪の少女がへたり込んでいた。
そして彼女に迫るのは、半透明のゲル状の怪物――ジャイアントスライムだ。
「グゲゲ、女、食ウ……」
「助けて!」
少女が叫ぶ。
俺はスライムの前に音もなく着地した。
「誰だ、貴様ハ!」
「通りすがりの新素材だ」
俺は名乗りを上げると同時に、右手を水平に構えた。
スライムが嘲笑うように体を波打たせる。
「無駄ダ! オレ様は物理攻撃無効! 剣も槍もすべて飲み込んデ……」
「物理無効? それはマクロな視点での話だろう?」
俺は右手を軽く振った。
何の変哲もない手刀に見える。
だが、そのエッジ部分は原子配列が鋭利に整えられた、この世で最も薄い刃だ。
――ズンッ。
スライムの体が、音もなく上下にズレた。
「は……?」
「俺の構成原子は1原子分の厚みしかない。
貴様の細胞、いや、分子の結合そのものを隙間から通過し、切断した」
「ア、アガ……ッ!?」
スライムは自分が斬られたことさえ認識できず、
分子レベルで崩壊を始め、ただの水溜まりへと還っていった。
少女が呆然と口を開けている。
「あ、あの……あなたは?」
「グラフェンマン。炭素だ」
「炭素様……! ありがとうございます!」
まあいいか。
俺は彼女に「街への案内」を要求した。
これもテンプレだ。
第3話:ギルドの測定水晶が耐えられない
街につくと、俺はすぐに冒険者ギルドへと向かった。
目的は登録。
そして、自分の実力を示して周りを驚愕させる「ランク測定」のイベントだ。
「登録ですね。では、この水晶に手を触れて魔力を流してください」
受付嬢が差し出したのは、バレーボール大の透明な水晶だった。
「魔力はないが、電子なら流せる」
「えっ?」
俺は水晶に触れた。
俺の体は、銅の100万倍の電流密度に耐えることができる。
体内に蓄積された静電気を一気に解放しつつ、生体電流を増幅させて流し込んだ。
バチチチチチチッ!!!!
「きゃっ!?」
水晶が青白く発光する。
いや、発光ではない。
過剰な電子移動により、水晶内部のプラズマが励起しているのだ。
「す、すごいです! 数値がぐんぐん上がって……測定不能!?」
受付嬢が叫ぶ。
周囲の冒険者たちがざわつき始めた。
「おい見ろよ、水晶が真っ赤だぞ!」
「あいつ、賢者クラスか!?」
違う。
これは魔力ではない。
単に水晶の抵抗値が俺の伝導率に追いつけず、ジュール熱で加熱されているだけだ。
パリーンッ!!
耐えきれなくなった水晶が粉々に砕け散った。
「す、水晶が爆発した……!?」
「古龍級の魔力だわ……!」
ギルド内が静まり返る。
受付嬢が震える手で俺にSランクのプレートを差し出そうとする。
「い、いきなりSランク認定です……! あなたはいったい……?」
俺は砕け散った水晶の破片を拾い上げ、炭素原子を再配列してダイヤモンドに変えながら答えた。
「言ったはずだ。ただのグラフェンマンだと」
こうして、俺の異世界での素材実験……もとい、冒険が始まったのである。
ムーンショット計画の目標が
「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」だとしたら、
異世界転生こそがその最短ルートだったのかもしれない。
(完)
※いえ、まだ終わりません。




