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冒険者の記録  作者: ぽんかん
5.語られた歴史
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ギルド併設の酒場は、いつも通りのざわめきに包まれていた。

木製のテーブル、少し薄い酒、雑多な笑い声。


それなのに、レイの頭の中だけが、妙に静かだった。


高司祭の言葉が、まだ胸の奥に沈んでいる。

魔王の正体。

人類の過去。

聖堂の役割。


どれも現実感がなく、それでいて重かった。


「……考えすぎよ」


先に口を開いたのは、フィーネだった。

杯を置き、まっすぐレイを見る。


「全部を理解しなくていい。

 少なくとも、今のあなたが背負う話じゃないわ」


「そうだな」


ブロムも頷く。


「俺たちは冒険者だ。

 世界の仕組みを決める立場じゃねぇ」


カイは、少しだけ間を置いて言った。


「それにさ。

 あんたは、ちゃんと自分で選んで戦ってきた」


その言葉に、レイは顔を上げた。


「誰かに命令されたわけでも、

 流されただけでもない」


「……それだけで、十分だと思う」


しばらく、誰も喋らなかった。

酒場の喧騒だけが、耳に入る。


やがて、レイはゆっくりと息を吐いた。


「……ありがとう」


今までの自分は、何者でもなかった。

ただ、巻き込まれて、流されて、戦ってきただけだ。


けれど――

それでも、ここまで来たのは事実だ。


この世界で。

この時代で。


冒険者として、生きてきた。


「俺は……これからも冒険者でいる」


声は小さかったが、迷いはなかった。


「世界がどうであれ、

 俺は俺として、この世界で生きる」


派手な理想はない。

勇者にも、救世主にもなれない。


それでも、自分の足で立ち、選び、進む。


それが、今の自分にできることだ。



翌日、冒険者ギルドでその決意を裏打ちする話が舞い込んだ。


「レイさん。こちらをご確認ください」


受付嬢から差し出された書類には、見覚えのある署名があった。


――エドガー・クロウリー。


内容は簡潔だった。

上級冒険者への推薦。

条件付きではあるが、昇格試験を受ける資格が与えられている。


「……推薦、か」


実感は薄い。

だが、これまでの戦いを思えば、不思議でもなかった。


「なお、昇格試験はパーティ単位での受験も可能です」


その言葉に、レイは振り返る。


フィーネ。

カイ。

ブロム。


迷う理由は、なかった。


「一緒に、受けてほしい」


ブロムは即座に笑う。


「今さら何言ってんだ」


フィーネは静かに頷いた。


「当然でしょ」


カイも肩をすくめる。


「ここまで来て、別行動なんてない」


レイは、小さく笑った。


これが、自分の選んだ仲間。

これが、自分の居場所。


世界の真実は、まだ遠い。

だが、進む道は決めた。


まずは、目の前の一歩から。


仲間と共に、

上級冒険者への昇格試験へ。


冒険者として――

この世界で、自分の人生を生きるために。

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