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冒険者の記録  作者: ぽんかん
4.分かたれる旗の下で
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衛星都市アルセリオス

マティアスの勧めもあり、レイたちは補給基地からほど近い皇国首都の衛星都市――アルセリオスへ立ち寄ることにした。


街に足を踏み入れた瞬間、空気の違いがはっきりと分かる。


石畳は広く、建物は高い。人の流れは途切れず、行き交う兵士や商人の数も、ラグナールとは比べものにならない。戦時下であるはずなのに、街は妙に活気づいていた。


屋台が並び、焼いた肉の香りが漂う。道具屋や仕立屋の呼び込みの声も絶えない。


「……すごいな」


思わず、ブロムが呟いた。


「戦争してる国の街って感じがしないわね」


フィーネも、周囲を見回しながら応じる。


ここは前線でも首都でもない。

だが、だからこそ――物資、情報、人材が集まる場所なのだと、肌で理解できた。


「ギルドは……あっちだ」


カイが指差した先には、ひときわ大きな建物があった。皇国の紋章を掲げた、冒険者ギルドの支部だ。


中へ入ると、その規模に圧倒される。


受付口は複数に分かれ、掲示板は壁一面に広がっている。行き交う冒険者の数も多く、装備の質も高い。ここが衛星都市であることを忘れそうになるほどだった。


「首都じゃなくて、これか……」


レイは思わず天井を見上げる。


依頼一覧に目を通していた、そのときだった。


「――君は、レイ君だろ?」


不意に背後から声がかかる。


振り返ると、そこに立っていたのは妙な男だった。


色白で、やや不健康そうな顔つき。背は高いが細く、白衣はところどころ汚れている。冒険者でも兵士でもない。だが、学者とも少し違う。


「……?」


警戒する一行をよそに、男は気にした様子もなく続けた。


「やっぱり。きっと、ここに来ると思っていたよ」


「……失礼ですが、どなたですか?」


レイが尋ねると、男は満足そうに笑った。


「エドガー・クロウリー。技術者だ。

 まあ、分かりやすく言えば……ゴーレム屋、かな」


その言葉に、レイの脳裏に古戦場の光景がよぎる。


「君たち、以前――古代型のゴーレムと戦ったことがあるだろう?」


一瞬、空気が張り詰めた。


「どうして、それを?」


カイが低く問う。


エドガーは肩をすくめる。


「アセル君に聞いたんだよ。君の知り合いだろ?」


続けて、淡々と言葉を重ねた。


「戦場跡で、正体不明の警備型ゴーレムが停止した。

 しかも、冒険者が生きて帰っている。技術者なら、興味を持つさ」


その視線が、自然とレイへ向く。


「特に君たちだ。

 “あの場にいた”人物にはね」


レイは何も言えなかった。


見抜かれたわけではない。

だが、偶然とも思えない精度だった。


「安心してほしい。危険な話じゃない」


エドガーは、少しだけ表情を引き締める。


「俺は、古のゴーレム技術の再現を目指している。

 戦時下だから、皇国から兵器転用の話も来ているが……それは別の問題だ」


白衣の男は、あくまで冷静だった。


「君たちは、実際に“動いているゴーレム”を見て、戦って、生き残った。

 机上の理論より、ずっと価値がある」


そして、口元を歪めて笑う。


「ぜひとも、君に頼みたい仕事がある」


それは命令でも、正式な依頼でもない。

ただの冒険者に向けられた、奇妙な関心。


レイは、仲間たちと視線を交わした。

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