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冒険者の記録  作者: ぽんかん
3.つかの間停戦に動く影
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(幕間)首都ギルド本部

コンコルディア自由共和国首都――

石造りの高層建築が並ぶ商業区の一角に、冒険者ギルド本部はあった。


各地方ギルドとは明らかに格が違う。

厚い石壁、広い執務室、壁一面に掛けられた地図と報告板。

ここは、共和国全土の「危険」と「仕事」が集まる場所だ。


一人の書記官が、封筒を受け取る。


差出人は、

ラグナール冒険者ギルド長 ハロルド・グレイヴス。


内容を一読した書記官は、わずかに眉を動かし、すぐ隣の執務机へ回した。


「……またか」


低く呟いたのは、首都ギルド本部の幹部の一人だった。


報告書には、簡潔に要点だけがまとめられている。


・封印されていた寺院が反応

・特定の冒険者の接近により封印が解除

・内部設備の一部が再起動

・魔人と思われる影の目撃情報と時期が一致


そして、添え書き。


――当該冒険者は、過去に同寺院内部で発見された人物。

――本人に自覚はないが、周囲の反応が顕著。


「偶然とは思えん、な」


別の幹部が地図に目を落とす。

赤い印がいくつも打たれている。


「同様の報告が、北部、西部、南方沿岸でも出ている。

 遺跡、封印地、旧神殿……場所は違うが、傾向は同じだ」


「魔王軍の動きと、重なるな」


その言葉に、室内の空気がわずかに張り詰める。


「だが、はっきりした目的は見えない。

 奪取でも、破壊でもない。

 まるで――」


言いかけて、言葉を止める。


「……確認している、ようにも見える」


沈黙。


書記官が、控えめに口を挟んだ。


「件の冒険者についてですが……

 特別扱いの要請は?」


幹部は、首を横に振った。


「いや。今は動かすな。

 ギルドとしては、通常の冒険者として扱う」


「注視はするが、囲い込みはしない」

「過剰に守れば、逆に目立つ」


全員が、その判断に異を唱えなかった。


「情報は、聖堂にも共有するか?」


一瞬、空気が重くなる。


「……必要最低限だ」

「向こうも、すでに気づいているだろう」


報告書は、分類棚の一角に収められた。

だが、その棚には、同じ色の封筒がいくつも並んでいる。


誰もが理解していた。


これは、単独の事件ではない。

そして、まだ――

表に出す段階でもない。


「動くなら、もう少し先だな」


幹部の一人が、地図を見つめながら呟いた。


赤い印の中心から、

まだ名もついていない“空白”を見つめながら。

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