表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者の記録  作者: ぽんかん
2.勇者と魔王
27/70

(幕間)均衡を乱すもの

中央聖堂の最奥。

人の声はなく、重厚な扉の向こうに、静寂だけが満ちていた。


白い床に描かれた文様は、祈りのためのものだ。

少なくとも、外から見れば。


その中心に立つ大司祭は、ゆっくりと視線を落としていた。


「……勇者召喚」


その言葉は、報告の一行にすぎない。

だが、そこには明確な“不快”があった。


許可なき儀式。

禁じられていた遺物の使用。

そして、聖堂を介さない決断。


(まただ)


人類は、危機に直面するたび、

同じ選択を繰り返す。


「英雄」という概念に縋り、

制御できない力を、安易に手に入れようとする。


大司祭は、静かに息を吐いた。


「短絡的だ」


召喚された存在は、すでに観測下にあった。

過剰な力。

不自然な適応。

そして、極めて高い生存性。


排除は、試みられている。


事故。

襲撃。

偶発的な不運。


だが、すべて失敗に終わった。


「……想定以上、か」


一方で、別の存在が思考の片隅をよぎる。


遺跡で目覚めた者。

不完全な反応。

過去の記録と、どこか近しい挙動。


重要ではある。

だが、今はまだ、優先ではない。


均衡を乱しているのは、あちらだ。


「予定を繰り上げる」


それは、怒りではなかった。

感情ではなく、判断だ。


大司祭は、静かに命じる。


「北の封印域に、役割を与えよ」


古くから用意されていた“器”が、

再び表舞台へと引き上げられる。


「旗を掲げさせる」


力による圧力。

混乱の誘発。

疑念の拡散。


直接的な破壊ではない。

人類同士が、再び互いを疑うように。


(英雄が現れれば、彼らは団結する)


ならば――

団結の理由を、失わせればいい。


大司祭は、文様の中心から一歩退いた。


祈りは、終わった。


世界は、再び動き出す。

誰かを救うためでも、

誰かを滅ぼすためでもない。


ただ――

「均衡」を取り戻すために。


そして、その計画の中で。


名もなき冒険者と、

異界より招かれた英雄が――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ