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冒険者の記録  作者: ぽんかん
2.勇者と魔王
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(幕間)皇帝の決断

――神皇国アウレリオン・皇都


大陸の中央。

数多の街道と宗教権威が集束する国家――神皇国アウレリオン。


その皇都の最奥、白亜の玉座の間に、重苦しい沈黙が落ちていた。


高い天井には聖紋が刻まれ、光を反射する柱が並ぶ。だが、その神聖さとは裏腹に、集められた家臣たちの表情は硬い。


玉座に座る男――

神皇国皇帝、レオニス・アウレリウスは、静かに報告書を閉じた。


「……各地で、兆候が一致しているな」


低く、抑えた声。


「魔物の活動活発化。

 遺跡周辺への集中。

 そして、統制された行動」


側近の一人が一歩前に出る。


「はい。

 コンコルディア自由共和国からの報告とも符合します。

 古文書に記された――“魔王復活の前兆”と」


ざわめきが走る。


その言葉は、この場にいる誰もが避けてきたものだった。


「だが、確証はない」


別の家臣が反論する。


「兆候だけで動けば、

 世界調和聖教会との関係に深刻な亀裂が生じます」


「禁忌ですぞ、陛下」


老臣が震える声で言った。


「勇者召喚の儀は、

 古代の遺物を用いた、時と空間を歪める大罪。

 聖堂の監督なく行えば、それは――」


「裏切りだ、と言いたいのだろう」


皇帝は、淡々と遮った。


場が静まる。


皇帝は、ゆっくりと立ち上がった。


「確かに、禁忌だ。

 そして、教会の意に反する行為でもある」


一歩、前へ。


「だが――」


その声には、迷いと同時に、確固たる決意が宿っていた。


「もし、魔王が復活すればどうなる?」


「国境は意味を失い、

 宗派も、条約も、理念も、すべて後回しになる」


「そのときになって、

 “決断できなかった”では済まされぬ」


家臣たちは、沈黙した。


皇帝は、拳を握りしめる。


「私は、皇帝だ」


「神皇国のためではない。

 教会のためでもない」


「――人類のために、決断する」


玉座の間に、重い空気が満ちる。


「勇者召喚の儀を準備せよ」


明確な命令だった。


「聖堂には、正式な通知は出す。

 だが、許可は求めぬ」


「これは、私の責任だ」


しばしの沈黙の後、家臣たちは膝をついた。


「……御意」


こうして、歴史の歯車は静かに回り始める。


それが、

もう一つの物語――

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