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冒険者の記録  作者: ぽんかん
2.勇者と魔王
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3.違和感

街道警備の依頼から、数日が過ぎていた。


ラグナールの街は、いつも通りの顔をしている。朝は農民が門を出て、昼には鍛冶場から槌の音が響き、夕方には酒場が賑わう。大森林の事件や、北方での出来事が、街の表面を変えることはない。


――だが、レイの内側では、わずかな違和感が残り続けていた。


胸の内ポケットに入れた、小さな水晶。


商人から受け取ったそれを、レイは「鍵」とも「遺物」とも認識していない。ただの装飾品だ。見た目は綺麗だが、価値があるようにも見えない。


それでも、手放す気にはなれなかった。


夜、宿の自室で剣を磨きながら、ふと水晶を取り出す。


淡い光を反射するだけで、何も起きない。熱も、鼓動もない。


「……気のせい、か」


そう呟いて、指先で転がす。


だが、ほんの一瞬――胸の奥が、微かに脈打った気がした。


翌日。


ギルドで依頼を確認した帰り、レイは何気なく聖堂の前を通った。扉が開いており、中から聞き慣れた声がする。


「おや、レイさん」


司祭ルシオ・エヴァンスだった。穏やかな笑みで近づいてくる。


軽く言葉を交わす。世間話の延長だ。だが、ルシオの視線が、一瞬だけ、レイの胸元へ向いた。


「……それは?」


「これですか?」


無意識に、水晶を取り出していた。


「街道で、商人からもらっただけです。装飾品みたいなもので」


ルシオは、少しだけ間を置いてから頷いた。


「なるほど……。珍しい形ですね」


手を伸ばしかけ――しかし、触れない。


「お守りのようなもの、でしょうか」


「そんなところです」


それ以上、話題は広がらなかった。

司祭は特別な反応を見せない。水晶も、沈黙したままだ。


だが、別れ際、ルシオはこう言った。


「もし、何か体調の変化などがあれば、遠慮なく相談してください」


それは、気遣いの言葉にしか聞こえなかった。


その夜。


レイは久しぶりに、夢を見た。


――白い空間。

声はない。映像も曖昧だ。


だが、遠くで、何かが起動するような感覚だけがあった。


目が覚めると、汗をかいていた。


「……また、か」


最近、眠りが浅い。だが、疲労感はない。むしろ、体は軽い。


翌日、簡単な討伐依頼に出た際も、異変は続いた。


魔物の動きが、どこか“こちらを測る”ように感じられる。気のせいだと言い聞かせても、視線が合う瞬間が、増えている。


「……考えすぎだな」


剣を振り、依頼を終える。

鍵は、沈黙したままだ。


何も起きない。

何も、分からない。


それでも。


胸の奥で、確かに何かが“待っている”。


レイは、それに名前をつけることもできず、ただ日常へと戻っていった。

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