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冒険者の記録  作者: ぽんかん
1.はじまり
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14.北の古戦場

ヴァルノスのギルドで顔を合わせた翌日、

リセルは改めてレイたちの前に現れた。


「単刀直入に言うわ」


そう前置きしてから、掲示板に手を伸ばし、

一枚の依頼書を外す。


「共同クエストの誘いよ」


内容は、北方都市ヴァルノスからさらに北。

エルフ王国との国境に近い一帯――

“古戦場”と呼ばれる場所の調査だった。


「謎のゴーレムが目撃されている」


その言葉に、フィーネの表情がわずかに曇る。


「……古戦場って」


「ええ」


リセルは静かに頷いた。


「昔、共和国とエルフ王国が共闘した戦いの跡地。

 今は街道も整備されていて、

 両国を結ぶ外交ルートになっている」


表向き、共和国とエルフ王国の関係は良好だ。

交易もあり、使節の往来もある。


だからこそ――


「その街道付近で、正体不明のゴーレムが出るのは、

 無視できない問題なの」


外交問題に発展しかねない。

リセルはそう言外に示していた。


「私はこの調査を受けてる。上級冒険者としてね」


そこまで言って、一拍置く。


「……でも正直に言うと、

 一人で踏み込むのは危険すぎると思ってね」


ブロムが腕を組む。


「謎のゴーレム、か……

 嫌な予感しかしねぇな」


「調査だけだとしてもな」


カイも慎重だった。


「レイは初級。わたしたちも中級止まり」


フィーネも小さく首を振る。


「本当に“見るだけ”で済むなら……」


沈黙が落ちる。


その中で、リセルはレイを見た。


「……でも、

 あの森を生きて戻ってきた冒険者なら、

 調査だけなら力を貸してくれると思った」


一瞬、空気が張り詰める。


「……それ、どこで聞いた?」


カイが即座に問い返す。


「大森林の件は、この街じゃまだ噂程度のはずだ」


フィーネの視線も鋭い。

ブロムは無言のまま、リセルを見据える。


「随分と詳しいな」


その視線を受け止め、リセルは小さく肩をすくめた。


「冒険者は、情報が命よ」


そう言って、掲示板に顎を向ける。


「大森林から戻った部隊。

 重傷者あり。

 不明な敵性存在。

 その場に居合わせた、見慣れないパーティ」


「少し探れば、辿り着く程度の話……だからこそ、あなたたちを誘ったのよ」


完全に納得できたわけではない。

だが冒険者にとって、その程度の情報収集は確かに“普通”だった。


レイは胸の奥に残る小さな違和感を、ひとまず飲み込む。


最終的に、条件を出した。


「戦闘になったら、即撤退」

「深追いはしない」


その条件で、共同クエストは成立した。


北へ向かうにつれ、景色は荒れていく。


草原は途切れ、

砕けた石と、

半ば土に埋もれた武具が点在する。


「……ここが、古戦場」


フィーネが静かに呟いた。


風が吹くたび、

どこかで金属が擦れるような音がする。


そして――


いた。


開けた場所の中央。

崩れた石壁の前に、それは立っていた。


人型。

だが、生き物ではない。


石と金属を組み合わせたような巨体。

関節部には、古い刻印のような模様が走っている。


「……噂通りね」


リセルが剣に手を掛ける。


「近づかないで。確認だけ」


五人は距離を保ったまま、ゴーレムを観察する。


動かない。

反応もない。


「……終わりだな」


ブロムが、安堵したように息を吐く。


「戻ろう」


その瞬間だった。


ゴーレムの目が、淡く光る。


「――っ!」


カイが叫ぶ。


次の瞬間、地面が震えた。


ゴーレムが、

ゆっくりと――だが迷いなく首を動かす。


「見つかった……!」


やむなく、撤退を前提とした戦いに入る。


だが相手は、見た目に反して異様だった。


巨体。

石と金属の塊。


それにもかかわらず、動きは鈍くない。


踏み込みは鋭く、

腕の振りに無駄がない。


「速い……!」


ブロムが歯噛みする。


「ゴーレムの動きじゃねぇぞ、これ!」


一歩遅れれば致命打。

リセルが前線で受け止めるが、一撃ごとの負担が大きい。


避けても、衝撃が骨に響く。


「このままじゃ――!」


撤退のための時間を稼ぐつもりが、

逆に押し込まれていく。


相手は、ただの遺物ではない。


“戦うこと”を前提に作られた何か――

そんな感触だけが、全員の胸に残った。


そのとき。


ゴーレムの動きが、ぴたりと止まった。


光が消え、膝から崩れ落ちる。


「……停止?」


誰も、理解できなかった。


動力切れか。

それとも、何らかの条件を満たしたのか。


「……古い警備装置だったのかもしれない」


リセルは、そう結論づける。


これ以上、確かめる余裕はない。


五人は、急ぎヴァルノスへ引き返した。


古戦場には、

沈黙した巨体だけが残される。


そして――

誰にも知られぬまま

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