表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
やりたい事
94/107

月下美人のお返し

小麦は夜、メリリーシャで買って送っていた高級なお酒を持ってロルロージュを起こさないように外へと出て行った。

広場へ向かっていると、急に立ち止まり、振り返る。

「ディンブラ」

呼びかけるとディンブラが陰から出て来た。

「ごめん、こそこそとついて来ちゃって。どこ行くの?」

「・・・月下美人がこの前のお礼をしたいって言ってくれたんだ」

「僕も行っていい?」

その申し出に小麦は少し迷ったが、返事をした。

「・・・いいよ」

「ありがとう!」


2人で月下美人の待つ広場へ行く。

「お待たせ」

月下美人はディンブラを見て少し驚いていた。

「ディンブラもいていいか?」

少し恥ずかしそうにうなずく。

「ありがとう!」

2人は月下美人に近づいた。

「なぁ、一体何するんだ?もう一度会いたい人って?」

「今朝はそう言ったけど、正確には違うの。小麦くんが会いたい人じゃなくて、小麦くんに会いたがっている人がいるの」

小麦とディンブラの頭に「?」が浮かぶ。

「どういうこと?」

ディンブラが聞き返す。

「小麦くんと関わりのあった人がね、もう一度会いたいって言ってるの」

「俺に会いたい?」

自分に指差しいぶかる小麦に、月下美人は手を胸の前で組んで、まるでお祈りをするかのような格好をする。

「私には特殊な能力があるの。それを使って、小麦くんに会わせてあげたい」

「え?」

そう言って月下美人が祈り始めると体が淡く光り出し、3人の周りを光の粒が飛び交う。

驚きながらも目で追っていると、目の前に光が集まってきた。

「あ!!みんな・・・」

「お兄ちゃん!!」

子どもが5人ほど光の中から現れる。

「だ、誰?この子達・・・」

驚くディンブラに小麦は子どもたちを見て優しく笑いながら答えた。

「俺が殺した子ども達だ・・・」

「殺した!?」

ディンブラは小麦を驚いて見る。

しかし、小麦はとても穏やかな表情をしているし、子ども達も小麦に会えて嬉しそうに近寄る。

小麦が子ども達に近寄りしゃがんだ。

「みんな・・・元気にしてたか?」

「元気だよ!」

「お兄ちゃん悲しそう」

小さな手が頬に触れるとひんやりとしていたが、とても優しい冷たさだった。

「俺は元気だよ。・・・みんなにまた会えて元気になれたよ。ありがとう」

「僕ね、お父さんにもお母さんにも会えたよ!」

「私はお姉ちゃんに会えたよ!!」

「私も!」

そして「ありがとう、お兄ちゃん!!」と子どもが抱きついた。

「そうかそうか!よかったよ!楽しそうだな!」

「うん!楽しいよ!」

「あの街よりもずっとずっと楽しいよ!!」

「お腹も空かないよ!」

「いつも暖かいんだ!」

「お兄ちゃんもおいでよ!」

子ども達の言葉に困ったように笑う。

「悪いな、まだこっちでたくさんやる事があるんだよ」

「えー!」「残念!」とびっくりしたように言った。

「それじゃあね!」

「そろそろ行くね!」

「ありがとう、お兄ちゃん!」

「頑張ってね!」

「またね!」

5人の子どもは再び光の粒となり、空へと消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ