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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
やりたい事
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お色直し

小麦と朝顔もみんなのいる場所に戻り、食事はいつもの長テーブルが置かれた広場で行う。

小麦が座っていると、撫子なでしこに連れられてお色直しをした月下美人が現れた。

「どう?2着も作る時間無かったから、2wayにしてみたの!トレーンを外して、アクセサリーと腰回りのリボンの色を変えると、印象がガラリと変わるの!!髪も下ろして、ドレスの雰囲気に合わせてみたわ!」

先程までは無地の白いサテン生地に、ふんわりとしたプリンセスライン、肩は幅広いオフショルダーなのだが、首周りには白いレースが首元まであり、腰には大きな白いリボンがポイントのクラシカルな雰囲気のドレスだった。

しかし、お色直し後はドレスはそのまま、腰元の大きなリボンと首元のリボンを同じマゼンタ色のものに変え、髪は下ろして頭にも同じ色で大きなリボンが片方についたカチューシャをつける。

リボンの周りにはポイントとしてドレスの生地と同じ白色のパールのラインが入っていた。

ブーケも白を基調とした構成だったが、今度はピンクなどをメインカラーに据えたブーケに変わっていた。

それにより、小麦の胸元にあるブートニアも同じ花で作られたものに変える。

小麦のお色直しは、ほんの気持ちだけ。

タキシード2着も時間的に無理だったので、ベストを白から黒に変えただけにした。

「すごい!」

「お姫様みたい!!」

キャメリアとシャロンが月下美人に近寄りはしゃぐ。

隣に座らせたら、照れ臭そうに小麦を見た。

「こっちもいいな!すごく綺麗!」

月下美人は嬉しそうにしていた。


翌日にはビストートや大使たちもメリリーシャに帰った。

「えー!もう帰るの?」

「あんま店閉めてるわけにはいかないからな。予約もあるし」

「大使館も留守にしてられねーし」

そこに遠くからナスタチュームが走ってきて呼び止めた。

「待って〜!!」

「あれ?ナスタチューム?」とリントンが気づく。

手前で止まって、息を整えてからお弁当を渡す。

「これ!」

そうして突き出した先は大使たちではなく、ビストート。

「え?」と戸惑っていると、マタリが口笛を吹いて肘で突きながら茶化す。

「受け取ってやれよ!」

2人して真っ赤になりながら、ビストートが受け取る。

「あ、ありがとう・・・」

「あ!ちゃんとみんなの分・・・入ってる・・・」

すると、お子ちゃまロマが横からナスタチュームに不思議そうに聞いた。

「ねー?なんでビストートなの?僕らじゃなくて?」

野暮なお子ちゃまをマタリが首根っこを掴んで引き下げようとする。

「そ、それは・・・お料理、教えてもらって〜・・・試してみたから・・・」

また真っ赤になりながら答える。

「もしかして、鶏肉のトマト肉?」

そう聞くと、照れくさそうにうなずいていた。

「わかった!楽しみにしてるよ!ありがとう!」

「お元気で。また来てください・・・」

真っ赤になる2人の横では、パーティにマタリが話しかけている。

「みんなはどうする?一緒に帰るか?」

そう聞かれてアスタとチョコが焦る中、シャロンとキャメリアが答える。

「そうだね、お手伝いも結婚式も終わったし」

「いつでも帰れるっちゃ帰れるわね」

そこで慌ててアスタとチョコがストップをかけた。

「ま、待って!」

「もう少しだけ残りたい!」

大使たちやキャメリア、シャロンが不思議そうに見てくる。

「えーと、その〜・・・」

「俺らずっと旅してたしさ、少しくらいゆっくりしていこうよ?」

そんな2人にロマがニヤニヤしながら言った。

「どーせ、ここの女子が優しくしてくれるからでしょ?非モテ共!」

「うっせー!お前だってモテないだろ!」

マタリとリントンが頷く。

「わかったよ。俺ら先にメリリーシャに戻ってるからな!」

「気をつけて帰って来てね!」

「ロマの寂しい気持ちもわかるけど、行くよ!」とパトロックがロマの肩を持って促した。

「寂しくなんかないよ!変な事言うな、パトロック!」

しかし、その横で小麦が2人の間に割り込んで、ビストートに必死におねだりする。

「せめて!せめて今日のお昼だけでも!」

「俺には飯しか求めてねーのかよ!」

ディンブラがビストートに近寄った。

「ビストート、急に呼び出してごめんね。プロに作ってもらったわけだし、お金払うよ!」

「あぁ、いいって!俺達の仲だろ?親友じゃないか!またエディブルに呼んでくれよ!」

「お金払うよ」

「いや、また呼ん・・・」

「払わせて」と食い気味に言われる。

「本当にお金はいいよ。この前小麦もロルロージュも頑張ったバイト代だ。それに、俺も楽しかったし!」

大使達と歩き出し門を出る。

結構離れたところからビストートが大声で叫んだ。

「また呼んでくれよなーーー!!!」

ディンブラはというと、背中を向けてすでに帰っていた。

マタリに小突こずかれる。

「お前もりねーな」

「ディンブラーーー!!!」

ビストートの叫びは虚しく大地に消えた。


模擬挙式から次の新月の日の朝。

小麦は月下美人の家に話し相手をしに訪れていた。

「あの・・・この前のお返し・・・させて」

月下美人が照れながら言うのに首を傾げる。

「お返し?」

「今夜、もう一度会いたい人に伝えたい事とか考えておいて」

小麦は不思議そうに月下美人を見つめていた。

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