模擬結婚式直前
模擬挙式当日。
朝から撫子の元に朝顔が来ていた。
撫子の部屋に吊っているドレスをつまらなさそうに見る。
「ねー、本当に結婚式なんてやるの?」
「当たり前よ!みんな楽しみにしてるんだから!」
朝顔が黙って拗ねる。
「何よ、朝顔?」
「新郎・・・小麦なの?」
撫子がクスクスと笑った。
「そうよ!タキシード似合うかしら?」
そんな撫子とは正反対に朝顔は黙って膨れる。
「もー!そんな顔しないの!」と言って朝顔の頬を摘んだ。
「むぅー!」
「折角の可愛い顔が台無しよ!今日はドレス来て、可愛くする日なんだから!ほら!笑った笑った!!」
「私よりも月下美人の方が綺麗だもん!!」
朝顔は泣きそうな顔でつい叫んだ。
そんな様子に撫子は1つため息を吐く。
「模擬挙式って、つまりは偽物なんだから、そんなに気にしないの!」
それでもまだ朝顔は黙って拗ねていた。
夕方、何も知らない月下美人の家に誰かが訪ねてきた。
小麦が珍しく玄関から来たのかと思い出ると、撫子だった。
驚く月下美人をよそに中に入っていく。
「さあ!月下美人!可愛くなるわよ!!」
「え!」
化粧をし、髪を結って、ドレスを着る。
最後にもう一度リップを塗って仕上げた。
「完成!」
唖然とする月下美人。
仕上がった頃に窓が叩かれた。
月下美人が恥ずかしそうに撫子に隠れる。
「月下美人!出来たか?」
撫子は笑いながら月下美人を「大丈夫、すごく綺麗だから!」と励まし、窓に近づいた。
「ほらほら、新郎新婦のファーストミートよ!」
月下美人がどこか隠れ場所を求めてオロオロする。
撫子が窓を開けると、真っ白のタキシードを着た小麦が入ってきた。
「月下美人!!」
ドレス姿の月下美人を見て黙ってしまった。
「どう?」
「・・・良い!すっごく良い!!」
そんな風に褒められてさらに照れる。
「さぁ!行くわよ!!式場へ!!」
家を出ると、目の前には葵とディンブラがいた。
「式の前に写真を撮ろうよ!」
「折角なんだ!着崩れの無い内に!」
外にはカメラとライトがすでに設置されている。
「先に記念写真!」
ドレスと髪を撫子が整え、葵の指示で体勢を作る。
小麦は右手にグローブを持ち、左手は月下美人の腰に手を添えた。
月下美人は両手でブーケを持ち、ほんの少し小麦側の足に体重を乗せ、寄りかかる。
葵がシャッターを押した。
「よし!行くか!」
式場にはすでにみんなが正装で座っていた。
その光景を見て月下美人が小麦の腕を引っ張る。
「どうした?」
「あの!・・・これ、どういうこと?」
ディンブラ達も振り返って月下美人を見た。
「驚いた?この前やりたい事を聞いた時に、結婚式に出たいって言っただろ?だからみんなで内緒で進めてたんだ!」
「わ、私・・・結婚式って・・・参列してみたかっただけなの・・・」
思わずその場にいた4人が固まる。
「・・・え?」
「自分じゃなくて・・・誰かのってこと?」
撫子の言葉に小さく頷く。
「え!?嘘!?てっきり自分のかと・・・」
「はぁ・・・小麦の言葉を鵜呑みにしたのが悪かった!」
「小麦の早とちりのせいよ!!」
「どうするんだよ、これ?」
当然のように全員から小麦が責められる。
「ごめん!」と謝るしかできない小麦。
しかし、月下美人はクスクスと笑っていた。
「だけど、私の為にここまでしてくれてすごく嬉しい!」
月下美人が小麦を見上げた。
「ありがとう、小麦くん!」
笑顔でお礼を言ってくれる月下美人につい小麦は耳まで赤くなる。
「ま、結果オーライということで!」
ディンブラと葵は新郎側の最前列に座った。




