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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
やりたい事
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新郎

そして模擬挙式前日。

葵やロルロージュにエディブル住人や大使のみんなにと、多くの人に手伝ってもらい、飾り付けをする。

「結局、みんなに手伝ってもらっちゃったな・・・」

申し訳なさそうに苦笑いをする。

「いいのいいの!」

「僕達も楽しいし!」

「それにワクワクするよね!」

飾り付けを手伝いながらダージリン、ニルギリ、ルフナが楽しそうに返した。

そこへアッサム、キャンディ、ディンブラが来る。

「お、すげーな!本格的じゃねーか!」

「よくここまで出来たな」

「みんなに手伝ってもらったんだ!」

嬉しそうにする小麦にディンブラが聞いた。

「ところで、新郎は決まった?」

「それは・・・まだ」

途端に小麦がバツが悪そうにする。

困ったようにアッサムが言う。

「あのな・・・飾りも大事だけど、そこが1番大事だろ!」

「でも候補はあげてあるんだ!月下美人より背が高くて、隣に並んでも違和感の無い品の持ち主で考えたら、ディンブラやアッサム・・・あとは葵かなって考えてる」

すると、みんながじっと小麦を見ていた。

「なぁ、思うんだけどさ、小麦が新郎したらいいんじゃないか?」

アッサムの言葉に唖然とする。

「え?・・・俺?・・・いやいやいやいや!ダメだろ・・・俺なんて・・・」

ディンブラが微笑んで返す。

「ちっともダメじゃないよ。こんなにも頑張ったんだ!」

「そんなのみんながほとんどやってくれたし・・・」

「そのみんなを動かしたのは小麦だ」とキャンディが言ってくれた。

「結婚式というのは、世間一般には人生最大の幸せなんて言われている。そんな唯一無二の時間を分かち合いたいと思える人が集まる場だからこそ、2人が笑顔になれるんだろ。だったら、その新婦の隣には、月下美人にとって一番笑顔になれる存在が必要なはずだ」

葵の言葉に小麦がうつむく。

「見た目とかじゃなく、月下美人が本当に幸せな気持ちになれるのは、俺たちじゃなくて、月下美人のために色々と頑張った小麦なんじゃないのか?」

しかし、まだ自信が無いのか顔をそらす。

「でも・・・タキシード無いし・・・・・」

つぶやく小麦に葵が笑顔で答える。

「それは俺たちも一緒・・・あ・・・・・・」

その瞬間に全員が停止した。

「新郎のタキシードが無い!!」

次の瞬間、みんなが思わず慌てて大声を出し合う。

「どうするんだ!?1日じゃ仕立てられないぞ!!」

「だからって、スーツじゃダメだし!!」

アッサムもディンブラもその事実に慌てふためく。

「お前がグダグダしてるから悪いんだぞ!小麦!!」

葵が小麦の胸倉を掴んだ。

「飾りとか勉強で忙しかったんだって!!ついうっかり!」

そこへ撫子なでしこがやって来た。

「あらあら、仲の良ろしい事で!」

「撫子!!」と男子達が声を揃える。

「タキシードを・・・お探しで?」

撫子がアタッシュケースから白いタキシードを取り出した。

「タキシードだ!」

「何でわかったの!?」

「撫子が作ったのか?」

「違うわよ!私は紳士服は専門外!どうせ小麦の事だから、新郎の事はすっかり忘れてるだろうと思って、紳士服の仕立てが得意な子に頼んでおいたのよ!」

撫子が笑ってみせる。

「流石だな、撫子」

「それで、誰のサイズで仕立ててもらったの?」

キャンディも感心し、ディンブラが問うと、キョトンとしながら平然と答えた。

「え?勿論、小麦でしょ?」

その回答にみんなが黙る。

「さ、さすが撫子・・・」

「完璧だね」

そこへカモミールとキャメリアとシャロンが来た。

「小麦ー!」

「出来たわよ!」

「花嫁さんのブーケだよ!」

綺麗にまとめられたブーケを見て驚く。

「凄い完成度!ありがとう!2人とも!!」

ナスタチュームがいないことに気づいた葵が見渡して聞いた。

「あれ?ナスタチュームは、あんなに張り切ってたのに結局ブーケ作らなかったのか?」

「ナスタチュームなら、ビストートのお手伝いをしてるわ!」

「今日の晩ご飯、人数多いしね!」

「2人の作った料理、楽しみだね!」

女子ははしゃぐが、葵と小麦が戦慄せんりつする。

『初めての共同作業・・・』

それから小麦が気づいて、ブーケを指差し聞く。

「てか、ブーケ今からって早くないか?明日の夜だぞ?しおれない?」

それにはキャメリアとカモミールが答える。

「だって、今日すごく綺麗に咲いてたから作っちゃった!」

「大丈夫!安心して!妖精に魔法をかけてもらったから!明日の夜まではもつわよ!お守りと同じ魔法よ!」

「すごいんだよ!カモミールがお祈りしたらキラキラキラーーって!!」

シャロンは両手を広げて手首を返しながらその様子を表現した。

カモミールの言葉で小麦が思い出して朝顔からもらったお守りをポケットから出し、中を見る。

「・・・あれ?花が枯れてる」

「役目が終わると枯れるの」

「永遠じゃないんだな」と寂しそうに呟く。

「枯れるから美しいのよ!」

カモミールの言葉に寂しそうにブーケを見た。

「そのブーケも、明後日には枯れるのか・・・」

また寂しそうに言う小麦に、葵がフィルムカメラを見せる。

「写真に残せば、永遠に見られるよ!」

「あ!それ僕のカメラ!!」

ディンブラが葵の手元を見て驚いていた。

「この前地下で見つけたんだ!」

「ちょっと!それ僕が撮った虫達も入ってるフィルムじゃないよね?」

ディンブラが手を伸ばすが、葵が手で制する。

「まあまあ、別のフィルムに変えといたから大丈夫だって!」

「もぉー!変えたら前のフィルムは途中でも使えないんだぞ!!まだ残ってたのに!!」

「また今度メリリーシャで買ってやるから!!」

頬を膨らまして腕を組み、葵を睨む。

そこにチョコがやって来た。

「式中の音楽は任せて!ピアノは僕が演奏するよ!」

「おう!頼むよ!あいつ生演奏をあんまり聴いたことないから、きっと喜ぶよ!!」

嬉しそうに言う小麦にディンブラが近づく。

「準備万端だね!あとは明日の夜を待つだけだ!」

「ありがとう、みんな!!」

喜ぶ小麦を見てみんなも嬉しそうにうなずき返してくれた。

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