ビストートの長所
「あ!ビストート!!」と叫ぶ小麦。
えらく疲弊しているビストートを見てディンブラが目を大きく見開く。
そして近くにいたパトロックに尋ねた。
「何でビストートがここにいるの?誰?彼を招いたのは?」
「えーと、その・・・」
パトロックが怒りを抑えつつ尋問してくるディンブラに怯える。
「ビストート!今まで門番に捕まってたのか!?」
マタリがビストートを見て驚いていると、小麦のことを指差し吠えた。
「どっかのバカが依頼しときながら門番に料理人だと申請してなかったんだよ!危うく包丁取られるところだったんだぞ!!」
「ごめん、忘れてた!」
ビストートが小麦の胸倉を掴む。
「招いたのはあのバカか!」
ディンブラが珍しく怒りを露わにしているのに葵もさすがに驚きを隠せない。
「珍しいな。ディンブラがここまで怒るとは・・・」
「当たり前だ!今までビストートとは付かず離れずを保ってきて、エディブルには踏み入れさせてなかったのに!!」
ディンブラの殺気を感じ取りこちらに気づく小麦。
「うわっ!ディンブラめちゃくちゃ怒ってる!!」
ビストートもディンブラに気付いて笑顔で近寄ってきた。
「よお!ディンブラ!!久しぶり!」
「この前会ったよ」
辟易としながら睨みつけるがお構いなしにグイグイと来る。
「俺ずっとここに来るの楽しみにしてたんだぞ!ディンブラが全然エディブルに呼んでくれないからさ!」
「だって、お店忙しそうだしさ」
そっぽを向くディンブラの隣にいた葵も挨拶をする。
「久しぶりだな、ビストート!」
「あ?」
あからさまに声音と態度が変わった。
「あのな・・・」と呆れる葵に、ビストートが辺りを見渡しながら棘のあるような口調になる。
「ここ良い土地なのに残念だよな。こんな木偶の坊さえ置いてなきゃ完璧だよ」
2人が睨み合っている横で小麦がディンブラに責められる。
「よくもビストートをこの土地に入れてくれたな!バカ!!」
「何で!?何でそんなに怒ってんの!?」
そう言ってビストートのそばへ行き、肩を持ってディンブラに向けさせた。
「だってだって、ビストートめっちゃ良い奴なんだよ!ご飯美味いし・・・口悪いし容赦も無いけど。でも、ご飯美味いし!他には・・・えっと、えっと・・・とにかく・・・ご飯美味いし!!」
「俺の価値は飯しか無いのか?」
そんな怒るビストートを置いて、小麦が必死にディンブラに頼み込む。
「ディンブラ頼むよ!どうしてもビストートの料理を月下美人に食べさせてやりたいんだ!!ビストートの料理なら、きっと他所のご飯を食べたことない月下美人でも感動してくれると思うんだ!!それに、ナスタチュームにも参列してもらいたいし!!」
少し考えたが、ディンブラはため息を吐いて背を向けた。
「わかったよ。今回だけだからね」
「ありがとう!ディンブラ!」
小麦が心の底から喜び、ビストートの肩を叩く。
「よかったよかった!ビストート、本当に料理だけは出来てよかったな!!」
「こいつさっきから人のことを料理しか出来ない無能みたいに言いやがって!!」
表情を歪めて睨みつけていたが、小麦はお構いなくビストートに喜びの表現として背を叩いていた。
こうして大使やビストートも集まり、順調に模擬結婚式の準備が整いつつあった。




