お願い
小麦が走って広場にやって来た。
「あら!小麦!」
「小麦!久しぶり!!」
「もー!寂しかったよ!」
みんなが口々に言って小麦に近寄る。
朝顔も「小麦!」と嬉しそうに反応した。
ディンブラ達も走って追いつく。
集まったところで、突然みんなの前で小麦は土下座しだした。
「お願いします!結婚式を挙げたいので協力して下さい!!」
突然のことにその場にいたみんなが驚く。
「ちょっと待って、小麦!頭上げてよ!」
撫子に言われて頭を上げた。
「結婚式って誰の?」
「月下美人の・・・」
さらにみんなが驚く。
「月下美人?」
「一応聞くけど、月下美人と誰の?」
「それは・・・決まってない」
アッサムとキャンディと葵に呆れられる。
「前からバカだバカだとは思っていたけど」
「ここまでバカとはな」
「新郎がいない結婚式って何だよ?」
ディンブラがしゃがんで小麦に聞いてあげる。
「何で月下美人の結婚式をすることになったの?」
「月下美人にやりたい事を聞いたら、結婚式に出たいって・・・」
それから少し間を置いてから話始めた。
「あいつ体弱くてずっと家にいたから、やりたいこともやれずに1人で我慢して生きてきたんだ!だから・・・」
そう言ってもう一度頭を下げる。
「どうしても月下美人の結婚式を挙げてやりたいんです!!お礼ならいくらでもするから、どうかお願いします!!」
ディンブラが微笑みながら小麦の肩を持って体を起こしてあげた。
「小麦、いくらでも手伝うよ!」
「あ、ありがとう!!お礼だって何でもするよ!!」
それには周りのみんなも賛同してくれる。
「お礼なんていいよ!」
「そうそう!仲間の為だもんね!」
「ところで、いつやるの?」
「一週間後にやる!」
アッサムに頭を叩かれた。
「バカか!準備期間短いだろ!!」
「一週間後が満月なんだ!あいつの体調が良くなる日だ!!それと、できるだけ極秘で進めたい。サプライズにして月下美人を喜ばしてやりたいんだ!」
「でもそれ、ウェディングドレスとかどうする気だ?」
「あ・・・」
葵に言われて気づく。
「大丈夫!エディブルに住む子のサイズは全て把握している、この私に任せなさい!!」
「ありがとう、撫子!!」
撫子が胸を叩いて前に出た。
「ドレスは良いとして、他はどうするの?飾り付けとか・・・」
「それは俺が一週間必死で準備する!みんなの手は煩わせないから、みんなは一週間後に正装して出てくれ!!」
撫子は1人でワクワクしている。
「腕が鳴るわね!早速、月下美人のウェディングドレスを仕立てなきゃ!!」
「頼んだぞ!めちゃくちゃ可愛いのだからな!!」
小麦の言葉を背にるんるんで家に帰っていった。
ニルギリが小麦に聞く。
「ねぇ、結婚式って何?」
「え?知らない?」
その質問に驚いて聞き返す。
「そっか、ここには結婚の概念があまり無いからね」
ディンブラの言葉に驚く。
「え?結婚ってしないの?ここの人ら?」
「そうだね。全然しないね。結婚って知識としては知ってるって感じかな。ここの人達って家族みたいなもんでしょ?だからわざわざ結婚する人っていないんだ」
「結婚式で何をするのかも知らないし、・・・そもそも結婚したらどうなるの?」
ルフナも聞いてきた。
「うーん・・・。結婚したらずっと一緒にいるな。一緒に暮すんだよ!他人から家族になるんだ!てか、それが恋愛のゴール的なところだよ!」
「へぇ!素敵!」
「恋愛のゴールかぁ・・・」
ニルギリもルフナも少女漫画好きの2人が楽しそうに言う。
「なー、小麦なんかに飾り付けとかできんの?」
「たしかに、苦手そう」
アッサムと苦笑いしたダージリンにも言われる。
「大丈夫よ!私達も手伝うわ!」
「お花もいっぱい摘んで〜、可愛いブーケ作りたい!」
カモミールとナスタチュームがはしゃぐ。
「そもそもの話だが、小麦は参列経験とか無いだろ?式の進行とかはどうするんだ?」
「あー、それは・・・」
葵に言われて考えていると、ディンブラが来た。
「それなら、本の館に行けばいいよ!あそこは沢山の本があるから、式の事だけじゃなくて、飾り付けとかも一緒に見られるよ、きっと!」
それを聞くなり、小麦がロルロージュを小脇に抱えて走り出す。
「ありがとう、ディンブラ!ロルロージュ、行くぞ!!」
「ぅわあ!!」
「大丈夫か、あいつら?」
「まあ、僕らも手伝ってあげようよ!」
葵もディンブラも不安を残していたが、見守ってやってはいた。
「小麦の・・・・・・バカ・・・」
そんな中、朝顔だけが不機嫌そうにその場に立ち尽くした。




