純粋な信者とは?
続々と信者が集まり、埋まり行く教会の椅子。
彼ら以外全員女性で、ロザの少年たちが驚いて見渡す。
「わぁ!女性だらけ!!」
「女性の方が熱心な宗派なのかな?」
なんて話していると、周りからジロジロと見られて、周りではひそひそ声で話されている。
「かわいい」や「似合ってる」などと時折聞こえてくる。
「な、なんか僕たちいけない事したのかな?」
「僕らを見てお話しされてるね・・・」
それからお祈りの時間を告げる鐘が鳴った。
シスターが例の如く写真を抱えて入ってきて、一礼後に写真を祭壇に飾る。
その人物を見てイヴ少年とガートルード少年が目を疑った。
なんとそこにはさっきまで一緒に作業をしていた葵がいるではないか!!
『そうだ!思い出した!!』
『最強のシスターの前に、葵さんが祀られてるって、言ってた!!・・・てことは!!』
「ここがカルト集団!?」と2人が小声で目を合わせて、嫌な汗を滝のように流しながら言うと、シスターがすぐに「そこ!お静かに!!」と怒った。
「すいません!!」と口を手で覆って終始緊張しながら黙る。
どうしてもみんなシスターの雰囲気と噂とのギャップに、葵が祀られているという最重要点を忘れがちなのである。
お祈り後に信者の女性たちに囲まれ、少年2人は質問責めにあう。
「ねぇ、いつから葵様の信者になったの?」
「葵様とはどこでお会いになったの?」
「2人をスケッチさせて!」
「付き合ってるんだよね?2人は!!」
限界を超えた少年たちが絶叫しながら教会を飛び出した。
「あ!待てよ!」と小麦が呼び止めたその声でみんながやっと気づき、次は小麦に集る。
「まあ、今日も来たのね!」
「私はあなたはサンスベリアのシェフ押しよ!」
「えー!やっぱり葵様とよ!」
「よく来てて健気ね!!」
「応援してるからがんばって!」
怒涛の掛け声に小麦も返す言葉を見失う。
「あ・・・いや、そのぉ〜・・・失礼します!!」
小麦もたまらなくなり飛び出した。
路地にいた少年たちを見つけて声をかける。
「見つけた!」
「小麦さん!!」
「置いてっちゃってごめんなさい。なんだか怖くて・・・」
「気持ちはわかるけど!!」と言ってると後ろからジャトロファとソルガムも追いかけて来た。
「おーい、イヴとガートルードいた?」
「あ!2人ともいるよ!」
「心配かけて悪い。2人とも無事だよ!」
小麦が気になったことを聞いてみた。
「そう言えば前から気になってたんだけど、なんでジャトロファとソルガムってあの信者たちに俺らが受けたような尋問されないの?」
「ああ、それなら、なんかぱっと見で俺たちがシスター目当てで始めの数回来てたのがバレてたみたいなんだ」
「だからモグリとして始めは入れてももらえなかったし、その後何度通っても定員オーバーで入れない日々が続いて葵様をお預け状態の時に、やっとあの美しいご尊顔を拝めたことで一気に信者になったから、みんなもその過程を知ってるから俺らがカップルとか無く、純粋な信者として認めてくれてるんだよ」
純粋な信者とは?と思わざるを得ない宗派の純粋な信者認定を受けたと言い張る2人。
「へぇ、変なの」と包み隠さず言ってると、少年たちが小麦にすがりついた。
「ねぇ、怖いよ!早く帰ろう!!」
「みんなのところに早く帰りたい!!」
小麦が困ったように返す。
「わ、わかったよ!それじゃあな、ジャトロファとソルガム!」
「おう、またな!」「気をつけて!」と見送ってくれた。
帰った2人は怯えながらみんなに事の顛末を伝えるなり、再び終始怯えていた。
「えー?そんなことある?僕らを騙すために大袈裟に言ってない?」
「それなら明日僕らで行って確かめてみようよ!」
「いいね!それじゃ、明日の出荷作業は僕らと葵さんで行こうよ!」
愚かなスプライ、ピンピ、メアが言うと葵が拒否した。
「あのな、あんなカルト集団に神として崇められる俺が3人を連れて行ってみろよ?それこそみんなが天に帰されるぞ?出荷作業は行ってやるが、教会には行かないからな。その間大使館で待機してるから終わったら来い!」
それには不満たっぷりの顔で返す。
「えー、葵さん来ないの?」
「つまんなーい!」
「ま、いっか!僕らだけでも行こ!」
翌日この3人は「三角関係のところに葵様という美しい神の存在が現れて、今は3人でその愛を争っている」という設定が一方的な尋問と見解でついてしまった。
そして案の定、絶叫しながら大使館に逃げ込み、言葉にならない言葉で葵をまくし立てる。
「ほら、言わんこっちゃない!」
葵はコーヒーを啜って呆れていた。
その様子を見ていた世間知らずのエディブル民アッサム、キャンディ、ダージリンが教会に興味を持ったとか、持ってないとか。
この悲劇が繰り返されたとか、されてないとか・・・。




