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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
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完成とお茶会

「おつかれ乾杯!!」

小麦の取った音頭は紅茶のかおるお茶会には似合わない、まるで酒の席のそれだった。

「あ、そういえばこれ食べる?」

そう言ってガートルードが出してきたのは一口サイズのクッキーだった。

「リントンに教えてもらって作ってみたんだ!でも元はビストートレシピの焼き菓子!アマレッティっていうアーモンドパウダーと砂糖とメレンゲのお菓子!香り付けにアマレットっていうリキュールを入れるからアマレッティだって!」

一口食べるとサクサク食感に程よい甘味とアーモンドの風味でクセになる。

あっという間に無くなってしまった。

というか小麦と葵がほぼ食べた。

「あ!もうラスト1個!!」

「葵!食べ過ぎだぞ!!」

「小麦さんもたくさん食べてたよ!」とメアが呆れる。

「紅茶のおかわりあるけどいる?」

「いるー!」

終始わいわいとしていたお茶の席。

そこで女性が「クスリ」と上品に笑う声が聞こえた。

ドールハウスの近くに座っていたメアだけがそれに気付いて振り向く。

だが、気のせいかと思いまたみんなの方向に視線を戻した。

その時、どこから入ってきたのか蝶々がメアの肩に止まったが、みんながにぎやかにしているので誰も気づかない。

「ありがとう」

荊姫はメアの肩を持って背後から耳元でささやいた。

その後、また蝶々はどこかへと飛んでいった。

メアにはその声は聞こえてはいなかったが、どことなく嬉しい気持ちになった。

「ねえ、みんな!」と呼びかけるとメアに注目が集まる。

「アマレッティの最後の1個はさ、荊姫さまにあげない?」

その提案にみんなは笑顔で承諾しょうだくしてくれた。

メアがカップの受け皿の端に置いてあげる。

「なんか・・・今、荊姫さまが笑ってくれた気がする!」

「みんなで作ったこのドールハウスを喜んでくれてるさ!!」

小麦が隣に行き、肩を組んでやるとメアは嬉しそうに見上げてうなずいた。


その翌日からもお手伝いに来る度に小麦も葵も荊姫のドールハウスに毎度挨拶をしてから1日が始まる。

庭の雑草を抜いて、バラを摘み、一部は生花用に、一部は花弁はなびらを取ってジャムにしたり、干してお茶にしたりと作業を手伝った。

「小麦さんか葵さん、これからメリリーシャに出荷しようと思うから、どっちかお手伝いしてくれない?」

「じゃあ、俺が行くよ!」

その役を小麦が買って出た。

イヴとガートルードと共にメリリーシャまでカゴに入れたバラや加工品を運んでいく。

「よし、これで今日の出荷は終わり!」

「小麦さんが手伝ってくれて助かったよ!ジャムってすごく重いから!」

「おう、何個でも運んでやるよ!」

その帰り道、イヴが教会を見て好奇心に駆られてしまった。

「ね、ねぇ!この前言ってた最強のシスター、見てみたくない?」

ガートルードに言うと、同じく好奇心に駆られた彼もまた頷く。

「見てみたいかも!!それにさ、いくら強いシスターでも今日は小麦さんいるから大丈夫なんじゃないかな?」

2人に期待の眼差しで見られて反応に困る。

「いや、いいけどさ・・・後悔すんなよ?」

そして教会を訪ねて、シスターに挨拶をする。

「こんにちは、小麦!そちらのお2人は?」

「こんにちは、シスター!この2人は今、俺がお手伝いに行ってる郊外付近に住んでるロザの一族の少年たちのイヴとガートルードだ!」

「こんにちは!イヴです!」

「こんにちは!ガートルードです!」

2人とも礼儀正しく挨拶をする。

だが、思ったより華奢きゃしゃなシスターだったので拍子抜けする。

2人の中ではきっとゴリラのような屈強な姿を想像していたのだろう。

「ねえ、なんか普通じゃない?」

「思ったより変なところないよね」

『バッカ!これからだよ!』

小声の会話に心の中で小麦がつっこむ。

「ロザの一族はバラを育てるのが得意で、メリリーシャに生花や加工品をおろしてるんだよ!サンスベリアにもエディブル大使のツテで生花やジャムやハーブティを入れてるから、よかったら今度飲んでみてくれよ!俺とあ・・・俺も手伝って作ったやつなんだ!」

“葵”と言いかけてやめる小麦に疑問を持つが、シスターに話しかけられてすぐに頭の中からそんなことは消えた。

「あ!そういえば最近卓上の生花にバラが置いてあるのってそういうことだったの!立派ないいバラを育ててるのね!バラのハーブティならこの前試食でビストートが出してくれたわ!いつもパンナコッタを食べるんだけど、それに合うようにビストートがブレンドしてくれてたの!!」

褒められて2人が誇らしそうにする。

「そうだ、そろそろお祈りの時間だからよかったら参列していって!」

「ありがとう、そうさせてもらうよ!」

シスターはそのままお祈りの準備で裏に回った。

「教会のお祈りって初めて!」「楽しみだね!!」などと無邪気に話している。

最前列で座って待機していると、ジャトロファとソルガムが勢いよく入ってきた。

「よっし!今日は参列できた!一番じゃないか?ソルガム!!」

「いや!誰かいる!!」

小麦が振り返って手を挙げて挨拶をすると、親しげに近寄ってきた。

「紹介するよ!こっちはメリリーシャの近郊に住むロザの一族、イヴとガートルード!」

小麦が今度はイヴたちに体を向ける。

「で、こっちはジャトロファとソルガム!どっちも俺がお手伝いに行ったところの人たちだ!」

「よろしくお願いします!」と口を揃えて言うロザの少年たちに、「よろしく!」とこちらも挨拶を交わした。

お祈りが始まるまでのしばらくの間、小麦がジャトロファ、ソルガムと話していたのでイヴとガートルードで会話をする。

そして時間が近づくにつれて続々と信者たちが入ってきた。

これが悲劇の始まりとも知らずに、ロザの少年2人はお気楽に過ごしていた。

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