こむぎ
完全に視界が回復しない中、兄弟には次の手があると言う。
出方を警戒しながら身構え、全神経を尖らせ相手と対峙していた。
その時、チェルヴェッロのケータイがポケットで鳴り響く。
「兄貴からだ。・・・兄貴どうしたの?」
戦闘中だというのに平然と出た。
「お前ら、どこにいるんだ?お使い頼んでからどれだけ時間かかってると思ってんだ?」
「兄貴が小麦連れて来いって言うから、墓地にいるよ」
するとケータイから大声が響く。
「はぁ!?馬鹿か!!小麦連れて来いじゃなくて、小麦粉持って来いって言ったんだよ!!」
「え!?え!?ウソ!ヤダ、恥ずかしい!!俺らったら、めっちゃドジっ子!!」
チェルヴェッロがアタフタとして急に赤くなる。
「お前らが朝食にフリット食べたいとか言うから小麦粉を買って来いと頼んだんだろ!・・・まさか、今小麦と接触してるのか?」
チラリと小麦を見る。
「いや!・・・まだ誰にも会ってない!」
その様子を見て小麦も近寄って聞いた。
「おい、兄貴って誰からだ?rossoの奴か?」
コルポが小麦を手で制して、口に指を1本当て「しー!」と言う。
コルポが小麦に耳打ちをした。
「兄貴、怒ると怖いから黙ってて!」
小麦が仕方なく黙る。
「おい、今の誰だ?やっぱり接触してるだろ!」
「してない!してない!今のは・・・近所のヘルハウンド!愉快な奴なんだ!」
ヘルハウンドが呆れながら人の姿に戻った。
兄弟がそんなヘルハウンドを見て黙って驚く。
「何でもいいから、接触する前に帰ってこい!今すぐだ!!」
「はい!!」
大きな声で返事をしてから電話を切った。
「と、言うわけだ」
「今までのは無かったことで!」
当然、この多方面に問題児な2人は小麦に殴られた。
顔を腫らすが挫けずに立ち上がる。
「この野郎・・・」
「マフィアに手を出すって意味、わかってんのか?」
その迫力に小麦が警戒して身構えた。
「お前は確かにあの魔王軍四天王最強だったかもしれんがな」
「そんな程度じゃあ、俺たちは引かないんだよ」
怪しく笑ったかと思うと、急に血相を変える2人。
「兄貴の方が何倍も怖いんだよ!!」
「早く帰ろう!1秒でも早く!!」
脇目も振らずに走って行ったが、すぐに帰ってきた。
「あれ!?何で!?」
「道に迷った!?早くしないと兄貴に殺される!!」
慌てふためく2人に呆れる。
「あー、もう!こっち来い!」と言って小麦が先導してやった。
「こいつら出口まで連れてくよ」
「お人好しね」
「全くだ」
フィサリスもヘルハウンドも呆れる。
「ありがとう!」「優しい!」と兄弟がついて行った。
しかし、道中「なぁ、もっと早く行けない?」「走れよ」等と後ろでうるさいのでもう一発ずつくらい殴っておいた。
「兄貴ただいま!」
「小麦粉買って来たよ!」
兄弟は顔をパンパンに腫らせて拠点に帰ってきた。
「お前ら絶対小麦と接触してきただろ」
すぐにバレ、この後ベット兄貴にも当然のように殴られた。




