1日の報告
その夜、皆が寝静まった頃に葵と小麦はディンブラの泊まる部屋に集まった。
「小麦、ロルロージュはいいのか?」
葵が見渡していないことに気づく。
「あいつはいいよ。爆睡してたし、それに妖精で年齢不詳とは言え、見た目は子どもだしな。明日にでも伝えておくよ」
「その方がいいね」
小麦がディンブラに向いて仕切り直した。
「まず、俺たちから今日あった事を言う」
ディンブラが一つ頷いて返す。
「今日、急にシスターから休みを貰った俺は葵と街に出てナンパをしてたんだ」
「は?何遊んでんの?」
早速ディンブラが半ギレの口調になった。
それには慌てて手を突き出して制する。
「まぁ、聞け!ナンパに疲れて休んでいるところに、1人の女が話しかけてきた。そいつがどこかの組織の者だったんだよ。飲み物に毒を持ってきたんだ」
「え!?」とディンブラも思わずその話に驚く。
「その女を尋問中にケータイに電話がかかってきたんだが、コルポと表記されていた。ディンブラ、この名前に何か思い当たらないか?」
葵から発せられたその名前に、ディンブラが反応する。
「コルポ・・・?どこかで聞いた名前だけど・・・」
俯き気味になり、顎に手を当てて必死に思い出そうとする。
「本当か!?」
「思い出してくれ!!」
悩むディンブラに前のめりになって2人が必死に聞いた。
「思い出した!rossoだよ!rossoの兄弟の弟だ!!」
ディンブラは思い出したように言い、顔を上げた。
「rossoだと!?」
「科学の世界ではかなり大きな組織の1つだ。十数年も前にbiancoと合併して、更に大きくなった所だ!」
葵と小麦が目を合わせる。
「あいつらがバラバラに来たということは、外見が1つの組織でも、以前の対立はそのままの様だな」
「俺たちは予想以上に大きな組織から狙われていて、その組織間の争いに巻き込まれ始めているのかもしれない」
葵がふと気づく。
「そういえば、ディンブラ!確かrossoとの繋がりがあっただろ!俺がパーティと共に魔王軍と戦う前にディンブラを介して幹部のランブルと会ったぞ!!」
「本当か!?」
小麦も前のめりになるがディンブラが制する。
「まぁ、待ちなよ。僕だって今日一日、何も無かったわけじゃないんだ」
「そうだ、ダージリンが刺されていたな。大丈夫なのか?」
葵が聞くと今日の出来事を話始めた。
「その事だけど、僕達はペットショップに行った帰りに数人に囲まれたんだ。葵くんはダージリンが多重人格者だと知ってるよね?」
葵が黙って頷く。
『原因がほぼディンブラというのも知ってる』とは口にはしなかった。
「ダージリンは前髪を上げるとセイロンという凶暴な人格が現れるんだ。顔つきも大きく変わる。その彼に助けてもらった」
「ダージリンってそんな闇を抱えてたのか・・・」
小麦が少し引き気味に呟き、葵がまた黙って頷く。
『そう、そしてその闇の原因はディンブラ・・・』とは口にはしなかった。
「セイロンが戦ってくれている時、倒れた1人のケータイを見たんだ。そしたら、連絡先の一覧にbiancoの幹部の名前があった」
2人が固唾を呑む。
「幹部が・・・?」
「その名前は?」
ディンブラが「ピエロ」と呟いた。
「ピエロはランブル同様、biancoがrossoと合併する前から幹部をしている男性だ。最近biancoの前ボスが亡くなってからは、ずっと若の側近をしているって聞いたよ。組織的にかなり信頼と権力のある人物だ」
「そんなポジションにいるんだ。そのピエロはそれなりの年なのか?」
葵が聞くと、ディンブラは神妙な面持ちで考え込む。
「よくわからない・・・。長くいるからこその立場だとは思うけど、見た目は凄く若いんだ。年齢の読めない感じ」
そこで、小麦がディンブラに対する疑問をぶつけた。
「なぁ、前から聞こうと思ってたんだけど、ディンブラは何でrossoとbiancoなんて科学の裏組織との繋がりがあるんだ?」
その質問にディンブラは言葉に詰まってしまった。




