表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
53/106

狙われる

「知っててわざと泳がせたの?」

女性が睨み返した。

「気づかなかったか?こっちはナンパしてんだぞ。女性に飲み物買いに行かすわけないだろ」

「お前が何か入れるだろうと思ってたら、案の定だったな」

さっきまでのにこやかな表情は一変して2人を苦しそうに睨みつける。

葵がエスプレッソに指差した。

「中に何入れた?睡眠薬は悪用防止のために液体に溶かすと青くなるから、こういう色の濃い飲み物に入れたりするらしいな。常套手段としてはバーで気さくに話しかけて奢られた青いカクテルだが・・・」

小麦も相手を睨みながら続ける。

「どうせこの前から俺らを見張ってる裏組織の奴だろ?女1人じゃ男2人は運べないし不自然だ。ここで毒殺としたら、青酸カリとかか?エスプレッソの濃い香にアーモンド臭は十分隠せる」

2人が立ち上がる。

「まぁ、いい。ここは人が多いから、少し離れようか」

「離れるまでは手は出さないでおくよ」

3人で店を離れ、路地に入った瞬間、女が走り出した。

ある程度離れてから走りながら振り返る。

後ろから2人が来ていないのを確認していたら、人にぶつかった。

前を見るとぶつかった相手は葵だった。

はっとして振り返り、また逃げようとしたが、葵に押さえられた上にすでに目の前には小麦からの挟み撃ちに遭っていた。

「お疲れ。メリリーシャは路地が多いから、土地勘があれば捕まえる事なんて簡単なんだよ」

「もう少し先に行けば郊外に出る。そこまでついて来てもらおうか」

そして、抵抗出来ずに郊外まで連れて来られた。


人気の無い郊外の倉庫で手足を縛られ、ケータイをポケットから取り出される。

「これで仲間に連絡は取れないな」

「さ、どこの組織なのか教えてもらおうか」

負けじと2人を睨み吠えた。

「そんなの、死んでも言うわけないでしょ!」

「そうか。じゃあ、残念だけど死んでもらうか」

「自分で選んだんだし、後悔は無いだろ」

小麦が相手の首に縄を掛けると、丁度電話がかかってきた。

画面に「corpo」と表示されている。

葵が通話ボタンを押すと若い男の声が聞こえてきた。

それはrossoの兄弟の弟、コルポの声だ。

「おいマイラ、葵ともう1人はどうした?今どこにいるんだ?」

「マイラなら俺たちと楽しくデートをしているよ」

電話の向こうでコルポが少し黙る。

「お前・・・葵か?」

「お前らはどこの組織だ?お前が答えればマイラは始末せずに帰してやるよ」

すると、マイラが叫んで引き止める。

「答えないで!!」

小麦が頭を踏み付けたら、それ以上は話さなくなった。

「聞いたか?答えるわけないだろ!バーカ!それはマイラのミスだ。マイラ自身が始末されれば、それでウチの事は漏れないし、帰された方が危険ってもんだろ!勝手に殺せ!!じゃあな!」

そう言い捨てるとコルポが電話を切った。

ケータイを耳から離して画面を見ると、沢山の数字や記号が表示され流れたかと思うと、その後すぐにブラックアウトした。

「ダメだ。使えない。証拠隠滅で何かされたな」

「切捨てが早いな。仕方ない。また別の機会にでもするか。どうせまた来るだろ」

小麦が手元に力を入れる。

2人は大きなドラム缶を近くの池に捨て、その場を去った。


大使館に戻るとマタリが先に帰っていた。

「お帰り!どうだった?女の子に声掛けるの、上手くいった?」

2人は苦笑いをして普段通りの反応をする。

「いやぁ、なかなか上手くいかないな!」

「そう簡単にマタリのようにはいかないよ!」

2人にマタリが近づいて来て、残念そうな顔を見せた。

「そうか・・・。俺も最初は連敗続きだったからな!次いけるよ!」

「ありがとう」

「また頼むな!」

マタリは2人の肩を叩いて励まし、去った。

「あれ?そういえばディンブラがいないな」

小麦が見渡す。

「さっき、ダージリンを連れてペットショップに行くって言ってたぞ」

「虫でも買いに行ってるんだろ」

アッサムとキャンディはソファーでダラダラしながら答えた。


rossoが拠点とする建物の共有スペースにて。

マイラのケータイの通話を切った後、コルポはベットに報告した。

「兄貴・・・マイラが始末された」

「・・・そうか。やはり、元四天王は一筋縄ではいかないな」

近くではチェルヴェッロがPCを打って操作する。

「できた!マイラのケータイにウィルス流しといたよ!これで使えないはずだ!」

「ご苦労」

ベットが腕を組んで考えつぶやく。

「キャラバン以来、biancoもあの2人を狙っている。ランブルが葵の裏切りに関与して面識があるとは言え、あの狡猾こうかつなピエロが相手だ。早く手を打たないとな・・・」

「何かないかな?あの2人をウチに取り込む方法。それか、biancoに渡るくらいなら始末してしまう方法」

ベットはコルポの問いかけに答えず、その後黙って考え込んだ。


その頃、ディンブラはダージリンとペットショップから大使館を目指して歩いていたが、その途中で数人に囲まれ立ち止まる。

そして、その人物たちが2人に迫ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ