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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
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ナンパ実践

ナンパの指南を小麦と葵に行い、見本と称してちゃっかり女性とのデートに成功したマタリ。

当然、彼がその後戻って来ることはなかった。

そして、「俺、行ってくる!」と後に続こうと勇み立つのは小麦。

葵の応援を背に、小麦がカフェのテラス席に座る女性に近づいた。

「こんにちは、いい天気だね」

「こんにちは」

カフェでコーヒーを飲む女性の隣に座る。

「何の本読んでたの?」

「本なんて読んでないわよ。コーヒー飲んでるの」

小麦がぎこちなく微笑む。

「オシャレな君らしいね」

「?ありがとう・・・?」

不信感しか引き出せてない小麦が腰に手を回した。

「こんな良い天気だからこそ俺たちは出会えたんだ。俺と一緒にカフェ行ってくれない?どうしてもコーヒーが飲みたい気分なんだけど、1人じゃ寂しくてさ・・・」

女性が小麦の手を叩く。

「ココ、カフェなんだけど。何なのあなた?」

「ありがとう!出直します!!」と半泣き状態で葵の元まで情けなくも逃げ帰った。

帰る時、顔を上にして涙がこぼれないようにがんばることだけは忘れない。

そんな小麦を葵が腕を組んであきれて迎える。

「ダメだった・・・」

「バカか!何でマタリのテンプレート通りに言うんだよ!?応用しろよ!!」

叱責しっせきした後、葵が小麦を退がらせた。

「次は俺が行く!」

葵は小麦が失敗した女性に近寄り、隣に座る。

「こんにちは、いい天気だね」

女性が葵を見るなり、目を見開いていた。

「?」が浮かび戸惑う葵に、女性が大きな声を出して指差す。

「きゃー!葵様!!本物が!この街にご降臨されてるわ!!しかも話しかけてくれた!!」

すると、周囲の女性達が一斉に葵を見た。

「きゃー!なんて事!!」

「立体的!しかも声も発してる!」

「動いてる!生きてる!息してるぅ!!」

「シスターの言う通り、朝、小麦粉を振りまくったら、葵様がご降臨なされるという預言が当たったわ!!」


教会ではシスターがお祈りをしている最中だった。

「はっ!」と急にお祈りをやめて天を仰ぐ。

「どうなされたのですか?シスター?」

「まだお祈り中ですよ!」

信者たちに心配されながら確信を得たように続ける。

「葵様がご降臨されたわ!」

途端に会場がざわめく。

「え?どういうこと?」と小声で信者達が言っていると、扉が開いた。

「シスター、大変よ!葵様がご降臨されたわ!!」

教会のドアを開けて呼びに来た信者にシスターが振り向く。

「やっぱり!!今朝、小麦を解放したら葵様がご降臨なされるという夢のお告げが当たったんだわ!たまには聞いてみるものね!!」

そう言うなりシスターが教会を飛び出す。

「葵様ーーー!!」

すると、続々と皆が後に続いた。


年齢問わず迫り来る女性達に葵が慌てて立ち上がり、小麦の元へ走って逃げる。

「逃げるぞ!ココはカルト集団が集っている!!」

「何これ!?」

2人は脇目も振らずに逃げていった。

「ふぅ・・・ココまで逃げたら大丈夫だろ」

「はぁ・・・はぁ・・・。まったく、お前の信者は・・・!!」

息を整えて立ち上がり、見渡す。

「ここは比較的人が少ないし、落ち着いた雰囲気の広場だから大丈夫だろう」

「なぁ、ちょっと休憩しないか?喉渇いた」

2人でオープンカフェに座ってコーヒーを飲んでいると女性が1人近づき、同じ席に座った。

グウタラしていた2人の背筋が一気に伸び、身形みなりを整え始めた。

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