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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
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信者との再会

キャメリアに召喚されたラエビガータは、リトルの核が入った後の人型の魔獣の姿で現れた。

「ラエビガータの中にはリトルが入ってるの」

その入り混じるリトルの魔力でわかるのか、張子から姿を変え、召喚されたラエビガータにひざまずき、手を組んで祈るような形を2人が取る。

「あぁ・・・カラの魔女様・・・」

「お会いしたかったです・・・」

そう言うと2人の目からは涙があふれた。

そっとラエビガータの姿をしたリトルが涙を指で拭いてあげる。

「あなたの気まぐれだったとしても、あの時に降らせていただいた雨のお陰で命拾いをしました!!」

「あの時はまだ幼かった我々ですが、あの集落で統領や副統領になるまで成長し、生きることができました!!」

2人の思いを一つうなずいて聞いてやる。

「あなたを失い我々は今、別の信仰を見つけはしましたが、あなたへの恩は誰1人忘れておりません!!」

「今ある命は全てあなた様のお陰です!!集落にあるほこらへのお祈りも、献花も毎日しております!!」

また一つ頷いてやる。

そして両手を広げて水を操り、文字を作った。

「みんなが復讐に生きていなくてよかった・・・」

ジャトロファが読み上げるとまた文字が変わった。

「小麦を許してあげてほしい。彼もまた、生きるためにしたこと」

ソルガムが読み上げるとまた変わる。

「今は私の友の大事な仲間となった。彼は以前とは違う」

「私は、友の心強い仲間となった彼を許している・・・カラの魔女様!」

小麦もラエビガータを見ると、振り向き頷いてくれた。

「リトル!俺はビストートにお前とパーティの思い出の木の実のアイスを食べさせてもらった!ビストートはお前を魔女だと知った後もすごく気に入っていた!!俺は!リトルだけじゃなくてパーティもビストートも、この2人も集落の人々の思いも全て踏みにじった!!」

ラエビガータは小麦に体を向ける。

「・・・なのに、こんな俺を許してくれるのか?」

小麦の目には涙が溜まっていた。

そんな感情的な状態の小麦に近寄り、手を腹に当ててやるとラエビガータが光り出した。

「・・・あ!俺の妖精!!魔王様からもらった妖精が・・・熱い!!」

小麦の体の周りを水が逆巻き、そして腹に当てた手に集まっていく。

「熱が・・・収まった」

また水で文字を作って見せた。

「妖精があなたの感情に反応しすぎて苦しそうだった・・・そうか。色々とごめんな」

そう言って自分の腹をさする。

「気をつけて、暴走を起こしてしまうこともある」

キャメリアが小麦に代わり読み上げた。

「わかった。気をつけるよ」

小麦はうつむいて返事をした。

その後、またジャトロファとソルガムに向き直ると、「会えて嬉しかった。ありがとう」と文字を作った後に頭を撫でてキャメリアの手の中に張子として戻った。

2人が俯いてしばらく黙っているところに、キャメリアが申し訳無さそうに声をかけた。

「・・・リトルのことずっと黙っててごめんなさい。もし、リトルに会わせて2人を傷つけてしまったらと考えちゃって・・・」

2人は首を横に振った。

「ありがとう、キャメリア」

「カラの魔女様にもう一度会えるなんて思ってなかったからさ、すっごく嬉しかったよ」

そしてキャメリアに優しく微笑んだ。

影から見ていたシスターが出て行き、声をかける。

「私からもお礼を言うわ。ありがとう、キャメリア。私の友人3人の心を救ってくれて」

キャメリアは照れ臭そうに笑顔で返した。

「さ!これからサンスベリアに行くわよ!ご飯よ、ご飯!傷に薬を塗ったのだから、次はご飯を食べて栄養補給しなくちゃ!!」

シスターが一つ手を叩いてそう言うと、みんなも頷いて立ち上がった。


そしてサンスベリアで料理をして待っていると、なんと大使達と共に葵がやって来たのだった。

「はわわわわわわ!あお、あお!葵さまぁ!!」

顔を赤くして口元に手を当てて慌てふためく。

シスターのいつも通りの反応である。

だが今日はシスター率いるジャトロファ、ソルガムも同じ反応を見せていた。

さらにはひざまずいて拝み出す始末。

「わ!何でいるんだ!?」

葵が嫌そうな顔をする。

「常連だからだよ」とすかさずビストートからの冷静なツッコミ。

小麦も困ったように仲間を拝む3人を親指で差す。

「葵さ、写真渡した方が多分こいつら現れなくなると思うけど・・・」

「無理!!絶っっっ対渡すものか!!」

「そんな!」「殺生な!!」とすがる2人を突き放す。

葵はそんな自分の(非公認)信者たちに睨み付ける。

「むごいと思うのなら俺のことは邪神か何かとして近寄らないことだな!!」

もうそれはそれは葵の意地というか、信念的なものを感じるほどの剣幕であった。

「そんな非道な葵さまも素敵!!」

うっとりとしながら言うシスターの言葉に2人も信者として目が覚め、互いに目を合わせ頷き合う。

「そうだ!どんな表情の葵さまも!!」

「美しい!!」

これは信者内で勝手に作られた教えである。

そろそろ葵教にも派閥ができそうだ。

主には右か左か・・・だろうが。

「やめろ!そもそもひざまずくな!公共の場だぞ!?立て!今から食事をするんだろ?・・・シスターも止めてください!!」

怒った後にシスターを見るとハンカチを片手にまたもや涙しているではないか。

「グスッ!・・・信徒としてまた一歩成長したわね、2人とも!!」

「これ前もやったやつ!!」

その後葵は信者の3人に穴が開くほど見守られながら食事をする羽目になったという。

小麦はリトル関係への罪悪感が薄まったかと思ったら、間髪入れずに葵への罪悪感をつのらせたらしい。

「なんかごめんな、葵。・・・いや、俺何も悪くはないんだけどさ」

葵は黙ってシスター一派を見ないように早食いで完食し早々に帰ったのであった。

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