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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
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信仰心

教会へのお手伝いに向かったはずの小麦が早々に帰ってきた。

それには葵教信者でお馴染み、ジャトロファとソルガムに追い出されたからだと言う。


小麦はあの2人に”葵教に入るまで”の流れを一通り聞いた後、「俺は何を聞かされているんだ?」とつい口に出して聞き返してしまった。

「小麦は葵さまと親しいのだろ?俺たちの集落は老若男女問わず、今ではみんな葵さまの信者なんだ!」

驚いた。

葵教はシスターの管轄かんかつであるメリリーシャを飛び出して、ジャトロファとソルガムの地元にまで及んでいたというのだ。

「みんなここまで来て信仰を深めたい気持ちは山々なんだが、距離の問題と日々の生活の問題でなかなか来れないんだ。どうか我々の集落でも毎日あのご尊顔を拝めるように写真を撮ってきてもらえないだろうか?」

言い終えると、小麦の手にカメラを握らせる。

そして最後に2人揃って一言。

「我々の望みはそれだけです」


「って言われたんだけどさ、写真撮らせて」

小麦の手にはあの2人から渡されたであろうカメラが握られている。

「嫌だよ、そんなカルト宗教の飛地とびちまつられる対象としてつらを貸すのなんか!」

しかしお手伝いとして行った先での頼み事とあって、小麦も負けじと食い下がる。

「頼むって!シスターに「小麦、信仰とは心の安らぎなの。それを一度失うことがどれだけ心が傷つくかわかる?それを癒す力が葵さまにはあるの!」なんて言われちゃったんだよ!!」

「知るか!!」

シスターの真似をしてちょっと声を高目に出しての懇願こんがんをしてもダメだった。

それ程に葵の拒否の意思も強いということだろう。

そこに、近くで庶務をしていたキャメリアが不適な笑みを浮かべながら割って入ってきた。

「小麦さん!話は聞かせてもらったわ!」

「おい、変なことすんなよ?」と葵が睨みつける。

しかしキャメリアは人差し指を立てて、「チッチッチ!」と言いながらゆっくりと左右に振った。

それから小麦に自信満々の笑みを見せて、仁王立ちを決め込む。

「ジャトロファとソルガムにリトルを会わせることならできるわよ!!」

「マジで!?」

小麦は速攻で食いついた。


そして小麦はかたくなな葵を早々に諦めて、キャメリアを連れて教会に行った。

予想外に早い帰りの小麦に2人が気付いて手を振る。

「小麦が戻ってきたぞ!」

「さすが元四天王!仕事が早いなぁ!!」

すごく嬉しそうな2人の前までやって来た。

その後、ジャトロファとソルガムにキャメリアを会わせる。

「実は・・・」と言いかけると、先に2人の方が反応していた。

「あ、キャメリアじゃないか!」

「久しぶりだな!元気だった?」

「ええ、おかげさまで!2人も元気そうね!」

予想外に親しい仲だったことに驚く。

「知り合いだったの?」と手を交互に差して聞いた。

「ええ、メリリーシャで何度か会ってるわ!近郊の集落の統領がジャトロファで、副統領がソルガム!」

キャメリアの紹介に、ジャトロファとソルガムはお互いに肩を組み合った。

「肩書はあるけど、俺たちは兄弟のように育った仲だから対等なのさ!」

自慢気に言い放つジャトロファ。

それから不思議そうに小麦について来たキャメリアを見た。

「そうそう、なんでキャメリア連れて来たの?葵さまの写真は?」

ソルガムが聞いてどう見ても写真を持っていない、手ぶらの小麦を観察する。

そこで、キャメリアが口を開いた。

「今日はね、2人にリトル・・・カラの魔女に会わせてあげようと思って来たの」

「え?」と2人が驚いた顔をキャメリアに向けた。

「カラの魔女様に・・・?」

「どういうこと?」

驚く2人に、腰に提げた魚の形をした張子はりこを持ち上げて見せた。

「この子は私が契約している妖精のラエビガータよ。リトルがきしめん時代の小麦さんに倒された後、核である鳥の姿になって私の所まで来て、ラエビガータに取り込まれたの。そして今でも力を貸してくれてるわ。だから・・・」

一息区切ってから祈るように張子に魔力を込めてラエビガータを召喚した。

ラエビガータはリトルの核が入った後の、人型の妖精の姿で現れた。

「ラエビガータの中にはリトルが入ってるの」

驚くように見上げ続けるジャトロファとソルガムにそう告げた。

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