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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
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最若手の代打

ピモンとカネルのデビューは散々な結果となった。

最若手(シャロンのような10代前半)によるナイフ投げは1つしかカネルを拘束する板にナイフが当たらないし、さらには相方のカネルはステージ上で気絶してしまうという始末。

2人とも固まったままパーティに引き下げられていった。

だが、引き下げたはいいが、客席からはブーイングの嵐が巻き起こり、裏では対応に慌てふためいている。

「カネル!大丈夫!?」

「起きて!!」

拘束具を外し、気絶したカネルが下された。

その間も観客からブーイングで空き缶なりなんなりと投げ込まれている音が聞こえる。

「とりあえず、医務室へ運んでくる!」

ピモンがカネルを背負って連れて行く。

「どうしよう!誰かステージを繋げて!」

サーカス団団長のアニスエトワレが悲痛な叫びをした。

そこでアスタが気づく。

「そうだ!葵と小麦!お前らの身体能力なら何かできるんじゃないのか!?」

「そうよ!さっき玉乗りしながら逆立ちやバランスボードでジャグリングしてたし!」

キャメリアにも言われ、2人が身を引く。

「いやいや!無理だって!」

「そもそもこの格好じゃ無理だろ!!」

2人は私服そのもの。

こういった興行では世界観は命なのである。

非日常を提供する側が、日常感にあふれた格好で出ていくのは御法度ごはっと

そこで、シャロンがアニスエトワレに聞いてみた。

「アニスエトワレ、何かステージ衣装のあまりとか無い?」

「うーん・・・あ!さっきの2人の衣装の予備ならあるわ!」

黙ってアニスエトワレを見ていると走って取りに行き、真剣な顔で渡された。

外からは次第に怒声が聞こえてくる。

「ほら!早く!!」

「あ、ちょっと!!」

2人は背中を押されてカーテンで仕切った更衣室に入らされる。

そして仕方なく子ども用のレオタードを着るマッチョ2人。

「無理無理無理無理!!」

「入るわけないだろ!!」

そんな声が響いた後、出てきた2人は悲惨だった。

腰回りがカボチャパンツ状のレオタードをなんとか腰までしか履けていない。

「上半身を何とか着るから、仮面でも何でもいい!俺らの顔を隠す物を用意しろ!」

「何かしらの組織とか関係ない!こんな格好で出られるか!!」

ロルロージュが「小麦さん・・・」と不安気につぶやく。

「ぅおおおお!!」

葵は気合で何とか両肩に肩紐を掛けれたが、小麦は諦めた。

「お前、よく入ったな」

「お前は諦めんなよ!!」

葵は諦めた小麦に怒りを覚える。

「葵さん!小麦さん!お待たせ!!」

そう言ってチョコが持ってきたものは、茶色の紙袋に目の部分に2つ穴を開けただけのものだった。

それを被される。

「おい。喧嘩売ってんのか?」

「ごめんよ!それしかなかったんだ!!」

「嘘つけ!もっとあっただろ!!」

小麦と葵がチョコを締め上げる。

身長の高い2人に胸ぐらを掴まれて持ち上げられたチョコの足は空中でジタバタとせわしく動いていた。

「そんな事より!早く行って!!」

2人は団長のアニスエトワレに急かされ、ステージ上に仕方なく出て行った。

後からせかせかとパーティが拘束具付きの板をさっきと同じ位置に運ぶ。

会場はというと、どよめきが起こっていた。

子ども用レオタードを変な着こなしで現れたマッチョ2人を見てのどよめき。

・・・当然である。

「へ、変態だ!!」

「変態が出てきたよ、兄貴!!どういう事!?」

「し、知らん!俺に聞くな!」

ベットは左右の兄弟に揺らされる。

エディブルメンバーはというと、みんなで爆笑していた。

「葵と小麦何してんの!?」

「あっはははーーー!!」

「もう、最高!!」

「何て格好してんのーー!!」

アッサムにディンブラやキャンディ、ダージリンが腹を抱えて笑っていた。

みんな的にはこんなアホな格好してまで出て来るのはあの2人しかいないという確信があったのだろう。

つまり、あれだけがんばって履いたレオタードも、チョコが締め上げられた紙袋も、知人の前では変装として意味をさなかったのだ。

画面の向こうにいたピエロも目を丸くしてステージの映像をかぶりつく様に見る。

「う、嘘だろ!?」

如何いかがなされましたか?」

部下が近寄ると「変態がいる・・・」と呟いた。

そう言われて部下もステージを映したモニターをのぞき込み、思わず感想を口に出す。

「このキャラバンは正気ですか?」

「知らん。・・・あれ?そういえば、裏方の葵ときしめん似の男が消えたぞ。手元にある魔王軍の資料を見返している内に見失ったか・・・」

「探して参ります!」

そう言い残して部下が出て行った。

残されたピエロはステージに現れた変態たちのによってき乱されたサーカス団の顛末てんまつを黙って見守ることにした。

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