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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
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エピスキャラバンの新人団員

「ピエロ様、ご報告致します。本日の公演にrossoのベット、チェルヴェッロ、コルポの3人が来ています」

科学の世界二大裏組織の一つ、biancoのボスである若の側近兼幹部のピエロがVIPルームの椅子に座っていた。

「そう、是非楽しんでもらって。それで、ギルドの疑似餌ぎじえの方は?」

「例のパーティ達がチケットを渡した席には、メリリーシャでエディブルの花園との外交をする駐在大使達と、あとは一般人が4人です。目的の元四天王葵の姿は確認できませんでした」

「そっか・・・今回は釣れなかったか。残念」

ピエロがため息を吐く。

「ペッパー砂漠であのパーティが葵やパルフェとつるんでいたと報告があったから、そうめんから助けたここの広報を探して、スポンサーになって泳がせたんだけどな・・・。若に何て報告しようか・・・」

頬杖をついてつぶやくピエロに部下が続ける。

「しかし、ギルドで雇った人数が4人のはずが、7人になっているとのことで、今確認しております」

「へぇ。3人増えたの?監視カメラの映像はある?」

ピエロが興味を持った様子で顔を上げた。

すぐに部下がノートパソコンを運んで、映像を見せる。

「こちらです」

「子どもと大人2人・・・ん?・・・・ヒットだ!!こいつが葵だ!!」

画面に食らいつく様に見て喜んだ。

しかし、もう1人を見てあごに手を当てて眉を近寄せる。

「だけど、もう1人の方は?」

「詳細は不明です」

ピエロがしかめて傾げた。

「誰だっけなぁ?・・・どっかで見た事があるんだ」

葵と搬入を手伝う小麦をまじまじと見ていた。

すると、何かに気づき顔を上げ、大きな声を出す。

「思い出した!元うどんと名乗っていた時のきしめんだ!!だけどそんなのありえない!!」

その言葉に部下も不可解な顔をする。

「きしめん・・・ですか?きしめんならもっと恰幅かっぷくが良いはずですし、それに魔王と共に死んだはずでは?」

そんな部下を睨みつけ、怒ったような口調で命令する。

「そうだよ!だからありえないと言っている!アニスエトワレに連絡を取れ!この男が何者なのか聞き出すんだ!!」

「かしこまりました!それでは、rossoの3人はどうしましょうか?」

部下の質問にも的確に答える。

「あの3人は予定通り、一番長い最後の暗転で暗殺すればいい!特に、ベットは潰しておきたい!あいつは勘の良い男だ。下手をすればこっちが兄弟を使って招いた事も察知した上で来ている可能性もある!」

言い終えると、再び画面を見て口角を上げ、怪しく笑う。

「エピスキャラバン、なんて良い疑似餌だ!!大物揃いじゃないか!!」

ピエロは立ち上がってガラス窓越しにステージを見下ろしていた。


小麦と葵が道具をカーテンの手前まで運ぶ。

「ココからはお前らが運べ」

小麦の指示にパーティ全員が「えー!!」とブーイング。

「俺らはここまでずっと運んだんだ。それに、そっちには制服があるが、俺らには無い。さっさと行け!!」

「ちぇー」

葵に言われて仕方なく4人がカネル付きの板とナイフの入ったカートを運んだ。

ステージ上に出た途端、歓声が上がる。

「あ!アスタ達だ!!」

「シャロンちゃーん!キャメリアちゃーん!!」

ロマとアッサムが嬉しそうに叫んだ。

板に貼り付けられて怯えたカネルと、ガチガチに緊張したピモンが出てきた。

ピモンは同じ方の手足を出してステージ中央まで歩いて行くと、ぎこちなくお辞儀をする。

そして、アニスエトワレのナレーションが響いた。

「さぁ、お次に皆様を楽しませてくれるのは、ウチの最も若手によるナイフ投げです!投手のピモンと相方のカネル!」

大きな歓声に引きつった笑顔で手を振る。

「本日がデビューなので、みなさん温かく見守ってください!」

最後に付け足すと、さっさと引き下がった。

そして、板との距離を取ったピモンがナイフを構えた。

カネルが目をつぶる。

ピモンは深呼吸をして、己を落ち着かせてから振りかぶって投げた。

裏方でも固唾を呑んでそれを見守る。

だが、ナイフは全く別の場所に飛んでいった。

続けて投げると、1つはカネルの顔の真横に刺さったが、カネルは全く動じない。

「すごい!本当に本番に強いんだ!」

「全く動じてないよ!」

「きっとお互いを信じてるんだね!!」

「一本以外は全然違う所にナイフが飛んでるけど、成功なんじゃないの?」

そう、ピモンのナイフは顔の真横に刺さったもの以外、全く別の場所に飛んでいた。

裏方の奥でナイフが転がる“カラカランーー”といった軽快な音が鳴り響く。

だが、超絶大目に見たら成功なのかも?とパーティが嬉しそうにしていた。

「あれ?でもカネルの様子が変ね。全然動かないわ・・・」

キャメリアの気づきは、裏方のみでは収まらなかった。

観客も次第に異変に気づき、歓声が落ち着いてゆく。

「もしかしてあれ・・・」

「気絶してるな」

小麦と葵が冷静に状況を見る。

rossoの3人組も呆れていた。

「あれ?動かないね」

「相方気絶してるけど、どうすんの?」

「biancoもよくこんなサーカス団に投資したな」

チェルヴェッロがしかめ面をするベットに向く。

「そういえば聞けてなかったけど、兄貴はbiancoがキャラバンに投資した目的って何だと思う?」

「人探しだろ」

「人探し?誰を?」とコルポも続けて聞いた。

「さあ?そこまではわからんが・・・これだけ人が集まるんだ。どこかの組織の人員を潰せるんじゃないのか?暗転した時に暗殺したり。・・・例えば俺らとかな」

ベットの推理に兄弟が固唾を呑む。

「ま、まさか!」

「俺らは人から譲って貰ったんだって!!」

慌てて正当性を見出すために言い訳をする。

「どこの誰からだ?そいつがbiancoに買収されていたら?お前らの事を知っていてわざとチケットを渡せば、俺らの居場所も簡単に分かる。暗転を使えば殺すのなんて簡単だよ」

ベットに対して、今度はチェルヴェッロが顰める。

「もしかして兄貴、それを分かった上でここに来たの?」

「そうだ。だが、それ以上にbiancoの目的が気になる。俺らはついでで、別に目的の人物がいるのかもしれない」

その言葉に兄弟揃って『俺らはついでに殺されるんだ・・・』と少し虚しさを覚えたとか。

まぁ、それも仕方のないこと。

何故ならこの3人は所詮大組織の下っ端なのである。

相手幹部に目をつけられるだけ、マシなんじゃないかと。

「もし、本当に人を探しているのなら、そいつが誰なのか?複数人なのかとかも色々気になる所だな」

ステージではピモンとカネルが慌ててパーティに引き下げられていた。

「ま、そんな奴がいるとすれば、客席というよりは裏方に案外いるかもしれんな。裏方の方が人目につかずに事を運びやすいだろ?」

「あの搬入のチビ達とか?」

「まさか!」

兄弟は軽口を叩いて笑っていたが、ベットはパーティ達をよく観察していた。

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