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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
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エピスキャラバン開幕

メリリーシャ郊外には科学の世界の二大マフィアの一つ、rossoが拠点とする建物がある。

その組員の1人、茶髪でオールバックヘアが特徴的なベットが、建物の自室でゆっくりしていたところに、部屋の鍵穴を何やらイジる音が聞こえる。

しばらく黙って無視していたら、途中ガチャガチャとノブを回しては、再び鍵穴をイジる音がする。

あくびをしたり、新聞を読んだりしていると、ようやく手下の兄弟が勝手に鍵を開けてあわただしく入ってきた。

「兄貴兄貴!ベット兄貴!」

「大変だよ!!」

この兄弟は以前、人違いでアスタに機関銃なんて貴重で高価な武器を渡してしまい、ベットに頭を殴られている。(この程度で済んだのは、奇跡かと)

イライラした表情と口調で兄弟に怒る。

「勝手に入って来るな!鍵を掛けてたはずだろ?鍵に何してたんだ?」

ベットが兄弟に勢いよく振り向くと、ヘラヘラとしながら2人は言い返してきた。

「あははは!鍵だって?そんなの、俺達のピッキング技術の前には取るに足らない番犬だったよ!」

「つい最近、マンガで読んで練習したんだ!」

そう言って得意気に針金を見せびらかす。

「お前らはいらん事ばっか覚えやがって・・・。それで、用件は?」

あきれながらベットが聞くと、弟のコルポがチケットを取り出した。

「サーカスのチケットを手に入れた!」

「しかも3枚!だから兄貴もどう?」

その途端、兄弟の目の前にやってきたベッドに同時に頭を叩かれる。

「行かねーよ!!それだけの為にいちいちピッキングまでして人の部屋来んな!!」

背を向けて戻ろうとするところに、兄弟が必死で引き止める。

「ちょっ!聞いてよ兄貴!!」

「biancoが絡んでるんだって!!」

その言葉にベットの目つきが変わった。

「どういうことだ?」

「biancoが最近魔法の世界のサーカス団のスポンサーに付いたらしいんだ!」

「明確な目的は不明だけど、そのサーカス団のチケットを入手したんだよ!」

ベットがチケットを手に取ってよく見る。

「これ、いつの公演のチケットだ?」

すると2人が満面の笑みで同時に「今日!!」と答えた。


「凄い人だね!」

「エディブルじゃ見られない光景だな・・・」

「ほんと、すごいよな・・・」

ダージリン、キャンディ、アッサムが見渡して人の多さに驚く。

人口が少ない上に流動も皆無かいむな環境である花園に生まれ育った者からすれば、サーカスのような方々(ほうぼう)から人が集まる催事は、緊張感を与えるほどの人の多さだ。

しかしキャンディは年に一度くらいは、メリリーシャの爬虫類イベントなんていうコアなものに参加してるはずなのに、この人の多さにはいまだに目を丸くするという。

それほどにメリリーシャという大都市は人口が多いのだ。

辺りを見渡してマタリがつぶやく。

「パーティや葵達は裏にいるんだな」

「あいつらもこっちで見ればいいのに。勿体無いよね」

ロマがどこかねて腕組みをしていた。

「パーティだけじゃなくて、葵と小麦もいないから寂しいんだろ?」

「別に!そんなんじゃないよ!!」

まだ他の人に比べると幼いロマは、マタリにいじられ頬をふくらませてそっぽを向いた。

そして開演の合図が鳴り響き、燕尾服をまとった女性がマイクを持って現れる。

「ごきげんよう、皆様!本日はようこそおいでくださいました!私はエピスキャラバン団長、アニスエトワレです!本日は沢山楽しんでいって下さい!!」

女性の団長がスポットライトを浴びて挨拶をすると、客席から歓声と拍手が上がった。

団長が一礼をしてから退くと同時に、道化師が出てきてジャグリングや玉乗りを繰り広げる。

その後、次々と猛獣使いや空中ブランコ、綱渡りなどが披露された。


「わぁ!凄い!!」

「かっこいい!!」

裏ではアスタ達パーティとロルロージュもカーテンからこっそりと覗いて楽しんで見ている。

すると、その背後から掛け声と、大きなボールが軽く地面に押し付けられる音がする。

「よっと!」

声と音に振り返ると、小麦は大玉の上で逆立ち、葵はバランスボードに乗ってジャグリングをしていた。

「こっちも凄い・・・」

「ワオ・・・」

それにみんなが口を開けて見惚みとれる。

「葵さんと小麦さん、見ないの?」

キャメリアが聞いたら、バランスを取ったまま答えた。

「俺らは別にいいよ」

「潜入捜査で見慣れたからな」

そこへ、団長のアニスエトワレが入ってくる。

「皆!次の搬入手伝・・・って凄い!!」

アニスエトワレは葵と小麦のバランス力に驚きを隠せないといった表情を見せる。

2人が降り「次の搬入行くぞー」とボチボチと歩こうとしたら、引き止められた。

「待って!2人とも、元サーカス団員とかなの?」

それには首を横に振って否定する。

「いや、全然」

いて言うなら、サーカスの真似をして遊んでたくらいだな」

アニスエトワレが2人に近づき間に入り、腕を掴む。

「本当に凄いわよ!そんなの真似したくてもできないわ!ねぇ、良かったらウチの団員にならない?2人ならすぐにでもウチの看板団員になれるわ!!」

「悪いけど、俺らはサーカスはやらないよ」

「次の搬入しないとダメなんじゃないのか?」

小麦が大道具たちを指差して言う。

すぐに断られて残念そうにするが、切り替える。

「んー・・・残念。オファーはまた今度にするわ。だって、搬入が最優先だもの!」

そう言ってカーテンをめくると、拘束具の付いた大きな板が置いてあった。

「これ何?」とシャロンが拘束具を触る。

「拘束のベルトだろ。この板に腕と足を縛って逃げれなくするんだよ」

「何の為に?」

チョコも不思議そうに傾げた。

「ナイフを投げるのよ!ほら、あそこ見て!」

アニスエトワレの指す先でピモンとカネルという見るからに新人の2人が練習をしている。

「い、いくよ!」

ピモンが投げるとカネルが「ひぃっ!」と避けた。

それもそのはず、ナイフが丁度顔のあった所に当たっている。

「カネル!ダメだろ、避けちゃ!!」

「無理だよ!顔の所にナイフが刺さってるもん!!」

頭を抱えて涙を溜めた目でピモンを見上げる。

「大丈夫かよ、あいつら?」

「出番、次なんだろ?」

さすがに小麦と葵が心配する。

「あー・・・大丈夫よ、きっと!今日デビューなの!本番に強い子達のはず!」

アニスエトワレの言葉に信憑性は無く、その場にいた全員が言い知れぬ不安にられた。

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