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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
33/109

努力

時間は少しさかのぼり、パーティからエピスキャラバンがもよおすサーカス観覧のお誘いを受けた後のこと。

チケット騒動がひと段落した後に、小麦はお手伝いのため教会に来ていた。

しかし、教会ではシスターが慌ただしくしている。

「あのー・・・」

「あ!小麦!!悪いんだけど、今日突然用事が入っちゃったから教会のお掃除をお願い!!あと今日のミサ中止の張り紙も出しておいて!!」

そして荷物をまとめたシスターが飛び出していく。

「シスター!明日休みもらってもいい?」

「いいわよーーー!!」と遠ざかるほどに音の周波数が変わるドップラー効果を効かせながら去って行った。

仕方なく掲示板に張り紙をして1日かけて掃除をする。

隅から隅まで掃除をした。

窓ガラスも古新聞で拭き上げ、ピカピカに仕上げる。

かなり大きな教会でシスターの手が行き届いていないところも見つけては掃除をしていく。

「高いところが届かないんだろうな・・・埃がいっぱいだな」

また、椅子を外に出して床と椅子の水拭きを行い、乾かしてからワックスをかける。

ただひたすら淡々と掃除をしていると、同年代くらいのよく日焼けをした褐色かっしょくの肌をした男性2人がやってきた。

「えー!今日ミサ無いって!!」

「嘘だろ!!」

ショックを受ける2人に声をかける。

「今日はシスターが急用でミサは中止です!!」

しばらく小麦を見て、それから互いに顔を合わせて話し合う。

「誰だろう?新しい信者?」

「それともおそうじの業者?でもどっかで見たことあるような・・・」

だが、また小麦に向いてから花束を見せる。

「教えていただきありがとうございます!」

「献花だけ渡させてもらいます!」

そう言って小麦に渡して去って行った。

この2人は信者でお馴染みのジャトロファとソルガムである。

献花を受け取り、花瓶に水を入れて生けておく。

結局、夕方になってもシスターは帰ってこず、小麦は夕飯の時間ギリギリまで待ったが、置き手紙をして教会を後にした。


「ただいまー」と帰るとディンブラが迎えてくれた。

何となく大使館中からせわしい雰囲気を感じる。

「おかえり、小麦!お疲れのところ悪いんだけどさ、ちょっと手伝ってくれない?」

「いいけど、何を?」

「実はさ・・・」と副詞を言ってから続ける。

大使たちが、珍しく人手が増えたのを好機と捉え、放置していた資料の整理をしていたが、それがまだ終わっていないと言う。

「え?丸一日掛けてできてないの!?」

「こっち来て!」と呼ばれてついて行くと葵がせっせと重たそうな資料を運んでいる。

葵が出てきた部屋ではリントンとアッサム、キャンディ、ダージリンが資料の仕分けをしていた。

辺りを見渡してロルロージュがいないことに気づく。

「あれ?ロルロージュは?」

「ロルロージュは僕と一緒に晩ご飯の調理担当!」

よく見るとエプロンを付けている。

「そっか。楽しみにしてるよ!ロルロージュをよろしくな!」

『ディンブラって料理できんの?』とか思ってしまったが決まった役だと言うので任せることに。

小麦は葵が運んだ先の部屋に案内された。

そこには担当が誰も居らず、大量の資料が入ったファイルだけが積み上がっている。

「悪いんだけどさ、資料をここの本棚に並べていってくれないかな?今葵くんも運びながら整理してはくれてるんだけど、なかなか多くて・・・」

「わかった」と返事をして作業に取りかかる。

無心で作業をしていると、ロマが入ってきた。

「おい、きしめん!」

ロマはニヤニヤといたずらっ子のように笑い、わざと前の嫌われていた頃の名前で呼んでみせた。

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