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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
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刺激的な娯楽

サンスベリアからのランチ後、大使館に帰ると誰かがいる気配を察知した。

様子を見に行こうとしたリントンを押さえて小麦が前に出る。

「待て。どこの誰かもわからない。俺が行く」

ドアに耳を当てて中の様子を探る。

それから、リビングのドアを思い切り開けた。

すると、ソファーの陰からアッサムが「わっ!!」と大きな声で驚かしにかかった。

しかし、小麦は条件反射なのか、袖とえりを掴んで引きつけ、あっという間に抑え込んでしまった。

「いたたたたたたた!!俺だ俺!アッサム!!」

「あれ?なんでこんな所に・・・」

慌てて離れて立ち上がらせる。

「悪い・・・つい条件反射で」

「まったく、セキュリティが高くなったもんだな、大使館も!!」

アッサムは首やら肩やらを回して嫌味を言った。

あとのみんなも続いて入ってきた時に、アッサム以外にもキャンディ、ルフナ、ニルギリがいたことに驚きを隠せないでいる。

「あ!みんなおかえり!!」「待ってたよ!」とニルギリ、ルフナは元気よく言うが、口数の少ないキャンディはいつも通り何も言わない。

「みんな!なんでここに?」

ディンブラの質問にアッサムがシャロンとキャメリアの前でひざまずき、手を握る。

「ロリのいる所が俺の居場所です!・・・とか言いたいところだけど、今回はこいつらを追って来たんだ!!」

アッサムが小麦と葵を指した。

「昨日さ、みんなで話してメリリーシャに行くことを決めたんだよ!」

「葵くんと小麦がいれば絶対に何か起きるからね!」

「そーそー!それでアッサムに車出してもらったの!」

「最近のエディブルには何か物足りないと思っていたんだ!」

キャンディまでもが静かに熱くなる。

「キャンディ何言ってんの?まだ僕らが出て2日くらいしか経ってないよ?」

さすがにディンブラも呆れていた。

そこにロマが前に出て説得にかかる。

「ちょっと!みんなまで小麦なんかに洗脳されたの!?しっかりしてよ!!」

「おいおい、ロマはまだこの2人の勝負見たことないのかよ?はっきり言って名勝負だぞ?」

アッサムに小馬鹿にされたような気分になりイラつく。

「そんなの見ないよ!!」

「えー?ほんと面白いのに!!」

「そうだよ、見ないなんてもったいないよ!!」

キャンディまでうなずいて肯定する始末。

みんなの後押しが、さらにロマのもどかしさとイライラを増した。

「僕はみんなと違ってお外にいるんだ!しかもメリリーシャっていう大都会に!!だからわざわざこんな奴らのちんけな勝負なんか見なくても娯楽を知ってるもんね!!」

勝ち誇ったように言ってみせたが、みんなの反応は違った。

しばらく黙った後、嘲笑する。

「・・・ぷっ!つまり知らないってことだよね?」

「・・・だな。可哀想に・・・ププッ」

「あの勝負を見ないで娯楽語るなんて・・、プププッ」

「ぷぷっ!・・・愚の骨頂」

みんなから頬を膨らませて爆笑を抑えたように笑われる。

それに怒りが限界に達したロマが「ムキーッ!!」と猿の如く襲いかかったが、余裕でアッサムに頭を持たれて止められた。

マタリが面々を見渡して疑問を感じたので聞いてみる。

「あれ、ダージリンは?」

「あいつも誘ったんだけど、虫の世話があるとかで行けないらしいんだよ」

それにはすぐにみんなでディンブラを見た。

「でも、仕方ないよね。僕の大事な虫の世話っていう大役があっては離れられないだろ?」

ディンブラは相変わらずの真顔で淡々とした口調だった。

『可哀想に・・・』と大使達は思ったが、心に留めておいた。

「あ!だけどこの人数だと部屋が足りないよ!!女子達は提携してるホテルに泊まってもらうとして、それでもベッドの数が足りない!」

そこでディンブラがすかさず提案する。

「今こそ葵くんと小麦で勝負してさ、負けた方がソファーで寝るのはどう?」

「え?俺らなの?」と目を丸くして小麦が聞き返した。

「これも魔王軍の償いってことでさ!」

「それ言えばなんでもいいと思ってるだろ!!」

怒る葵を手で制して抑えていると、小麦は案外乗り気な様子でコインを親指で真上に弾き、キャッチする。

「ま、いいじゃねーか!コイントスで勝負だ!葵!!それともビビってんのか?」

「誰がビビってるって?上等だ!!」

小麦の挑発をきっかけに睨み合っていると、アッサム達が手を挙げてディーラーを志願していた。

「はいはい!俺がディーラーしたい!!」

「ずるい!僕だよ!」

「僕もしたい!」

「俺も!」

いつになく乗り気な花園勢に大使たちが唖然とする。

「おい、ディンブラ。なんだよこのみんなの反応?」

「平和な花園には葵と小麦は刺激的なんだよ。しょっちゅうしょうも無い勝負事してるからね」

なんて、心配していたマタリも最終的にはオーディエンスに参加して盛り上がっていたという。

そして、ロマもまた、この勝負に魅せられていた。

2人が投げたコインを紙に書いて裏表を当てると言うゲームなのだが、それが彼らの動体視力によってことごとく当てられる。

これでは勝敗が付かないと判断した後は、自分たちでコインを弾いて3連続同じ向きを向けた方の勝ちという運要素も交えた内容に切り替えた。

ロマも真剣に見入りすぎて途中口をぽかんと開けて見ていた時間もある。

「ふ、ふん!!別に小麦を認めたわけじゃないから!!葵を応援してただけなんだからな!!」

最後まで認めないお子ちゃまロマだった。

「お子ちゃまじゃない!!」

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