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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
償い
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エディブルの花園外交大使達

ロマは何が気に食わないのか、小麦のことを腕組みして睨みつけていた。

「おい、ロマ!なんちゅー顔してんだ?」

マタリに言われてそっぽを向く。

「よ!久しぶりだな!」

ビストートが嬉しそうに挨拶をすると、小麦が笑顔で会釈した。

「ビストート、小麦さんを知ってるの?」

「前にディンブラや葵と食べに来てくれたんだよ!食いっぷりが良いから作り手としては気持ち良いんだよ、こいつ!」

シャロンに聞かれて嬉しそうに小麦の肩を叩く。

「ビストート!小麦が明日から1週間お世話になるから、よろしくね!」

「任せろよ、ディンブラ!期待してるからな!!」

ビストートが嬉しそうにするのを見て小麦が少し安心する。

カラの魔女の償い分とは聞いていたが思ったより好反応だ。

「僕は反対だよ!!こいつ元魔王軍のきしめんなんだよ!?ビストートの店乗っ取られるかもしれないよ!!」

「小麦さんはそんなことしません!!」

ロルロージュがムキになって言い返す。

「するさ!人がそんな簡単に改心するわけがないだろ!!今は猫被ってるだけだよ!!」

「改心します!僕は小麦さんの優しい所いっぱい知ってます!」

「いいよ、ロルロージュ・・・」と小麦がロルロージュを止めた。

だが、ロマは止まらない。

「お前なんか大っ嫌いだ!大使館にもエディブルにも入るな!!」

舌を出して嫌悪感を表す。

小麦が困った顔をしているとビストートが割って入った。

「それなら俺ん家来るか?俺は小麦のこと結構気に入ってるからいいぞ!葵は実家帰れ」

ついでに言われた最後の一言に葵が睨んで返す。

「おい!俺も大使館の手伝いするんだよ!ディンブラとな!!」

葵もよせばいいのにわざと強調してディンブラを出す。

「喧嘩売ってんのか?」

「別に!!でも突っかかってきたのはそっちだけどな!!」

「葵くんよせよ。子どもじゃあるまいし・・・」

ディンブラに注意されて引くが、互いに睨み合う。

「小麦、ロマのことは気にすんな!せっかくこっちも用意したんだし、大使館に泊まれよ!」

マタリが言うと「ふんっ!」と鼻を鳴らしてロマはそっぽを向いた。

「ロマ、人は間違いを犯す時だってあるんだよ。その全部を許さなければ更生の余地がいないだろ!それに、過去の罪を償うためにわざわざ来てくれたんだ!過去のきしめんの時じゃなく、今の小麦を見てやろう!」

『う・・・白いプルチネッラを疑ってかかってる手前、優しくされると辛いな』

小麦は優しいマタリについ視線をそらす。

「話はまとまったか?チビ」

いつの間にか厨房に入っていたビストートが、料理を持って現れた。

「これ食って落ち着けよ!」

そう言って目の前に前菜を出す。

「子ども扱いすんな!」

そんな風に怒ったものの、ガッツいて食べていた。

所詮は子どもなのである。


食事中、小麦がポケットから花の刺繍ししゅうほどこされた小さな袋を取り出して見せた。

「そうだ、ディンブラ。これ何?なんか出発前に朝顔にもらったんだけど」

ディンブラは受け取って観察する。

「ああ、これはエディブルに伝わるお守りだね!君にこの刺繍に描かれてる花言葉を送ってくれたんだよ!きっと、中にも同じ花が入ってるよ!」

そう言われて開けて見ると中には小さな花が入っていたが、ついさっき摘んだばかりかと思う程にキレイで元気な状態だった。

「1日以上経ってんのになんでこんなに元気なの?てか何の花?」

「花は妖精の力で枯れないようにしているんだよ!この花はカランコエだ!花言葉はあなたを守る、幸福を告げる、たくさんの小さな思い出、おおらかな心」

小麦は黙ってお守りを見つめて目を輝かす。

「いい花言葉だね。それだけ小麦の事を大切に思ってくれてたんだ!」

ディンブラに言われて照れてしまい、耳まで赤くなった。

自分でも火照っているのがわかるほどに熱い。

そんな小麦にマタリが口笛を吹いた。

「やるな!小麦!」

「いじるな!」と怒ると、マタリの隣ではロマが睨んでいた。

「朝顔もこいつに騙されてるんだ!」

指差して大きな声で威嚇する。

「もう、ロマ!いい加減にしなよ!・・・ごめんなさい、小麦。彼はまだ幼いからこういうことに折り合いがつけられないんだ」

また腕を組んでそっぽを向くロマを一度見てからパトロックに軽くうなずき返す。

「いいよ。気にしてないから」

パトロックにそう告げ、また食事を口に運んだ。

その表情は心境が読めないような真顔だった。

話を変えようとしたのか、ただただ気になっただけなのか、アスタが口を開く。

「エディブル男子って花だけじゃなくて花言葉も精通してるよな」

アスタの言葉にはマタリが答えた。

「ま、エディブルなんて花だらけの場所で育ったら必然的に覚えるってのもあるけど、何より花言葉を知っていたらモテるからな!俺は女の子を口説く用に覚えたってのもある!例えばカランコエなら・・・」

マタリがアスタの肩を抱き寄せた。

「素敵な君にカランコエの花をプレゼント」

アスタの目が乙女のように潤い始め、頬が赤く染まる。

「花言葉は幸福を告げる。今日君に会えた幸福は、このカランコエが告げてくれたんだ。だから、幸福のお返しに一緒にカフェに行かない?コーヒーをおごらせて」

色男の口説き文句を前にし、口元を両手で隠して赤くなった。

「きゃっ!素敵!」

「と、まあ、こんな感じだな!」

そしてアスタをつき放す。

「俺も花言葉覚えたらモテるかな?」

「それは自分次第だな!」

「すごいね!僕も覚えたい!」

アスタもチョコもウキウキしている。

マタリは相変わらずの調子だったが、小麦も葵も疑念を悟られないように観察していた。


食事を終え、大使館に帰ると、人の気配がした。

「あれ?誰かいるな・・・」

先に入ったリントンが様子を確認しに行こうとするのを小麦が制した。

「待て。どこの誰かもわからない。俺が行く」

「え?」と驚くリントンを避けさせて小麦がリビングに近づく。

相手もどうやらこちらの玄関のドアを開ける音で息をひそめているようだ。

リビングのドアを思い切り開けると、人影が勢いよく姿を現した。

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