1週間経過
小麦がエディブルに来て早一週間が過ぎた。
住人たちとはすっかり仲良くなった小麦は、もちろんキャンディともかなり仲良くなっていた。
「小麦」と呼ばれたので「おう、どうした?」とキャンディに近づくと今日はこっそりと懐からエボシカメレオンを出して見せてくれた。
毎日こうして色んなペットを見せてくれる。
「うわ!かっけー!!何このトサカ!!かっけー!!」
「ふふっ!小麦ならそう言ってくれると思ってたよ!」と満足げに去る。
ただこれだけだが、キャンディという人物が認めたというのはこれだけで十分なのだ。
そんなここの生活にも人間関係にも慣れて来た頃のことだった。
「葵くん、小麦!メリリーシャに行こう!1ヶ月!!」
小麦とロルロージュ、葵がいつもの様に寛いでいると突然に告げられる。
「・・・え?何て?」
願ってもないラッキーなのだが、あまりにも好機が早すぎて驚き、聞き返した。
「明日からだから、話が終わったらすぐに用意するんだよ!葵くんも!!」
急かされてもついて行けず、聞き返す。
「ちょっと待て!ディンブラ、一体どういうことだよ?」
「そうそう、何で急に?しかも明日?」
葵も小麦もそれぞれに質問責めにする。
「明日アスタ君達もメリリーシャに戻るみたいだから一緒に行けばいいかなって!そうそう、メリリーシャではエディブルの大使館が泊めてくれるよ!特にいった準備といえば、行きの道中での必要な物くらいだからすぐにできると思う!」
「その準備のことやら、タイミングのことはわかったよ。それで?1ヶ月もメリリーシャに滞在する理由は?」
葵の質問にディンブラが答えた。
「前にも言ったけど、君たちの償いというか、贖罪・・・とでも言おうか。メリリーシャで魔王軍時代に迷惑をかけた人たちに謝罪を兼ねてお手伝いをして来て欲しい」
「つまり、人間関係の構築ってわけだな?」
小麦がディンブラを見据えて言うと、相手も頷く。
「そうだよ。これからは白いプルチネッラを探すにあたって、周りの協力だって必要になるだろ。その時に僕の信頼や人間関係だけでやっていくには限界がある。この花園では外に出る方だけど、所詮メリリーシャの一部にしか知り合いがいない」
そしてディンブラが手紙を見せた。
「そこで、僕がこの前メリリーシャを出る前に大使の4人にお願いして、四天王の君らが関わった人々に連絡を取ってもらって、数日ずつ贖罪を兼ねたお手伝いをさせてもらえるように手続きをしてもらったんだ。これはその手続きが完了したことの連絡の手紙だ」
その手紙を見て、葵と小麦は大使を思い出していた。
今、自分たちが疑っている大使がこの贖罪のために人間関係の洗い出しと手続きに関わっているのだろう。
『怪しんでいる人物に行動と人脈が把握されている・・・』
『しかも滞在中の宿泊も大使館・・・仕方がないか』
葵は一つ呼吸をしてから返答した。
「わかった。色々とありがとう、ディンブラ。それで、誰がどこに行くんだ?」
「基本的には葵くんは僕が前にだいぶん制裁させてもらったからね」
そこまで聞いて過去のトラウマ級なディンブラとのあれこれを思い出す。
小麦とロルロージュはハーブコックローチティー(ゴキ汁)を飲んだという葵の事実を思い出していた。
「ゴキ汁ですね」
「あぁ、絶対ゴキ汁だ」
2人してこそこそと話すのに、葵の目は光を失っていた。
「君は基本的には大使館のお手伝いをパーティとやってもらおうかと思っているよ。ただ、ロマの情報だとロザの一族に迷惑をかけたみたいだから、そこには小麦と共に行ってきてくれる?」
その話に小麦が葵に振り向いて質問する。
「ロザの一族って?」
「なんかメリリーシャ郊外にいる荊姫の少年キメラ達だって。俺らが彼らにトラウマを植え付けたみたいだ」
淡々と言う葵に同じく淡々と返す。
「へぇー・・・覚えてねーな」
本気でこの2人は覚えていなかった。
それだけパーティへの怒りが大きかったのだろう。
「それで、小麦の方だけど、まずはサンスベリアでビストートのお手伝い。それから教会でシスターとそこの参拝者の一部のお手伝い。あとはラテルネ墓地の墓守の死神と番犬ヘルハウンドのお手伝いをお願い」
「俺だけ嫌われてる所の手伝いが多いな・・・」
先のことを思いやり、うんざりしたように表情を歪ませていた。
「仕方ないよ。今は人間関係がマイナスだろうけど、ここでの君のコミュニケーション能力ならきっと覆せるはずだ!僕は君の能力を信じている!!」
「ありがと、ディンブラ!」
微笑んで返してから首を傾げてもう一つ尋ねる。
「ところで、サンスベリアはなんだ?特には魔王軍として何もしてないはずだけど?」
「それは、カラの魔女の償いだって。詳しくは書いてないけど、そうビストートが言っているらしい。それと、教会の参拝者もカラの魔女繋がりだね」
葵はすぐにジャトロファとソルガムを思い出していた。
「そうか、わかったよ」
「葵くんは葵くんで大使たちとの人間関係の構築をお願いね!大使館のお手伝いだと頭を使うことが多いと思うからきっと、君は得意だと思うよ!」
ディンブラに頷いて返す。
「そうだな、俺もがんばるよ!」
こうして、葵も小麦も明日、メリリーシャへと出発することとなった。




