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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
生き残り
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教官

広場では葵と小麦が準備の手伝いの最中に別々に抜け、離れた場所に集まっていた。

そして今日1日の互いの行動結果を報告し合う。

「この花園の地理はわかったか?」

「あぁ。それより、まず朝顔はどうだった?」

小麦が困ったように答えた。

「あいつは・・・お前の言う通り、ただの良い子だったよ」

「そうだろうな。朝顔は見たまんま、裏表の無いタイプだよな・・・」

それから葵は小麦を真っ直ぐ見据みすえる。

「今回は外したが、俺はお前の鼻の良さは信頼している。俺の気づいてないものがあるかもしれないしな。他にも小麦の思う怪しい人物を聞いておきたい」

「さっき朝顔に住人の身長について聞いたんだが、白いプルチネッラがアスタとチョコから見て葵くらいの身長があると判断するなら、消去法でディンブラとアッサム・・・」

小麦が腕を組んで、あごに手を当てていうのに、葵も聞き返す。

「その2人が怪しいとでも?」

「いや、結論から言うとこの2人は疑ってはいない」

葵が首を傾げて小麦の推理の続きを聞く。

「ディンブラは黒いプルチネッラだったからそもそも除外。アッサムはあまり花園を出ないそうだな。だから俺を良く思ってないキャンディを疑ってみたが、あいつだと身長が足りない」

「つまり、プルチネッラはココにはいない、安全な花園だとわかったわけだな?」

葵の質問にこちらをみた小麦の表情は、まだ何かを疑っているようだった。

「簡単に言うとそうだな。だが、プルチネッラがいないからと言って、安心はできない。仲間という可能性も考慮すべきだろう」

「仲間か・・・」と葵がつぶやくように言う。

「葵こそ、誰か心当たりは無いのか?」

小麦に聞き返されて、腕を組みながら答えた。

「俺が疑っているのは花園内というより、メリリーシャに駐在する大使達だ」

「なるほど、元々外にいる奴ってことか。さらにこの花園に深く関係している。あり得なくはないな」

葵の言葉から大使たちの顔を1人ずつ思い出す。

「だが、調べるにしてもこの現状でどうやって外へ出ようか・・・」

「そうなんだよな・・・・。ココを怪しまれずに出るための口実が今は無い」

2人はしばらく黙って互いに頭で整理しつつ考えたが、良策は思い浮かばなかった。

そこで先に諦めて口を開いたのは葵だった。

「ここは焦らず、もう少し花園内を調べよう。ヒントくらいはあるかもしれない。それと、俺が今日調べていたのは別の地区の住人だ」

葵の報告を聞き、小麦が目を丸くして驚いた。

「え!?今いる人たち以外も住んでんの!?」

「ああ、割とこの花園は広いし、それにまれに移住者もいるらしい。本の館という図書館的な施設の主も移住者のようだし・・・」

うんざりしたような表情を小麦が見せる。

「それは尚更、白いプルチネッラの特定が難しくなるな・・・」

「そうとも限らない。移住したからと言って、あまりこの土地から出る人は少ないらしい。聞いた話だと、ディンブラが知る限り本の館の主人がメリリーシャまで本を仕入れに行く時くらいしか外出者を見たことがないって。それも、ディンブラやキャンディー、運転手として駆り出されるアッサムと一緒で、大抵同行者に荷物を持つ手伝いをさせているから単独行動は無いと言っていた」

難題に取り掛かり、今、大きな壁にぶつかって抜け出せないことがもどかしい。

「そうか・・・。うーん、とは言え、仲間説や移住者・・・まだまだ絞れないな」

そこで小麦が思い出したように葵を見た。

「そうだ!ちょっと話がズレるけど、アスタから聞いたんだけどさ、あいつのよくわからない魔法の正体!知ってるか?」

全く違った声のトーンで勢いよく聞かれ、驚きながらも葵は首を横に振る。

「え?アスタの?・・・たしか、きしめん時代にメリリーシャで受けたっていう、氷と炎の同時魔法とか、だったか?知らない・・・」

小麦が嫌そうに表情をゆがめる。

「あいつの魔法、何てことなかったよ!あのノーティーエッグズだの薬品だのですごい魔法使ってたように見せかけてただけだ!!ほんっと、してやられた!!」

「何だそれ?なんか悔しいな・・・」

アスタに嫌悪感を示していると、足音が聞こえ、2人が同時に林を見る。

「あ!いたいた!」

やってきたのは朝顔だった。

「もー!2人してサボって!!ちゃんと手伝ってよね!」

朝顔が小麦の腕を引っ張る。

「おー、悪い悪い!」

「小麦が道を覚えたいらしくて、ちょっと案内してたんだ!」

葵がそう言い訳すると、小麦を見上げた。

「そうなの?それなら今度私が案内してあげるよ!」

「ありがとう、頼むよ!」

「葵くんもね!」と小麦の肩越しに葵を見る。

「ありがとう」と微笑み返した。

朝顔が前を向いて引っ張るその背後で、葵と小麦は目を合わせた。


広場に戻るとすでにみんなが集まっていた。

みんなで席について食事を頂く。

「ねぇ、前から思ってたんだけど、部下達から葵さんは様で呼ばれるのに、小麦さんはさんだったよね?同じ四天王だから差とかないはずなのにどうしてなの?」

チョコの疑問にロルロージュの胸元にトーションを付けながら答えた。

「単純に親しみやすさだろ。葵は見ての通り、クールで何でも1人でこなすタイプだから誰かに頼らないし、自然と接する機会が減るから気軽に話しかけにくくて、葵様になってたんだよ」

「おい!俺をコミュニケーションの取りにくい奴扱いするな!そうめんもパルフェも様だったろ!むしろお前だけだ、さん付けは!!」

怒る葵にニヤニヤしながら「でも、一理あるよね」とディンブラが言う。

「じゃあなんで小麦さんだけさんなの?」

「部下との距離が近いってのと、幅広い分野の武術の教官もしていたからだろ」

葵の言葉に皆が反応した。

「小麦が!?」

「教官!?」

「教えれんの!?」

アッサム、チョコ、アスタがそれぞれ驚く。

「バカにしやがって!俺だって教えるくらいできるわ!!」

小麦が怒っていると、ディンブラが興味深そうに前のめりになる。

「へぇ!教官してたから人との接し方が上手なのかもね!葵くんと違って!」

「ディンブラ、最後の一言何だ?俺だって剣術の教官くらいしてたんだからな!!」

いたずらっ子のように笑うディンブラを隣から葵が睨みつける。

「だって、アスタくん達だけじゃなくって、ここの人達も小麦はすぐに仲良くなれてるもんね!」

「そうそう、俺ってみんなと仲良くなりやすいんだよね、葵と違って!!」

わざとらしく言う小麦に葵が立ち上がる。

それを見て小麦も立ち上がった。

「あ?やんのか?」

「上等だ、脳筋が!」

「似た者同士だね」とディンブラが呆れるがキャンディやアッサムは前のめりでワクワクしていた。

「何か始まるぞ!」とワクワクするアッサムにキャンディが興奮して何度もうなずく。

「君たちもいい加減にしなよ」とディンブラはあきれていた。

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