朝顔より背の高い人
しばらくオレンジを採取した後、ロルロージュの背負っていた籠の中を3人で覗き込む。
「わぁ!沢山取れましたね!」
「ナスタチュームの家に持って行こうか!」
籠を小麦が担ぎ、3人でナスタチュームの家に向かって歩いていく。
「小麦・・・その・・・」
「何だ?」
振り向くと、朝顔が照れながら小麦を見上げた。
「背、高いね!」
「あぁ、ありがとう。葵に数㎝負けてるけどな」
小麦は苦笑いしながら頭に手を置く。
「この辺の子って私より背の高い男子はディンブラとアッサムくらいだから、葵くんと小麦みたいに背の高い人が珍しいの!あと撫子は私より少し高いんだよ!」
「あー、そいえばあんま高い奴いないな」
小麦は男子一人ひとりの顔を思い出しながら歩いていた。
「うん!私ね、ヒールあると大体ディンブラと一緒なの!」
隣で歩きながら、足を上げてヒールを見せた。
見ると、ハイヒールである。
『よくこれで木登りとかしてんな・・・』と多少は思うが、すぐに頭から消えた。
「へぇ、女子にしては背が高い方だな」
そう呟いた後、小麦が前を向いて考え込む。
それを朝顔が覗き込んだ。
「どうした?」
少し驚いて聞くと、朝顔も不思議そうな顔をして聞き返した。
「小麦こそどうしたの?たまにそうやって考え込んでるけど、何か悩みでもあるの?」
真っ直ぐとこちらを見て、純粋に心配してくる朝顔に一瞬戸惑う。
「いや、何も・・・」
そう答えると、前に回り込んで小麦の両腕を掴んできた。
「あまりため込むとダメだよ!ココには良い人沢山いるから、ちゃんと相談してね!私でよければ相談乗るよ!」
小麦ははっとしてから微笑み「ありがとう」と照れ臭そうに言う。
「小麦?」
「何でもない!本当に良い奴だな、朝顔って」
頭を軽く叩いて、前を歩くロルロージュの襟を掴んで抱っこしてやった。
「うわぁ!」と言いつつも、小麦に抱っこされるロルロージュ。
そして小声で聞いた。
「何照れてんですか?いい感じだったのに!」
「うるせぇ!変な気使うな!!」
そんな強気なことを言いながら、耳まで真っ赤になっている。
小走りで朝顔も小麦の隣に来て歩いた。
照れながら、小麦は朝顔を疑ったことを少し後悔していた。
オレンジを届けた帰り道、葵とディンブラに出会った。
「あれ?珍しい組み合わせだね!どうしたの?」
「オヤツ用にオレンジを取って、ナスタチュームに渡してきたの!」
ディンブラと朝顔が会話している横で小麦と葵が目を合わせた。
「へぇ!今日のオヤツはオレンジか!美味しそうだね!」
「小麦さんと朝顔さんが取ってくれたんです!僕は下で受けて運んだんですよ!」
ロルロージュが嬉しそうに話すのを屈んで聞いてやる。
「えらいね、ちゃんとお手伝いできてるじゃないか!」
ディンブラが優しくロルロージュの頭を撫でると嬉しそうに笑った。
「ディンブラ達はどこ行くの?」
朝顔に聞かれて向き直る。
「僕らはただの散歩だよ!」
「俺もまだまだココの土地に慣れてないからな。色々と教えて貰っていたんだ!」
小麦が葵に顔を向けた。
「へぇ。葵、また今度俺にも教えてくれよ。俺もまだまだわからないんだよ」
「勿論」
淡々と言う2人に朝顔が割って入る。
「なんだ、2人とも仲良しじゃない!」
急な一言に2人して焦りだす。
「は!?仲良し!?」
「どこが!?」
思ったより大きな声で聞き返した。
内心、うわずらなかっただけマシとも思ったが、気恥ずかしい。
「だって、昨日は2人で喧嘩というか勝負してたし、仲悪いのかな?って心配してたの・・・」
ディンブラがクスクスと笑う。
「2人もこれからは周りに心配かけないようにしないとね!さ、そろそろお昼ご飯の準備が始まっているかもしれないよ!広場に行こうか!」
ディンブラの言葉で5人は移動した。
広場ではみんながランチのための準備を進めている。
テーブルを拭いたり、食器を運んだり。
そんな中、葵と小麦が準備をしながら、視線を合わせる。
他の人にバレないように、別々に抜け出し、離れた場所に集まった。




