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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
生き残り
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葵vs小麦

「俺はこれから、魔王軍の生き残りを集めようと思う!!」

葵の決心を打ち明けた際の表情と声からは、本気の気迫を感じた。

小麦は葵に対して真剣な表情で向き合い続ける。

「それには、裏切り者の俺だけでは到底成得ない。小麦、お前の力が必要だ!」

小麦が葵に笑って返してやる。

「勿論だ!外にいる奴がほんの一握りだがいるはずだ!もう魔王軍は無いが、他の組織に利用されるくらいなら、もう一度俺達が集めようじゃないか!!」

その返答に葵の表情に気力がみなぎる。

力強くうなずいて嬉しそうに続けた。

「まずはパルフェと生きていればそうめん!あの2人からだ!!元四天王を優先的に集め、そこから部下達を集めよう!上がいると、きっと安心してついて来てくれるはずだ!」

2人が手を強く握り合う。

「何より、俺達は元四天王が2人も揃っているんだ!何だってできるよ!!」

「やってやろう!パルフェもそうめんも、部下達も再集結だ!!」

しかし、小麦が苦笑いをした。

「俺はまず、この辺の人間関係からだけどな・・・」

「ま、まあ、そこは焦らずにやっていけよ。そこまで悪い人はいないよ。俺もここの人の情報を知ってる限り教えるから」

小麦の肩を叩いて励ます。

「ありがとう・・・頼むよ」

『こいつ良い奴だな』

なんて思いながら2人でディンブラの家へと帰っていった。


その翌日、小麦は持ち前のコミュニケーション能力であっさりとパーティと仲良くなってしまった。

「わー!小麦さーん!!」と園児が保育士に集まる様に小麦の元へ集結する。

「え?なんで?今まで散々ホテル代も渡航費も魔王軍時代から面倒見てやったのって俺だよな?なんであんなに昨日今日で俺よりなついてるんだよ!?」

動揺を隠せないコミュ障でお馴染み葵がディンブラに迫った。

どうせあんなゲスパーティでも小麦に人間関係を奪われるのがしゃくなのだろう。

これだからコミュ障は。

「まあまあ!彼、得意なんでしょ?こういうの!それに、人間関係は取った取られたじゃなくて、増えていくものだからさ!君の分が減るわけじゃないんだよ!」

なだめるディンブラに反して小麦は鼻で笑う。

「ふんっ!ま、お前みたいに金でしか結べない人間関係なんて脆弱ぜいじゃくなんだよ!金は力とか思ってんのか?資本主義の成金野郎!!」

とんでもないディスである。

これに怒りをあらわにした葵は小麦の胸ぐらを掴んだ。

「喧嘩売ってんのか?あ?」

「上等だコラ!かかってこいや!!」

2人が互いの胸ぐらを掴み合って、額を付けて睨み合う。

「ちょ、ちょっと待って!ご飯前だよ!!」

ディンブラの制止を聞いて小麦があっさりと手を放した。

葵も拍子抜けする。

「それもそうだな。じゃ、いっちょ資本主義らしく、市場で勝負といこうじゃねーか!何が値上がりしているか予想して、金額の値上げ幅が高かった方の勝ち!!」

「いいだろう!今朝の朝刊に載ってるだろうから、それに書いてある値での勝負だ!!」

一気に戦いの方向性を変えた2人に周りが唖然とする。

「うわ!なんか高尚こうしょうなことし始めた!」

「あの2人、気合!根性!みたいなめっちゃ体育会系なのにね・・・」

ニルギリとルフナが呆気あっけに取られていると2人が予想し始めた。

「俺は牛乳だ!牛乳が値上がりしていると思う!!前にメリリーシャ付近の大きな牧場で特上のミルクを出す牛の品種を確立したと聞いた!だから牛乳が値上がりしていると思う!!」

「俺は鶏だ!!鶏は渡り鳥などの野鳥からの感染症が多くて品薄になりやすい!!だから鶏肉の値が高騰しているはずだ!!」

「うわっ!もっともらしいこと言ってる・・・」とダージリンもつぶやく。

そして2人してディンブラに手を差し出した。

「さあ、ディンブラ!!」

「今朝の朝刊をくれ!!」

ディンブラは目を丸くしたが、すぐに鼻からため息をついて答える。

「え?ないよ?ここ一週間に一回しか新聞来ないもん。前にも言っただろ?」

2人が悔しそうに拳を握った。

「もうこの2人が頭いいのか悪いのかわかんない!!」

側から見ていたアスタも呆れる。

「うぐぐ・・・仕方ない、こうなったら・・・」

突然、小麦がポケットからカッターを持ち出した。

「これで勝負だ!!」

「やめて!!危ない!!」

ディンブラが止めようとしたら葵が手で制した。

「葵くん!!」

そしておもむろに小麦が地面に手をつき、指の間をカッターで突いていく。

それを見事に往復させた。

「すげー!!」と周りから拍手が起きる。

「さ、お前の番だ」

カッターを渡された葵も見事に素早く指の間を往復させた。

また拍手が起きる。

「な?やっぱ俺の見込んだ通り、小麦も葵もおもしろい奴だろ?」

アッサムに肩を組まれたキャンディも興奮しながら首を何度も縦に振っていた。

「こんな勝負も、芸当もなかなかここじゃ見られない!!」

「小麦いけー!」や「葵くんがんばれー!」など応援が飛んでいたが、後ろの方でディンブラは呆れていた。

「なんだこれ?」

しばらく続いた勝負の場に、良い香りが漂って来た。

「みんな〜!ご飯ですよ〜!!」

ナスタチュームの呼びかけで葵も小麦もお腹が鳴る。

「よし、葵!一時停戦だ!」

「良いだろう!!」

なんて言いながら・・・

「俺の方がテーブル拭いた面積大きいし!!」

「俺だって食器配った個数お前より多いから!!」

「一生やってろ!!」

小学生のような喧嘩ばかりする2人に対してディンブラは呆れていた。

本当、仲が良いのやら、悪いのやら・・・。

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