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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
生き残り
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葵の決心

食後、解散し、家へと戻る。

そこで問題が発覚した。

「しまったなぁ。小麦とロルロージュのベッドが無いよ」

「俺ならリビングのソファで寝るからいいよ。ただ、ロルロージュだけはちゃんとベッドで寝かせてやりたい」

ロルロージュが小麦にしがみついた。

「僕だって小麦さんとソファで寝ます!大丈夫です!」

「ダメだ!疲れが取れないぞ!」

「僕は小麦さんと契約を結んだんです!相棒から離れて寝るわけにはいきません!!」

小麦が笑って頭を軽く叩く。

「そっかそっか!じゃあ一緒に寝ような!」

ディンブラが申し訳なさそうな笑顔を向けた。

「ごめんね!いつか用意できたら君の部屋を作ってあげるよ!ちゃんとベッドもつけて!」

「ありがとう!俺もそれまで色々がんばるよ!」

「それじゃ、お休み」


家の明かりが消え、しばらく経った頃。

リビングのドアが少し開き、葵が小麦を覗いている。

小麦が葵を見ると、玄関へと出て行った。

外の広場へ行くと葵が先に待っていた。

小麦が近寄る。

「ディンブラは寝ていたか?」

「もちろん。ドアの外からだが寝息は確認した」

「ロルロージュも爆睡だったよ。疲れたみたいだ」

夜で誰もいないが、警戒して一応小声で話す。

「これから俺たちにはすべき事が沢山ある。お前も加わったことだし、もう少し動きやすくなるはずだ」

「それに・・・」と一つ呼吸を置いてから続けた。

「俺も白いプルチネッラのこと・・・魔王様からの最後の依頼として遂行したい」

「おう、当たり前だろ」と言って笑顔で肩を叩いてやる。

「それで、これから動く前に情報の整理と共有をしよう。葵がこれまでに掴んだ白いプルチネッラの情報または印象は?」

「印象か・・・。正直なところ、俺はちゃんと対面したことがないんだ。その代わり、俺が魔王軍を裏切った当時の話からさせてくれ。あいつは、俺たちが魔王を倒すのをずっとどこかから見ていたんだ。それで、島をある程度離れた時に爆発させた」

小麦が首を傾げて聞き返す。

「しかし不思議だ。何故葵ごと消さなかったのだろうか?」

「それはあのパーティがいたからだろう」

「パーティ?あの4人が?」といぶかる小麦。

「正確に言うと、アスタとチョコだ」

「あの2人・・・そうか!アスタもチョコレート・リリーも昔、魔王軍が潰した一族の生き残り!!そうだ、プリムトンの神樹で見た夢で葵が魔王様の過去を見たって言っていたんだ!何か手がかりはあるか?」

興奮を抑えつつも葵に迫って聞く。

「そうだな・・・魔王様の過去で見たのと、アスタやチョコの証言からして白いプルチネッラは俺くらいの身長があった。それくらいしか情報がない。かなり謎の多い人物だ」

「そうか・・・。俺も過去にメリリーシャでパルフェとアスタを追いかけている時に出会ったよ。その時もそうだな・・・俺たちくらいの身長があったな。まあ、身長がわかっただけでだいぶん絞り込めるが・・・」

小麦があごに手を当てて考えていると、葵が思い出したような口ぶりで続けた。

「そうだ!メリリーシャに戻った後、あの2人がいる病室にビストートに変装した白いプルチネッラらしき人物がお見舞いに来たんだ!それで、わざわざ月桂樹の葉で編んだ冠を渡しに来たんだよ」

「ほぅ、月桂樹の冠か。勝利の象徴を渡しに来るとは、何様のつもりだろうな。主催者だとでも言いたいのか?」

そう言う小麦の表情に静かに怒りの色があらわになる。

「これはあまり直接関係は無いかもしれないが、俺はアスタとチョコからもう一つ別の情報も聞いたんだ」

葵の言葉に小麦が反応した。

「そうめんについて、チョコが怪しんでいた。魔王軍最後の戦いでは、チョコ曰く“本気じゃない感じがした”と言っていた」

「手加減したとでも?何の為に?」

信じられないような話に眉をひそめる。

「それはわからん。アスタの方は、刀の能力をそうめんは見たけど、魔王様が能力の内容を知らなかったそうだ。他にも、アスタが科学の世界のマフィアをあざむいて機関銃という兵器を手に入れていたらしい。それについても、刀の能力同様魔王様が知らなかった。つまり報告をしていない」

葵の話はどれも仲間の取った行動が不可解すぎた。

考えてもわからないことに、ただ、息を呑んで黙って聞く。

「機関銃についてはそれだけでなく、科学の世界の者ですらあまり見かけないと言われているのに、そうめんは名前を知っていたそうだ」

「そうめんか・・・。今のを聞くと、凄く怪しい箇所だらけだが、元々四天王の中で一番誰ともつるまなかったから、謎が多い奴だった。・・・だとしても、そもそも生き残っているんだろうか?」

小麦の投げかけた言葉に葵もため息を吐く。

「そこなんだよ、一番の問題は」

葵も困った顔をして腕を組んだ。

「魔王軍が無くなった今、俺達は断然動きにくくなった。国だけでなく、組織からも狙われるだろう。絶対干渉不可のこの土地だからこそ安心していられるが、外だとこうはいかないかもしれない。それに、絶対干渉不可ということは外からの情報も来ないということなんだよな・・・」

「外か・・・」

また表情をゆがめる小麦に続ける。

「今の俺たちはディンブラ無しには動けない。ディンブラにはマフィアやメリリーシャ、それに花園での人脈がある。何か動くには必ずディンブラを連れなければいけないだろう」

「そうなると、当然リスクが出るな。ディンブラを守るか、今みたいにあざむくかしなければ巻き込む可能性がある」

葵が小麦を見てニヤけた。

「へぇ、結構ディンブラになついているんだな」

「当たり前だ!俺は一度仲間と決めたら全力で協力する!」

「お前らしいな」と葵が安心したように微笑む。

すると、照れたように顔を背けた。

「俺のことはどうでもいい!・・・それで?これから葵はどうしようと思っているんだ?」

わずらわしそうに横目で聞くと、葵はまた真剣な顔に戻って答えた。

「さっきも言ったように、あらゆる国や組織から魔王軍の残党は狙われるだろう。手中に入れるならまだしも、中には始末をして威力の誇示に使う所もあるはずだ」

葵を真剣な眼差しで見て返す。

そして、葵は自分が決心していたことを小麦に打ち明けた。

「俺はこれから、魔王軍の生き残りを集めようと思う!!」

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