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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
生き残り
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遠い道のり

いつものみんなで集まる広場に行く。

芝生の上には木でできた広く長いテーブルが設置されていて、その周りにはたくさんの椅子が並べられている。

みんなそれぞれにテーブルを拭いたり、クロスを敷いたり、食器を運んだりしていた。

「ねぇ、みんな!ちょっといいかな?紹介したい人がいるんだ!」

ディンブラが声をかけるとみんなが振り向く。

「ディンブラ、葵くん、おかえり!」

「紹介したい人って〜?」

「さっき私、門で見たよ!」

朝顔、ナスタチューム、カモミールがウキウキと喋っていた。

「この子達だよ!僕の家で居候いそうろうすることになったから、これからよろしくね!」

ディンブラがロルロージュと小麦を順番に指して紹介する。

「大きな時計を持っている子がロルロージュ、こっちの白髪はくはつのマッチョがきしめん改め小麦!」

エディブルの花園の門付近で小麦を毛嫌いしていたキャンディは、近寄ることはなく、遠目に睨んでいた。

小麦もそれに気づいていながらも今は無視を選んだ。

それよりも気になったのがこっちだ。

短髪の白髪、高身長、マッチョ、タレ目ではあるがどこかこれまでの警戒心からかまだ油断を許さない、怖いお兄さんといった雰囲気の小麦に比べ、幼く天真爛漫な雰囲気のロルロージュは女子から人気を集めていた。

女子のカモミールとナスタチュームがロルロージュに近寄り嬉しそうに撫でる。

「ロルロージュっていうのね!」

「沢山ご飯作ったからいっぱい食べてね〜!」

それを横目に小麦と葵が『うらやましい』と黙って羨む。

そこへ、小麦の前にポニーテールの女子がやって来た。

「私、朝顔!よろしくね、小麦!」

「よろしく」と言って朝顔と握手をする。

「この子は爽やかで、優しくてハツラツとした子なんだけど、ノーパン主義の痴女なんだ!」

「もー!ディンブラ!会う人会う人にその説明止めてよ!!」

朝顔が恥ずかしそうに怒る。

小麦はというと、引いていた。

「何かなぁ・・・・・・」と腕組みして横目に朝顔を見た。

「顔もスタイルも良い、足も長くて綺麗、ミニスカから伸びる生足最高、ここまでは100点超えてるのに何でノーパンなんだ?はっきり言って大幅な減点対象だな」

朝顔がスカートの端を引っ張って恥ずかしそうにした。

「そもそも何でノーパンに目覚めたんだよ?人には引かれるし、スースーするし、良い事ねーぞ?」

朝顔がどんどん赤くなっていくが、ディンブラが答える。

「この子ね、幼い頃に遊びに夢中でトイレを失敗した時に二度としないようにってノーパンに目覚めたんだよ!」

恥ずかしそうにする朝顔だが、逆に小麦は感動していた。

「な、何だそれは!!その発想は無かった!!」

勢いよく朝顔の肩を掴む。

「トイレを失敗しないようにノーパンになるだと!?パンツが無ければ濡れることもない!まるで攻めてきた敵に対して門を開いた孔明そのものじゃないか!!」

いや、普通に余裕ある間にトイレ行けよ。

「え?え?」

その勢いに朝顔が戸惑う。

「どうか俺にもそのノーパン理論をご教授願えないだろうか!?俺にもその発想が欲しい!!」

「えぇ〜!」と余計に身を引くがさらに小麦が迫って来た。

「なあ、頼むよ!朝顔!!」

タジタジする朝顔を見て何かを察する。

「は!そうか・・・そうだよな。俺は何て無礼なことを!!こんな不躾ぶしつけな俺をどうか許して欲しい!!」

小麦が朝顔を放し、その手をパンツにかけた。

「今から俺も脱ぐよ!だから俺にノーパン理論を教えてくれ!!」

「いやぁぁああ!!」

我慢ならんくなった朝顔がついに頬にビンタをして逃げ去った。

「おい、ディンブラ、葵!あいつなかなか変態じゃねーか!!面白い人材拾ってきたな!!」

同じく変態性を持つアッサムだけが嬉しそうにする。

「君に言われたくないよ」

「・・・でも、アッサムの言葉も否めないよな。なんだよ、ノーパン理論って」

ビンタされた頬を押さえてしょんぼりしていると、プリムラがやって来た。

淡いピンク色の髪に毛先が軽くカールのかかったロングヘアのプリムラは、かつて恋愛初心者のアスタとチョコという初心うぶな少年たちの恋心をもてあそんだ小悪魔女子だ。

この小悪魔は小麦の隣で小袖を引っ張り見上げる。

「私、プリムラ!よろしくね、小麦くん♪」

「よろしく」

しょげた小麦は完全にやる気なく返事をする。

だが、プリムラはそんなことでは引いたりしない。

「小麦くんってたくましいね!かっこいいなー!」

「どうも」と一向に上がらない気分で返すと腕を触ってきた。

「わー!すごく固い!」

そのまま下がり、手を握る。

「手も大きーい!私、大きな手の人好きなの!守ってくれそうで、頼り甲斐あるよね!」

上目遣いを駆使するプリムラを遠目にアスタ、チョコが見ていた。

「小悪魔が来たぞ」

「引っかかるかな?」

アスタとチョコはニヤニヤとしながら顛末てんまつを見守る。

小麦がニヤリと口角を上げて笑い、プリムラの腰に手を回す。

「俺も好きだよ、プリムラみたいな可愛い女の子。もっと近づいて触って!ほらほら!」

プリムラの右腕を掴んで腰を寄せ、密着し、自分の筋肉質な鍛え上げた胸を触らせた。

その途端、プリムラは顔を真っ赤にして、小麦の頬を叩く。

「ババ、バーカ!あんたみたいな筋肉馬鹿、大嫌いだもん!本気にしてんじゃないわよ!!バーカ!!」

「俺は好きだよ、お前みたいなぶりっ子!」

計二度叩かれた頬を押さえながら言うと、プリムラは振り返らずに走り去った。

ディンブラが隣に来る。

「やるね、小麦!いつプリムラのぶりっ子に気づいたの?」

「俺は鼻が効くんだよ!ああいう嘘はすぐに分かるよ!嫌いじゃないけどな!」

小麦はまた自慢気に鼻を指していた。

だが、小麦もここで課題を思い出す。

「あ・・・人間関係構築。また2人遠ざかった・・・」

しかも、それは得意で無い女子2人。

その後の食事中も変態のアッサムと仲良くなり、さらに朝顔からは敬遠されるようになったという。

小麦の道のりもまだまだ遠い。

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