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月桂樹の冠.  作者: 叶笑美
仲間集め
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水面の彼女

男装し終えたシャロンとキャメリアが2人の前に現れる。

「お待たせ!」

「どう?似合う?」

シャツにサスペンダー付きのハーフパンツとローファー、あとは髪型を隠すための帽子を被るという、割とシンプルなスタイルはこの町に売られている物だけを使ってのコーディネート。

ポーズを取る2人に適当に返す。

「はいはい、似合う似合う」

「で、虹色の森ってどこだよ?」

興味なさそうにする葵と小麦に2人が膨れて不満を漏らした。

「冷たーい!」

「小麦さん、月下美人と全然反応が違ーう!」

「月下美人と並べると思うな」

そんな2人にまた一層と冷たい視線を向けていた。


そしてシャロン、キャメリアの案内で虹色の森の前までやって来た。

「ほう、ここか」

「見た目は普通の森だな。砂漠の真ん中にあるという点以外は」

シャロンとキャメリアが振り返る。

「それじゃあ、中に入る前にここでの注意点を伝えておくわ!」

「注意点?」

「例の住人か?」

2人の反応にシャロンが嬉しそうにニヤニヤとしながら答える。

「それもある!」

「大前提として、虹色の森という名前の由来から伝えるわ!」

キャメリアの言葉に予習済みの2人は共に『お!』と思った。

「この虹色ってのが大事なの。トイレの表示で赤が女性、青が男性を表しているように、この色にも意味があるの!」

「へー、虹色が表すモノか・・・」

「聞いたことないな」

なんて意外そうな表情を作って言いながら、2人のしたり顔を見ながらお手並み拝見する。

そんなこともつゆ知らず、シャロンが無知な2人に鼻高々と威張った。

「虹色とは、同性愛者の象徴の色なんだよ!」

「更に、ここは男同士の同性愛者が集まってる森よ!だから、私達はこうしてボーイズカップルとして入るの!」

「なるほど・・・」なんてニヤニヤしながら言う小麦の横で、今まで忘れていた最重要ポイントに葵が気付いてしまった。

「・・・てことは俺らもか?」

シャロンとキャメリアが手を繋いで見せる。

「もちろん!!」と声を合わせた。

それを聞いた2人は手で目を覆って左右に振り向きながらショックがった。


アスタとチョコは馬車に乗ってウェストポートまで行き、昼くらいには池を探して歩いていた。

「腹も減ったし、さっさと終わらせるか」

「明日にはビストートのご飯食べたいね」

そうこうしていると、池が見えてくる。

「お!ここ、ここ!」

「は!!待って、アスタ!!」

アスタが進もうとしたら、チョコに襟元を掴まれて止められた。

「おわ!」と大きな声を出す。

「何だよ、チョコ?」

不機嫌に聞くとチョコは指差して「あそこ!」と小声で行った。

見ると、誰かが水面をのぞき込んで1人で何か話しをしている。

「やぁ、また会えたね・・・。昨日は君の事を考えたら全然眠れなかったんだ。おや?君の美しい顔にもクマが・・・。ハハッ、もしかして君も?」

木陰からチョコとアスタが覗いて耳をそば立てる。

「何してるんだろ?誰かと話してるのかな?」

「人魚でもいるんじゃねーの?恋人とか?」

観察しながら小声で会話をしていた。

「嬉しいな。君も僕を思ってくれていたなんて。素敵な笑顔だよ。君が笑顔だと、僕も笑顔になれるよ」

アスタが立ち上がる。

「よし、行くか。いつまで見てても仕方ないし」

「そうだね。まぁ、邪魔にならない程度に離れて回収しよっか」

チョコも立ち上がって出ようとした途端、近くにいたカエルが湖に飛び込んだ。

波紋ができて水面が揺れる。

男性の話し声が止んだかと思うと、水面を見て震え始めた。

「あ・・・あ・・・」

その異変にアスタ達が気づく。

「僕の彼女がぁ!!許さない!!」

池に手を入れてカエルを掴み、陸に叩きつけると、ナイフで滅多刺めったざしにした。

荒い呼吸を整え、また池を覗き込む。

「あぁ、よかった!無事だったんだね!ごめんね、怖い思いをさせて!!あの無礼者はもういないから安心して!」

アスタとチョコが黙ってもう一度しゃがむ。

「今、何が起こった?」

「よく分からないけど、多分カエルが飛び込んで、水面が揺れて、あの人の恋人?がどうにかなって、カエルを始末した・・・のかな?」

チョコが小声で答える。

「俺もそう見えた・・・。水面が揺れた時のあの動揺っぷり、相手は人魚じゃないな」

「うん。それに、さっきから顔、出さないもんね」

至って冷静に分析する2人はそろそろ真実に気づいている。

「俺が思うに、あいつの話し相手って、水面に写った自分なんじゃないのか?」

「あー、やっぱり?僕もなんとなくそんな気がしていたんだ・・・」

2人の間にしばらく沈黙が流れた。

『やべー奴来た!!』

やはり同じことを思う2人。

「どうする?あんな恐ろしいの相手にしたくないよな・・・」

「一度帰ろうよ。それで、小麦さんか葵さんに来てもらおう・・・」

コソコソと話していると、池のほとりでは男性が依然として水面に話しかける。

「僕達を邪魔する奴はもういないよ。・・・え?あぁ、そいつらなら大丈夫。僕がすぐに始末してあげるから」

そう言うと、男性は2人に振り向いていた。

男性と目が合い、アスタとチョコが硬直した。

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