交渉
「またね、みんな!」
「大使達によろしく!」
パーティがメリリーシャに出発するため、門の前まで来ていたら、エディブルの花園に住むみんながいつものように見送りに来てくれていた。
そこへ、ディンブラ達も遅れてやって来る。
「あ!ディンブラ達も見送り?」
ルフナが聞くと「いや・・・」と答えて4人がパーティに近づいた。
「俺達も行ってくるよ」
葵の言葉にその場にいた全員が驚く。
「えー!!」
ディンブラが優しく微笑む。
「大丈夫、またすぐに戻るよ!」
「新しい仲間を連れてな!」
朝顔が小麦に近寄り抱きついた。
「小麦!」
小麦も抱き返す。
「小麦はすぐどっかに行っちゃう・・・。しかも急に!!」
精一杯抱きついてから見上げた。
「絶対!無事に戻って来てよ!!」
「うん!ありがとう、朝顔!」
朝顔が名残惜しそうに離れる。
「じゃあな!」
パーティとディンブラ達はエディブルの花園を後にした。
ビスコッティ山脈にあるサヴォイアルディ村のチックウィードの宿に泊まる。
「お久しぶりです、みなさん!ごゆっくりして下さいね!」
チックウィードが出て行き、パーティとディンブラ達が話し合った。
「僕らの目的としては、君達が本拠地に帰られなくした魔王軍の部下をできる限り集めたいんだ!その後、一度エディブルの花園に戻って体勢を立て直す予定だよ!」
ディンブラがパーティに話すと、小麦が口を挟んだ。
「なぁ、一つ聞くけど、何でメリリーシャへの帰省をずらしたんだ?大使達と帰らなかった理由は?」
そこで女子も気づく。
「それもそうね」
「どうしてだっけ?」
アスタとチョコが目配せするが、アスタが口を開いた。
「シャロンとキャメリアにはいずれ言おうと思っていたんだ。エディブルに長居したのは、俺とチョコの一族のルーツを探るためだ!」
葵もディンブラも反応する。
「一族のルーツ?」
「どうしてエディブルでなの?」
それにはチョコが答える。
「アスタは魔王と戦っている時に刀の記憶を見たらしいんだ。そこには、僕のご先祖様、リリウムと、アスタのご先祖様、リガトーニがある妖精から力と刀を授かったって」
「妖精?」
キャメリアが傾げる。
「それが、エディブルにあるプリムトンの樹の妖精だ」
「プリムトンの樹!?」
「それって、シャロンの杖の!?」
シャロンが驚いて自分の杖を見る。
「気絶した時に見た、ただの夢なのか、それとも本当に刀が見せた俺らのルーツなのかは定かではない!景色もエディブルに似てたのは単に夢の中で、俺の頭で思い描いたのがそうだっただけかもしれない!だけど、何も無い今、唯一の手がかりとしてあの花園で調べたいんだ!」
真剣なアスタに小麦が微笑んで返した。
「そうか、それで?今回、何か掴めたか?」
アスタとチョコがぎこちなくはにかむ。
「お、おう・・・」
「めちゃくちゃ掴めたよ・・・」
そのあからさまな反応に葵とディンブラが呆れる。
「絶対何も掴めてないな、こいつら」
「ずっとグウタラしてたもんね」
咳払いをして場をアスタが制した。
「進捗なんて人それぞれだよ!大事な事はゆっくりでも前進する事さ!」
「そ、そう!止まらなければいいんだからね!」
「で、ここからが交渉だ!」とアスタが仕切り直す。
「俺達パーティがディンブラ達の仲間集めに協力する代わりに、こっちからもディンブラに頼みがある!」
「何かな?」
ディンブラが微笑んでアスタを見た。
次に口から出たアスタたちの交換条件に、葵も小麦も目を丸くしていた。




