表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
え俺の性転換体質が……!?  作者: 六典縁寺院
文化祭編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/29

フルタイム





文化祭が終わり二ヶ月――

季節は秋を越え、静かに冬へと移り変わろうとしていた。


期間中、様々なイベントが開かれた中央ステージも、リング大屋根の軒下に並んでいた商店街も、すべてが解体・解体され、今はその面影すら残っていない。


校舎のあちこちに設けられていたカフェやレストラン、ギャラリーやアトラクションは姿を消し、すっかり普段どおりの廊下と教室が戻ってきていた。


すべては、いつもどおり。


その日も俺は、()()()()()()学校へ向かい、()()()()()()廊下を歩いて教室に向かった。


すれ違う女子生徒が声をかけてくる。


「神谷“さん”、おはよう」

「あ、おはよーございまーす」


「タキ“ちゃん”おはー」

「おはー」


手を上げて返事をするたび、ユウリが仕上げてくれたネイルがちらっと見える。


もこもこに巻いたマフラーを外すと、髪が胸のほうに落ちてきた。


髪をさっとかき上げると、今度は男子生徒と目があった。


「おーす、神谷ァ! 今日もビジュいいなー」

「へーい、あざーす」


「タキー! 今日、部活くんのー?」

「行くけど……今日はあんま動けねーんだワ……」


激しい稽古ができない理由は――ひとまず脇へ置くとする。


大きな窓の前を通ったとき、自分の姿が写った。


髪を胸まで伸ばした小柄な少女。


アウターは、襟の丸いネイビーブルーのピーコート。インナーは、コクーンシルエットの白フーディーに、冬用の制服キュロットを合わせたシンプルなもの。


寒さ対策で履いてきた60デニールのスキンタイツは、後で脱ごうと思う。校舎内だと暑いのだ。


教室の扉を開けると、すっかり色落ちして“ミルクチョコ豆”みたいになってしまった黒豆が、いつものようにデイリーギャグをかましてきた。


「はははは! めちゃおもろい! 今までで最高じゃん!? てか明日も楽しみだな!」


男の思考回路が死んでしまったのか、最近は、視界に入ったものすべてがやわらかく見える。何を見ても、何を感じても、自然と褒め言葉が口をついて出てくる。


(いや、今日のはつまんなかったな……)


ギャル委員長やリトル・クィン、目が合ったクラスメートと順に挨拶を交わし、教室の奥へ向かう。


ロッカーの前で話し込むヤオとマルケスに「よーす」と言うと、二人も同じように「よーす」と返してくる。


「てか寒いと思ったら意外にあちー……」

「あー、体温上がっちゃうからねー? でもタイツは履いといたほうがいいよ?」


女同士の会話を聞きマルケスは「?」という表情を見せた。コートとマフラーをロッカーにしまうと、俺たちはそのまま席のほうへ向かった。


「今日もウォンヒは休みかあ……」


窓際の席は今日も空いている。


「ずっと来てねーけど、なんかあったんだろうな……」


マルケスが心配そうにつぶやく。


文化祭での一件以来、ウォンヒは学校に来ていない。


俺に“能力チカラ”を使ってしまったことへの自責の念か、あるいは“組織”の中でなにかあったのか……ユウリのせいで脳がバグったのか。いずれにしても理由は不明だ。


「メッセージも既読つかねーしな?」


取り出したスマホを眺めていると、ヤオが手をとってまじまじと見つめた。


「あ、ネイルいいね! ユウリさん?」

「まあ、そうだけど……部活のとき剥げたりすんじゃ、これ?」


「しゃーない。むしろぜんぜんフツー? それ込み?」

「そなのか?……まだまだ分かんないことだらけだな……」」


「ま、引き続き勉強したまえ」

「ほーん……」


カラフルに彩られた爪先をのぞき込みながら、マルケスがつぶやく。


「てかお前……ガチでどんどん『女』になってきてるよな……」


「いや、そんな変わってなくね? 見た目だけの問題だろ?」


「見た目とともに、中身も多少変わるもんだろ?」


「変わらん変わらん。俺は俺、わたしはわたし」


ここまで来たら言うまでもない。


文化祭が終わって以来――

俺はずっと女装を続けている。


価値観をアップデートしたのだ。





◇◆◇◆◇◆◇





ユウリという機械じかけの神デウス・エクス・マキナが登場したことで、あの『爆弾テロ事件』はあっさりと『訓練エキシビション』へと書き換えられてしまった。


事件は、あっという間にトップニュースから姿を消し、残っているのは動画サイトのアーカイブと無断転載されまくった切り抜きのみ。


ただ――問題も残っている


魔法だけでは片付けきれなかった、世界規模の問題と、個人的な問題だ。順に説明しよう。


まず世界的な問題。


今現在、「実は『彗星の聖女』って存在してたんじゃね?」というミームが世界中で暴走している。


爆弾テロ事件は国や世界の根幹を揺るがすような『大事件』として、リアルタイム配信されていた。その視聴者数は最終的に一億人以上。


それなのに犯人が命をかけて伝えたのが、『おとぎ話は本当だ!』という超アホなオチだったため――


超バズった。


そしてあれ以来、街中ではあるファッションが流行している。


頭部には明るい“水色の何か”、身体には“灰色のチェック柄の何か”を身に着けた人々。


つまり――彗星教原理主義者たちが好む配色規則コーデだ。


ミームと配色規則コーデの流行が彗星教原理主義者たちによる水面下のネット世論操作活動なのか、自然発生的なものなのか俺には分からない。


だが、政府は流行を必死に止めようとしている。



次に個人的な問題。


俺――『神谷タキ』という人間が、あまりに多くの人に知られすぎてしまった。


リアルタイム視聴者だけでも一億人。アーカイブの総再生数は二億回以上。そこにストリーマーやインフルエンサーの配信を含めると……もはやイミフ億人が俺のことを知っている。


『ローマ人の至宝』『ローマの黄金盾』、『将軍の幼妻』、『奇跡の男の娘』、『女装男子の臨界点』


呼び名はいろいろあるが、ともかく俺が男だった、という事実が――


超バズった。


そしてその二日後、男に戻って登校してみたところ――

なぜか、バズったとき以上の大炎上を招いてしまった。


【※炎上の一部】

――――――――――

・安定の爆破、殺人予告

・俺の“おちんちゃん”に賞金がかけられる

・学校に無数の競泳水着やレオタードが送りつけられる

・上空からヘリでランジェリーがバラ撒かれる

・連日にわたり『タキちゃんを返せ』デモが起こる

――――――――――


あまりの炎上ぶりに、両親と学校で話し合いの場が設けられ、俺はしばらくの間女装して登校することになったのだ。


ネット上には生成AIで作られたエッチな画像や動画がバカほど溢れ、無許可でキャラクター化された俺のアクスタが、フリマアプリ転売されまくっている。


街を歩けば数分に一回は写真を撮ってくれとせがまれるため、通学はハイヤーでの送迎に切り替えた。


小説化、漫画化、アニメ化、ドラマ化、映画化の話。


学校で20回は告白されたが……それでも同級生やクラスメートたちの反応は、ほとんど変わらなかった。


(この学校でよかった……)


――ということで。


しばらくの間。


しかたなく女装している。


しかたなくね? うん……しかたなく。





◇◆◇◆◇◆◇





F(フェム)スコア:★★★☆☆(65)【開花】


みため   :★★★★★(100)【△】過去イチ安定

のめり込み :★★★☆☆(60)【△】べ、別に……

ドキドキ  :★★★☆☆(50)【△】

なじみ   :★★★☆☆(50)【△】

拡張スロット1:フルタイム女装

拡張スロット2:(未解放)


――――――――


【パラメーター指標】

0〜20:好奇心ノリ

21〜50 :趣味ハマりかけ

51〜80 :自己表現(楽しみとして確立)

81〜100:陶酔・依存(生活の一部・やめられない)

100〜:日常(新しい生活のスタート)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ