表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
え俺の性転換体質が……!?  作者: 六典縁寺院
運命の転校生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/24

Traditional en Revolution ~そのままの女装《キミ》でいこう ~





「和室エリア」は医療室と同じフロアにある。


そのエリアにある一室。


「関係者専用着付け室」と書かれた部屋に、俺たちはお邪魔した(忍び込んだ)


玄関に足を踏み入れると、幻昌石げんしょうせきが敷かれた高級感のある土間が広がっている。


「わあ……素敵……」


授業で習ったとおり、沓脱石くつぬぎいしの上に“履物”を置き、奥の部屋まで進んでいくと――


すんとした“和の香り”


畳の青い匂い。


歴史を感じさせる杉や檜の存在感。


柱の一本一本が鈍い光沢を放ち、温かい温もりを発している。


障子のさんが外光をやわらかく分け、空間そのものに美しい余白を産んでいた。


「わあ! 着物ダ!」


「うわ……しかも“ちゃんとしたやつ”かよ……」


柄を見せるように広げられた着物。ハンガーには「校内備品」というシールが貼られていた。


横にあるプラケースには帯や小物が入っているのが見える。


それらを愛でるように一瞥すると、ウォンヒはすぐに向き直る。


「じゃあ……聞かせてもらおうかナ?」


「聞かせるって何を……?」


「だから君の――“能力チカラ”のコト?」


「いやそんなもんねーぞ?」


彼女が何を勘違いしているのか分からないが、俺に「特殊能力スーパーパワー」などない。


でも、あえて言うなら――


夏休み中の女装生活を通して、ほんの少しだけメイクの基礎を覚えたし、ほんの少し髪をまとめられるようになった。


さらに言えば……女の子の日(レディース・デー)のツラさを身をもって理解している「男」の一人だ。


(逆にそれって、女なら誰でも持ってる“特殊能力スーパーパワー”だよな?)

(じゃ……やっぱ何もないか……)


「勘違いしてるけど……俺、能力チカラとか持ってないよ? まじで?」


「はは。いまさら隠さなくったって大丈夫。どのみちタキの“グレード”じゃ、ずっと隠し続けるのは無理だと思うシ?」


うぇ……また堂々巡りがはじまりそうだ。





◇◆◇◆◇◆◇





――「え゙えええぇ~~~~!!!!」


「ホントに何もないの!?」


「だから言ってんじゃん」


「ええええ……」


頭を抱えその場で崩れ落ちるウォンヒ。


「もう!!!! それなら最初に言ってくれないとサァ!?」


「だからずっと言ってんじゃん……」


「あ゙ああああ~~~~、どうしよう〜! 『未登録者』に色々喋っちゃったじゃん!? うわ〜……やばいやばい……絶対始末書ものダ……」


「いやあ……『組織』に属するって大変なんだなぁ」


「ちょっとタキ! それも含めて機密事項なんだから、まじでそれ以上何も言わないデ!?」


結論から言うと――ウォンヒは「総合能力グレード・D+」の超能力者だった。


「能力者」は世界中に存在し、国ごとに存在する「組織」に所属しており……(省略されました)


彼女が実際に会ったことのある同僚は少なく、能力者がどれ世界中でくらい存在しているのか……(省略されました)


素人にペラペラと秘密を漏らしてしまい、落ち込むウォンヒ。


「はぁ……どうしヨ……」


「とりま……そっちはそっちで大変だろうけどがんばってくれよ? 俺はいちおう医療室だけ行って教室もどるからさ」


話しを切り上げようとすると、ウォンヒは広げた右手をこちらに向ける。


また「何かを発するようなポーズ」だ。



――(フワァッ)



頭をそっと触れられるような感覚。


しかし――それはあまりにも弱く、髪を揺らすほどの力しかない。


「く……やっぱだめカ……」


彼女はもう片方の手も同じようにこちらに向ける。


部屋の襖がガタガタと動き出し、梁や柱がミシミシと音を立てる。


総合能力グレード・Dの出力要件は……“ALTスーツを装着した軍人一名を吹き飛ばせる”コト……」


「へー」


「つまり――タキはそれ以上の能力チカラで、僕の能力チカラ()()()()()るってことだヨ……」


「勘違いじゃね?」


「そしてその――異常なまでノ『冷静さ』……」


「冷静つーか……家族友人関係が特殊でさぁ……」


「そんな『危険人物』を、このままにしておく訳にはいかないイ……」


「まいったな……」


正直なところ――ウォンヒが超能力者だと聞いても、まったく驚きはなかった。


(フリはしたよ?)

(でもなぁ……)


自分は無敵の性転換体質。

両親は未来人。

姉は元・魔王。

二人の親友は魔物に変身。

未来からの来た預言(にゃ)


ここにいまさら「能力者」が加わったところで、物語ストーリーはもはや大きく変わらない。


誤解が誤解を生み、六階こえて十五階まで行ってしまった状況をどう収めるか。


(まじで困ったな……)

一話イチから説明するか?)

(いや……むしろ余計ややこしくなるぞ……)


どこから何をどう説明すればいいのか分からず困っていると――「カラカラ……」と戸を引く音が聞こえた。


誰か来る。


俺は唇に指をあて、静かに叫ぶ。


(うわッ! 誰か来た!?)


(もおっ! こんなときにッ!?)


(やばばば! 許可取ってないぞ!?)


とっさに見回すと、すぐそこに色鮮やかな着物が。


ウォンヒは急いでハンガーから着物を抜き、襟元をつかむ!


(とりあえずタキが試着してることにしよウ!!)


(え俺かよッ!?)





◇◆◇◆◇◆◇





――「星渡千鳥ほしわたるちどり帆船航星文はんせんこうせいもん振袖ふりそで(精密レプリカ)」


夜の海を渡る千鳥たちは、波の代わりに銀河を越えてゆく。

帆船は風ではなく、星の輝きを帆に受けて進む。


金糸や白の刺繍で表現された螺旋状の天の川。

鳥の一羽一羽に金泥の星点をあしらい、飛行軌跡が星座のように繋がる。

波と星の間を渡る三本マストの帆船。 船底には流星を思わせる光の筋がはしる。


千鳥たちが先導するその先にあるのは、赤い星――火星マルス





上質な肌ざわり。


袖口から腕を出すと伝わってくる生地の重み。

ずしりと重くはないが、浴衣のように軽いわけでもない。


とりあえず()()を羽織ってみたものの……さて次はどうするか。


現代的に再解釈・再構築された「キモノ」なら何度か着たことがあるが、伝統的な「着物」を着るのは初めて。


着付け?

もちろん分からない。


ウォンヒも同じだ。


(キッ……キッ……キッ……)


板間を歩く音が近づいてくる。


足音からして一人二人ではなさそうだ。


ウォンヒは俺の腰をひねり、反対側に向かせようとする。


(たしかこうやったら気がすル!)


砂壁の緑色の中に金色の粒子を見つけると、なぜかふと冷静さが戻ってくる。


襖を少し開ける音。


「……失礼しまーす」どこか聞き覚えのある女子生徒の声。


「あ、ええと……今ちょっと試着中でス……」


やけに上ずった声で答えるウォンヒ。


襖の向こうでささめき声がするが、内容はよく聞こえない。


(やば……)

(なんか怪しかったか!?)

(まあ最悪、部屋間違えてました作戦で――)


女子生徒はすぐに部屋を出ていかず、立ち止まって声をかけてきた。


「もしかして――ウォンヒ?」


(ッッッッ!?!?!!?)


「えっ……なんでこんなとこに……」


(この声!?――)


声の主はギャル委員長のカレシである清純派ガーリー少女(男)


彼がまだラッパーの「ショート・ボス」だった頃、俺はボスの「人を覚える力」に驚いたことがある。


ラップは「高速言語生成+リズム処理+記憶検索」を同時に行う高度タスクであり、ライム扱うことは「連想記憶ネットワーク」を強く鍛えるという。


ボスいわく――「オレは一度聴いた『オト』をぜったい忘れない」


(その“能力チカラ”……今、いらねーなー……)

(別のタイミングで活かしてほしかったなー……)

(ああ……「ボス」相手じゃ無理だわ……)


肩越しにウォンヒに伝える。


(だめだ……バレた……)


(ええ……なんで!?)


詳しく理由を説明している時間はない。

言い訳を考えている時間もない。

ないない。


トゥトゥトゥトゥトゥ、ハァ


ここにいない、いない、いないのは、自分、自分。

だれも見ない、見ない、見ないまま、吐き捨ててさようなら。


数週間ぶり、何度目かの死を覚悟し、俺はちいさく声をあげた。


「……お、俺もいるぜー……」


「タキ……神谷くん? 医療室……行かなかったの!?」


「あ、いや……なんか、思ったより全然平気でさ――」



バンッ!――



「ちょっとタキくん!?」


勢いよく襖が開き、ヤオの声が聞こえた。


「ゔッ!?」


思わずビクッとなるが、入ってきたのはヤオ一人だけではなかった。


「え神谷くんどゆこと? 大丈夫なの!?」とギャル委員長


「タキー 見舞いきたぞー」と黒豆。


「いや……これは――」と言い終える前に、ギャル委員長が口を開く。


「あ振袖だぁ!? えまって、それ『星渡千鳥ほしわたるちどり帆船航星文はんせんこうせいもん』!? やば!? すご!! 失礼しまちゅ! コンココンコンココンコンコン!」


ドカドカと部屋に上がりこんでくるギャル委員長。


「し、失礼しまーちゅ……」後に続くボス。


黒豆は「異常なし」とつぶやいた。


背筋がピンと伸びる。


「衣装室に行かなかったことを咎められる」から――というなことではない。


今自分が「振袖を羽織っている」ということを知ってしまったからだ。


(振袖……)

(振袖……だと……!?)


その存在を忘れていた。

自分の中で着物は、ただの「着物」でしかなかった。



【生成AI「Chat PTG(通称チャッピグ)」による要約】

――――――――――

Q:振り袖について説明してください。


A:はい。では、できるだけ正確かつ文化的背景も含めて説明します。


元々振り袖とは、主に未婚女性が着用する、袖の長い格式高い着物のことを指すものでした。我が国の伝統衣装の中でも特に華やかで、成人式や結婚式、卒業式などの「ハレ」の日に着られる代表的な装いです。


現代での振り袖はもはや「未婚女性の第一礼装」ではなく「自分の節目を祝うための晴れ着」として再定義されていますが、それでも着用者の多くは女性が占めています。


これは「袖を振る」という文化的意義を継承した結果、特に女性的な……(省略)

――――――――――



(なんてこった……)

(どっちだッ……“振袖こいつ”はッ? どっち“扱い”なんだッ!?)

(「女性用衣類」なのかッ!? それとも「オールジェンダーの衣類」なのかッ!?)


(そして……)

(“羽織っただけ”は……「セーフ」なのかッ!?)

(それとも……「アウト」ッ!?)


誰にも気づかれないように、ゆっくりと息を吸い込む。


そして――シャツに視線を下げる。



胸は膨らんでいた。



膨らみの頂点には、小さな突起が突き出ている。


乳首だ。


(遅かった……か……)


ベルトが緩くなり、ずり下がってくるスラックス。それを持ち上げるついでに、股間のあたりを確認する。



おちんちゃんは、消えている。



(くそっ!!)

(「アウト」だったか……)

(判定が……判定がイミフすぎるッ……)


ウォンヒはすぐ異変に気づいて声を出す。


「ん? タキ? あれ? ……なんか急に? ……あれ? なにこレ?」


彼女は俺のウエストを持ち、反対側にひねろうとする。


「なんかおかしい!? ……ちょっとこっち向いてくれなイ!?」


「――ちょッ!? いま! ダメだからッ!? あっあっああああ……」


ぐいと腰を回され振り返ると、見上げた位置にウォンヒの顔があった。


「――????」

 

言葉を失い、目を丸くするウォンヒ。


「ハハ……」笑ってごまかす俺。


ヤオが呆れた顔をしてうなだれる。


「タキくん……なんでこんなタイミングでそんなことしてんのよ……」


顔をのぞき込んでくるクラスメートたち。


委員長が口を抑える。


「え? え? え? 誰? え……神谷……くん?」


手に持っていた本を落とすボス。


「神谷く……???? え……タキ……お前……なの!?」


ピンクの豆を見つめる黒豆。


「エッッッッ」


俺は二ヶ月ぶりに――「女」になっていた。





◇◆◇◆◇◆◇





ギャル委員長とボスに振袖を着付けられ、教室に連行される俺。


「申開き」の機会を与えられるのかと思いきや――ギャル委員長がふとつぶやく。


「てかタキっち……女装ゲロ似合ってんな……」


ボスが続ける。


「……たしかに、同意……揺れるBooth……」


「バイブス共鳴、リンクenリンク?」と委員長。


「……たしかに、同意、Yeahその感じ……」


「オーケーBig mood、でもまだ足りない?」


(ドン……ドン……ドドン……)――誰かが机を拳で叩きはじめる。

(コツン……コツン……コツコツン……)――誰かが床を足で踏みはじめる。


「……うなずき一つで世界がSync……バイブス共鳴、リンク enリンク……」


(え、なにこ?……)

(ブース?……バイブス?……リンク?……)


などと思っていると、静かだった教室のムードが徐々に変わっていく。


「Rouge光る午後のClass」

「名前呼ばれて、神谷タキ、イマ登場」

「タキが笑って『今日も上々』」

「似合うじゃん そのFU・RI・SO・DE。鏡越しWink、心はStart?」

「『女装?』って笑うけどStop the hate! 彼のFlowは自由、それがUpdate」

「ネイルの先でRhythm刻んで、靴音はもうTrackみたいで」

「男の娘? そう呼ばれてもFine! 神谷くん、今日も新しいDesign」

「たしかに、同意、Moodは最高! 誰も真似できないStyleの台本!」

「ルールNo way、スライドDecoy、神谷タキ — That’s the duet」

「たしかに、同意、Moodは最高! 誰も奪えないStyleの台本!」

「風の中で俺らが言う、『もう迷うな』 — That’s the duet」

「心のままに進めばいいの——そのままの女装キミでいこう。イェア」


スポットライトが跳ね、クラスメートの歓声が波のように押し寄せる。


”ショート・ボス“改め「リトル・クィン」の持つマイクから、最後の一節が再び紡がれる。


「神谷くん——そのままの女装キミでいこう」


一瞬の静寂。


次の瞬間、教室フロアが――爆ぜる。


低音のビートが床を震わせ、照明が金色に弾けた。


二人のパフォーマーは肩を上下させ、熱を帯びた息を吐く。


止まらない拍手。


歓声が遠く霞んでいく。


俺は静かにつぶやいた。





――「なんやねんこれ」









F(フェム)スコア:★☆☆☆☆(12.5)【つぼみ】


みため   :★★★★☆(90)【※】ノーメイク

のめり込み :★★☆☆☆(20)

ドキドキ  :★★☆☆☆(20)

なじみ   :☆☆☆☆☆(-80)【※】2ヶ月ぶり

拡張スロット1:(未解放)

拡張スロット2:(未解放)


――――――――


【パラメーター指標】

0〜20:好奇心ノリ

21〜50 :趣味ハマりかけ

51〜80 :自己表現(楽しみとして確立)

81〜100:陶酔・依存(生活の一部・やめられない)

100〜:日常(新しい生活のスタート)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ