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え俺の性転換体質が……!?  作者: 六典縁寺院
家族バレ編

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2/25

家族全員バレ





あれから何時間が経っただろう――


俺は心を完全に殺し、恋をしない着せ替え人形(ビスクドール)の役目を全うしていた。


二度目の下着チェンジを終えると、ベッドの上に新しいコーデが置かれる。


「じゃ、次これね?」


「……はい、お姉様……」


どこかの”少佐”を思わせる超ハイレグボディスーツに、シンプルなクロップ丈のTシャツ。プラス、ミニスカート。


これって男脳的に考えると「私はエロに自信あります」ってアピってるような服だよね?


(うーわ、クロッチ細)

(てかフロントもこの幅だと「ついてる人」は着れないですよね?)

(これ作った企業は今の“オールジェンダー時代”をどう考えてるんですか?)


でもラッキーなことに今の俺は完全に女性化しており、その心配は不要だ。


覚悟完了。


ユウリが手を叩いてよろこぶ。


「いいじゃーん! 似合う似合う!」


「……はい、お姉様……」


そういえば――無くなってしまった「おちんちゃん」は、しばらくしたらまた生えてくるのだろうか?


身体に感じる「お胸っぽいもの」「お生殖器っぽいもの」を感じながら、ぼーっとしていると母の声が聞こえた。


「ユウリ~、タキ~! ごはんよ~」


ユウリ(だった青年)は、「あーあ……」と残念そうな表情を見せた。


「時間切れかぁ……ざぁ~んねん」


「……はい、お姉様……(助かった! 母さんあざすゥ!)」


ハンガーに掛けられた制服を手に伸ばすと、ユウリが腕を掴む。


「いや、なにしてんの?」


「……はい、お姉様……着替えを……」



そこでユウリが、壁を――ドーン!!!!



俺は壁際に追い詰められ、そのまま身体を押し付けられる!


片手で持ち上げられた顎に唇が近づいてくる。


「……お、お姉様……」


唇は重なることなく……耳元に近づいていった。


「これで終わりと思う? 思ってない……だろ?」


「……は、はい……お姉様……」


壁ドンからの――シッキュン!?


存在しないはずの子宮が疼く!

あるいは前立腺がゴリッ!


溢れ出るオスメス脳汁。


お汁で満たされた身体が、女装沼を越えて「女装湖ジョソコ」を生み出す(イミフ)


沈みゆく意識の中で、再び母の声が耳に届いた。


「ユウリ~、タキ~! ごはん~!」





◇◆◇◆◇◆◇





リビングに漂う重苦しい空気……。


テーブルを挟み、両親と向かい合うように座る姉弟きょうだい


誰もが口を閉ざし、沈黙の中に言葉を探している。


父や母は想像していただろうか?

いつか息子が「娘」となることを。


しびれを切らした父が顔を上げた。


「やっぱり……父さんは受け入れられない」


バン!――机を叩く母。


「あなた……どうしてそんなこと言うの!? みんな……みんな大切な『家族』なのよ!」


「すまない……」


父は首を横に振り、箸を置いた。


「やめて……そんな言い方……」


母は声を震わせ、肩を落とす。


黙々と食事を続けていたユウリが手を止めてつぶやく。


「……あたしはパパに賛成」


グラスの氷が――カラン。


その場で崩れ落ちそうになる母。それでもユウリは続ける。


「……やっぱ、たこ焼き・お好み焼き・ごはん・みそ汁って、組み合わせ的にヤバい。一生主食ってつらいよ……」


ユウリは俺を見て尋ねる。


「ね? あんたはどう思う?」


「え? ええと……」


ミニスカートの裾を握りしめ、脚を閉じると、いつもより太ももが密着しているのを感じた。


リビングに女装した息子(のような少女)が現れても、両親は何も言わなかった。


それは、“そのような生き方”を切望する人にとっては、最高の状況かもしれないが、そうでない人には最恐さいこわの状況。


残念ながら、俺は後者だ。


フツーに男のままでいいです。


結局いつも通りに夕食が始まり、なんやかんやあって、たこ焼きお好み焼きの話題に至る。


眉間にシワを寄せ、ユウリが顔を近づけてくる。


「――ねぇ~~~~、聞いてる? あんたはどう思うの?」


「そうだな。父さんはタキの意見も聞きたい」

「ママも気になるわ?」


三人の視線が突き刺さる。


「いや、は別に……」


おれッ!?」――


全員が食卓から身を乗り出した。


(あーはいはい、わかったわかった)

(さっき言われたやつね?)

(はいはい。やりますよ)


「俺」はうつむきがちに口を開く。


「う、『うち』は……べつにそこまで気にならないかな?」


うつむいた顔を上げると、三人は難しい顔をしていた。


「……うーん、これは『ない』かな? ……ママはどう思う?」


ユウリは首をかしげて言った。


「そうねぇ。やっぱりこれは系統が違うわね」眉をひそめる母。


「うんうん」と父。


三人は示し合わせたように深くうなずき、椅子に座りなおす。


ユウリが軽く手をたたき、祝うように告げた。


「おめでとー! これからあんたの一人称は『わたし』に決まりました! パチパチパチー!」



――パチパチパチ



この瞬間、俺は俺でなくなった。


(タキちゃーん? はーい!)

(なにが好きー?)

(チョコミントよりも、たっこやき!)


俺はたこ焼きをぽいと口にいれ、()()()()言いながら食べる。


「わ、わたしは別にどっちでも……(はふはふ)……」


(これでいいんだろ、これで!?)

(おお!? 文句あっか!?)


ユウリはお茶で、父と母はグラスに入っていたワインで、それぞれが祝杯を上げた(何のだよ)



幸せな(?)時間は――つづく。



「ところでブラどう? きつくない?」


「――ぶフッ!?」


「明日にでも買いに行かないとね?」


「べ、別に……大丈夫……だし」


食卓で姉妹が何を話すかは知らないが、たぶんブラがどうこうとかもあるはず。


それはごく自然なことで、両親がいようがいまいが、妹が男か女かなんて関係ない?


ユウリは容赦なく話を続ける。


「ネットで買うなよ? フツーに失敗するからね? ファーストブラはちゃんとしたお店で測ったほうがいいよ」


「へ、へぇ……」


「たぶんC65だよ」


「ほ、ほーん……」


「(色々選べて)ラッキーじゃん?」


ラッキーの意味がわからないが、俺はとりあえず「そ、そう……」と返事をした。


今、俺の「ちいさなお胸」を持ち上げているのは、ラベンダーカラーのレーシーコードブラ。同素材の小さめフルバックショーツは、キツくもなくユルくもなく、「つるんとした下半身」にジャストフィット。


どちらもユウリが高校時代に買い、デッドストックになっていたものだ。


「ちいさなお胸」と「つるんとした下半身」


この響きである!


あいかわらず――身体は女のまま。


おちんちゃんは戻ってきていない。


(おいおい……)


「葛藤」も「覚悟」も全部すっ飛ばしていきなり女体化するって……フツーに日常生活が崩壊するレベルだぞ?


(明日からどーしよ……)

(来週には戻ってるよな……)

(さすがに来月まで続くってことはないよな?)


こういうのはフツー、数年かけて「移行期間トランジション」を設けたり……グラデーションしていったりするんじゃないのだろうか?


(お湯かぶったら元に戻るかな?)

(神社で霊的なロリ娘にお願いすべきか?)


愛しさと切なさと女性用衣類をまといながら、俺は今後の身のふり方を考えていた。


食後のフルーツが出てくると、何かを思いついたかのようにユウリが声をあげた。


「あ、パパ?」


「どうした、ユウリ?」と父。


「タキさぁ――身体も女の子になってんだけど?」


ザクロを吹き出しそうになる俺。


父は冷静に答える。


「ふん……そうか」


(いや、軽ゥーーー!?)

(反応軽すぎない!?)

(てかまだ心は女になってねーから!)


なってない……はず?


(いや、え……なっちゃうの?)


母が割り込んでくる。


「たぶん今なら……一日か二日すれば戻ると思うわ。統計的には……“女装した2.5倍以上の時間を男装で過ごして、ちょっとひと眠りする(最初のノンレム睡眠)”――で身体が元が変質するの。でもタキは“初めて(ヴァージン)”だから、もう少し時間がかかるかもしれないわね。はじめは痛みをともなうことも多いんだけど、そうじゃなくて安心したわ。あと“Fスコア”にはくれぐれも注意してね?80超えると……まぁ、知らんけど」


(いや、詳しィーーーー!?)

(それ絶対なんか知ってる口ぶり!)


(あと母さんの「知らんけど」って、久々に聞いた!! やっぱ本場の人はスムーズやん!?)


ユウリは椅子にもたれかかり、気だるげに言った。


「……だってさー、どうするー?」


「どうするって……着替えて元に戻るなら……さっさと男に戻ったほうがいいんじゃないかって――」


「いやそーじゃなくてさー? ……明日さー、みんなとジャコスモール行くんでしょ?」


「あ……そか……」


ここまでに三話を消費してしまったが、明日はヤオとマルケスと出かける予定が入っている!


――「ジャコスモール中央駅に午前10時集合にしようぜ!」


俺はようやくそのことを思い出すと、焦りを感じた。


「ママが言ってたとおりなら、今から着替えても間に合わなくね? どーすんの?」


「そ、それは……なんかうまいこと誤魔化す感じで……」


「Tシャツ着ていくの? ノーブラで? アホ?」


「そ、それは……」


母の言う「着用時間の2.5倍云々」がそのとおりなら、今から着替ても間に合わない!


ワンチャン着替えて寝るとしても、朝起きて戻っていないのなら、結局女装したまま行くしかない!


つまり――積みだ。


「じゃ、どうすんだよ……」


「ふふふ、それは――」


ユウリが何か言いかけたところで、父が片手をあげた。


「あ、父さんと母さんからも報告が――」


「はいパパママ、どうぞ」


父と母は深刻な表情をみせる。


「父さんと母さんな……実は未来人なんだ」


「ずっと黙っててごめんなさい……」


どこから取り出したのか、母の手には「いびつな立方体」が握られていた。


「とりあえず、宇宙で説明するわ……」


ヴン……





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