表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
え俺の性転換体質が……!?  作者: 六典縁寺院
沖縄旅行編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/25

冒険





――――――

★ホロスティック:武器や防具、攻撃や防御魔法を扱うための棒

★冒険者ポンチョ:ペルチェ繊維製の防水冷却ポンチョ

★無限ポーション:パーク内ドリンクバー専用の水筒(アルコール不可)

★地図、虫除けなど

――――――


冒険用ギルドで「魔道具」を受け取り、俺たちは「はじまりの村」を旅立った。


村を出てすぐ、後ろから“カポカポ・ゴトゴト”という音が聞こえてくる。


「お?……馬?……」


幌馬車を引いた馬が近づいてくる。


「そういや乗合馬車って手もあったよな……って――でかッ!?」


巨人化したマルケス(4メートルくらい)にはおよばないが、いつものマルケス(180センチメートル)をゆうに越える体高。


脚は太く、胴は太く、フツーの競走馬に比べれば段違いの体躯。


馬車は俺たちの横を悠々と通り過ぎていった。


「――あれ使えばいいじゃん!?」


ユウリは首を横にふる。


「ああいうのはね……意外に“詰む”んだよ」


「……顔も割れるし、逃げ場がないから。すか?」


武闘派らしい発想でマルケスがたずねると、ユウリは目を細める。


「ま、そんなとこ」


たとえ徒歩でもイベントは発生する!



――ホロスライムとの初バトル!


ミョーに人懐っこく可愛げがあるスライムが登場! 初めて間近で見る「ホロモン」ということもあり、なんとなく見逃してやる。


――追い剥ぎに襲撃される!


()()()()()()()()冒険者パーティーに戦い方のコツを教えてもらいながら見事撃退! ビジターかキャストかまったく見分けがつかない人たちだった。


――「迷いスライ厶」を探す家族に遭遇!


さっき見かけたスライムの場所を教えてやると「次の村バーガー」の無料チケットをくれた。こっちは間違いなくビジターだと思う。


――角ウサギが襲来!


魔族三人により瞬殺。


――切り立った崖をジップラインで滑走!


落ちたら即死、どうみても高さ50メートルはある崖! ホログラムだと分かっていても怖すぎてちょっとチビった。





◇◆◇◆◇◆◇





そんなこんなで「次の村」に到着すると、夏のイケナイ太陽はもう真上をすぎていた。


名物の“次の村バーガー”を小さくかじり、俺は重要な話しを切り出す。


「てかこれ――終わんなくね?」


ユウリはアイスコーヒーをひと吸いして、短く答える。


「ムリっしょ?」


「『はじめの村』から『次の村』行くだけで午前中使ってるもんな……」


追加注文を取りに行っていたマルケスが戻ってくる。


「ほんそれっすね! 高レベルのバカでかい魔物がいるエリアって、村でいうとまだ三つくらい先ですからね……」


「遠ぉ……」ぼやくユウリ。


「やっぱ馬車イヤですか?」ヤオが尋ねる。


ユウリは頭を反らして再びぼやいた。


「馬車かぁー……馬車なぁー……うーん……『勇者くん』とのトラウマがなぁ……」


(なんのトラウマだよ……)

(てか勇者は「くん」呼びなんだ?)


そう思いながらバーガーをトレイに置くと、敷かれた紙が目に入った。


俺はその紙を手に取り、ある場所を指さす。


「てか、この『中級者の森』ってショートカットできねーの?」


「あー……中級者の森なぁ……」


眉をひそめるマルケス。


「わたしはともかく、みんな余裕で”廃人“レベルじゃん? ヨユーで通れるんじゃね?」


マルケスは頭を押さえ、深いため息をつく。


「かーッ、これだから世間知らずのお姫様は……」


「いいかタキ? この森は、どの村からも通いやすい“狩り場”で、どのレベルの冒険者も集まりやすい」


「それが?」


「つまりパークで一番人が多い場所なんだよ」


「ほう?」


「くぅーッ、まだ分かんねぇ!?」


「わからんが……」


「まず魔法の説明をするとだな……」


ユウリ、ヤオ、マルケスらが使う固有魔法「鑑定無効化」は、常時発動アクティブの魔法だが完全無欠ではない。


「鑑定」系の最上位魔法である「完全看破」や特殊な魔道具、あるいは戦闘中の予期せぬ動きによって、ステータスが丸裸になってしまう場合があるのだ。


「つまり――万が一バレた場合、そこら中の村から援軍がきてボコられるってことか?」


「はい姫様、正解!」


「なる」


チャーター馬車で異世界を観光するという案も出されたが、ポっと出の冒険者にそのような「ボルグ」はない。


異世界「シャングリラ」において所持金と経験値は、課金でも得られないものなのだ。


少し残念そうな顔をしてマルケスが言う。


「ま………今日のところは、散歩して色々見てまわるってことで?」


「何回リピートしても楽しめるのがウリだし、ある意味しゃーないよねぇ~?」


ヤオがうなずく。


しかし、納得のいかない表情を浮かべるユウリ。


「これだから魔王は……」


せっかく「異世界」へ来たというのに、「魔王」という立場のせいで自分の行動が大きく制限されてしまっている。


実際にユウリは「元・魔王」経験者ということもあり、よけいに悔しいのかもしれない。


(そー思うとなんかかわいそうだな……)

(ホロモンばっかじゃなく、せめて高レベルの実物の魔物でも見せてやれたなら……)

(何かいい方法……ないのか?……)


「魔王」ならでは――という方向でいろいろと考えてみるが、ひらめきは降りてこない。


(魔王魔王魔王魔王……)

(固有スキル、特殊召喚に特殊武器、特殊魔法に……)


(ん? 特殊……魔法……?)


(……まてよ?)


(そうか……)


(その手があった!)


(魔法……『魔法』だ!!!!)


俺は立ち上がり、指を立てて注目を集める。


「わたくしにいい考えがございましてよ!」


食事の手を止め注目する三人。


だが、何かに期待する感じではない。


「はいタキちゃん。どーちまちたー?」


だるそうに俺を名指すユウリ。


「それは――」軽く息を吸い込み得意げに答える。


「『魔王』の『魔法』ですわ」


少し間が空く。


ユウリがため息まじりにポテトを振りまわす。


「はぁ……魔王の魔法? そんなもんでなんとかできるなら……」


「いやいや……()()()の魔法じゃなくて、()()()の『魔法』――おわかりにならないかしら……『元・魔王』さま?」


「……?」


俺が何を言っているのか分からず、首をかしげるヤオとマルケス


腕組みをしてたユウリが「あ」と何かに気づいた。


「そうですわ! こういうときこそ、そのチカラを使うときではなくって?」


ユウリはにやりと微笑み、残っていたアイスコーヒーを一息で吸い込んだ。


そして、ヤオとマルケスに尋ねる。


「こないだジャコスであげた“お守り”、二人とも持ってる?」


「あこれっすね? 肌身離さず持ってます」


マルケスはキーチェーンを持ち上げ、例のお守りをユウリに見せた。


「わいも持ってますよ? ちょうどサイズピッタリだったんで」


ヤオはスマホの裏側をひっくり返し、リングストラップを見せた。


「え……それはまずくないかしら……?」


焦る俺。


(あれれー?)

(なんか思ってた展開と違うな……)

(予想では『姿が見えなくなる魔法』で簡単に――ってなるはずが……)


(てか二人とも……)

(それは良くないブツなんだ!)

(やめろ。いますぐそれを投げ捨てろ!)


(それをキメると……ガチムチの意味分からん魔物とか、痴女レイヤーになるんだぞ!?)

(しかも後で変な記憶に差し替わってるし!?)

(絶対脳に悪影響あるぞ!?)


心の中の叫びを表情で伝えようとするが、もちろん二人には伝わらない。


「ぐぬ……そうじゃなくて……こう……」


ユウリはマルケスに目を合わせ優しく微笑む。


「とりま全部食べ終わったら、森のほうちょっとだけのぞいてみよっか?」


「えどしたんすか急に?……」


「誰もいないとこ……行きたくない?」


「あ、え……まじすか……////」


マルケスは顔を赤くしながらバーガーを口に詰め込んだ。





◇◆◇◆◇◆◇





――ドッドッドッドッ!



六本腕の巨人に()()()マルケスが、森の中を駆け抜けていく。


慣性力を無視したような加速と減速。


まるで「黒い風」


肩に乗るユウリは、まるで絶叫マシンにでも乗っているような笑顔を浮かべている。


ふたりの目に世界がどう見えているのか分からないが、楽しそうな声が空まで聞こえる


「うぃひひひひぁー!! ほらそこッ! ――ジャンプ!!」


「わはははは! 爽快ッ! 実に爽快ですなぁ!」


一方の俺はというと――


紐バニースーツ姿のヤオに抱えられ、上空から二人を見下ろしていた。


ユウリの魔法により姿は見えなくなっている。


そこでふと疑問に思ったことをヤオにぶつけてみた。


「てか“見えなくなる”のはいいとして……音とか振動ってどうなってんの?」


「ふふ、それはですね……」


わざとらしく豊胸ゆたかむねを身体に押しつけ、ヤオは楽しそうに答える。


「あの状態が『自然』だからですわ」


「いや自然ではないだろ……」


「自然ですわ――わたくしたち()()()()()《・》()()()()


「どゆことだよ?」


魔杜まもりから生まれた一族」だけが使える「魔法」とは、神と悪魔の「ことわり」を調律する理論体系である。


すべての不自然を自然にする。


「神魔の法理」――それが魔法。


とヤオは語った。


「つまり――なんでもありってこと?」


「『調律』さえできれば、理論的には“なんでも”可能ですわ……ただ実際、そうはいきませんが……」


「ほーん……なんかむずかしいな……」


「ふふ」


前に一度、ユウリに聞いたことがある。


「お前の魔法っぽいので、俺の性転換体質戻せないの?」


返ってきた答えはこうだった。


――「見た目じゃなく、存在そのものをそんなコロコロ変えるような魔法は存在しない。てかあんた魔法効かないじゃん? てか存在がイミフすぎるのよ」


つまり、ヤオの答えと矛盾してるような感じ。


(ほならね……)

(なんですのこのおっぱいは?)

(なんですのこの何もないお股は?)


性転換体質になってから、とりま今のところ大きくトラブルはない。


(若いから意外になんとかなってんのか?)


だが……体質改善が見られないようなら「女装」そのものを人生から封印しなければならないかもしれない。


(別に困らんよな?)

(若いうちしかこんなことしないだろうし……)

(おっさんになる頃、まだ女装してるとは思わ……)


今は存在しないおちんちゃんを下半身に感じながら、俺はつぶやく。


「まあそのうちマシになるだろ……」


頭をひねっているうちに、森の先が見えてきた。


「おおっ! あれが魔族の村か」――





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ