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比翼の風  作者: 鷹峰悠月&若臣シュウ
二、足跡
16/26

二、足跡(16)

 それから。ウェルティクスは丘をくだり、村の隅々を見て回った。

 畑は荒れ、商店は閉じ、蔵は扉が壊されたまま放置されている。

 集落全体に覇気がなく、村長の言うように、限界まで追い詰められていることが伺えた。

「これは……」

 ――晩餐を辞退して正解だったかもしれない。

 そんなことを思いながら、石畳の路地に沿って歩く。

 村の中心まで歩いていくと、ちいさな池が目についた。

「成程。生活水は、この池なのですね」

 池を起点に放射状に水路がひろがっており、幾つもの水車が設置されていた。

 この水車を利用して、村の隅々に水を供給しているのだろう。

「川などを生活水に利用していた場合、上流から毒を流される危険性がありますが……

 ここでは、そういった心配はないようですね――」

 なおファングはといえば、仏頂面のまま後ろについてきている。

「……おい」

「はい?どうし――あ、」

 それまでずっと沈黙を保っていた彼の呼びかけに、振り向くウェルティクス。

 と、見慣れた姿がその視界に飛び込んできた。

「イルク?

 もう修理を終えてきたのですか?」

「あ、いや……」

 驚いた顔をする主に、イルクはもごもごと口籠る。

「?」

「その、村長殿の家に雨漏りがあったのでな。気になって、屋根も修繕しておったのだ。

 お陰で遅くなってしまった。面目ない」

「…………。いえ、早かったですねという意味だったのですが」

 ……こんな短時間に、そんな大工仕事まで引き受けていたのか。

 半日はかかるだろうかと見込んでいたウェルティクスは、これには流石に少々面食らったようだった。

「む?これは立派な水車だな」

「ええ。そうですね。

 ……水車……か」

「この水車がどうされた?」

「いえ。村の自衛手段について考えていました。

 この水車の動力を利用して投石機カタパルトを造れたらと思ったのですが……」

「投石機?というと、石を投擲する――」

 イルクはおもむろに落ちている小枝を拾い、地面に何やら車のようなものを描き出す。

「こういった兵器の事だろうか?」

「え……ええ」

「簡易的なものでよければ、半日程度で造ることは可能だと思うが……」

 その申し出に、思わずウェルティクスはぽかんと口を開ける。

「……造ったことがあるのですか?」

「否、造った経験はないが何度か砦で見た。

 原理は何となく理解できた故、ある程度の木材と金属さえあれば似たものは造れるはずだ」

 しばし待たれよ、と。

 イルクは返答も待たず、林の中へと潜ってしまう。

 二人は呆然と、その背中を見送っていた。

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