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クリスタルアームズ─原罪武装  作者: シオン、無光、冷月雪
第ー章─オードル
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01─襲来



 同日、午後四時、一人の青年が窓の外を見つめながら悩んでいた。


 「ビクトールは……今頃イガレイでジャスミンおばさんとヘシと楽しく話しているだろうな。だけど、僕は……」

 御和みかずはこっそりとため息をつき、明日の営業用の飲み物をバーに運び続けたが、背後にいる親父がハンマーを持って頭に叩きつけようとしていることには気づかなかった。


 「あらら、あなたの大好きな葉巻を買ってきたのに。どうして私たちの唯一の息子を殺そうとしているの?」

 御和は声に振り向くと、ニヤニヤしている親父と買い物袋をたくさん持っている母を見て、少し状況が把握できなかった。


 「え?親父、ハンマーを持って何をしているの?それに、母さん、またいらないものをたくさん買ったのか——」


 「アハハ、何を言っているんだ!俺は仕事中なんだからな、そうだろ、息子?」親父はハンマーを上に向かって振り上げた。


 「もう完成してるじゃないか……」


 杖をついた親父は苦笑しながら説明し、御和は仕方なく再びため息をついた。母は、買ってきた雪茄を持ちながら親父を冗談で脅し、満足げに笑っていた。


 この小さな新天地において、三人は互いの関係を楽しんでいた。これが御和一家の日常のコメディであり、同時に幸せで、ある人々にとっては触れられない光景でもあった。


 「母さん、夕飯は何を食べる?」

 「うーん——わからないね、隣のおばさんのファーストフードでも食べに行こうか?」

 「おいおい、君たち二人、酒場の完成を祝うために今晩近くのレストランで火鍋を食べるって言ってたじゃないか?」


 母子は一斉に右手で左手の手のひらを叩き、「ああ!そうだね。」と声を揃えた。


 すると三人は顔を見合わせて大笑いした。


 夜、静かに一家の上に降り、幸せの中で静まった。満腹の三人は帰宅し、それぞれのことを始めた。



 母は、父が持っている新しい葉巻に火を点けようとするのを見て、さっとそれを奪い取った。

 父は慌てて両手を挙げて謝罪した。御和みかずはその面白い光景を見て、思わずぷっと笑い出した。

 喉が渇いていたので、手元にあった飲み物をつかみ、一口飲むと、見た目は炭酸飲料のような液体だった。それは本来、明日の販売用に準備していたマグネットバブル酒だった。


 御和にとって、飲酒ができない彼は、一口入ると酔いが一気に回ってしまった。「げっ!う……頭がクラクラする、ちょっと外で風に当たってこよう……げっ!よし。」


 最高の景色を楽しむなら丘の頂上が一番だと、御和はためらうことなくふらふらと山丘に向かって歩いていった。


 「はぁ……風が涼しい!風さんも今日は元気がいいね。げっ!」

 彼は手近に咲いているオドール特有の花を摘み、その浅い墨紫色が花々の中で高貴に映えた。この雰囲気に、まるで自分が舞台に立って何かを演じる準備をしているかのように手足を動かし、不協和音のメロディを口ずさみ始めた。


 この高さからは、夜中でも全てのオドール港が見渡せた。薄暗い文明の火が、周囲の波光粼粼とした海に包まれて、東方の島々のタガニア人が自然と平和に共存している姿を見事に表していた。


 十数分間、気が狂ったように楽しんだ後、疲れた御和は、広がる星空が見える最高の場所を選び、清香に満ちた未知の花畑に心地よく座り込んだ。

 星々を数えたり、手に持った花を舞わせて心の中の楽団を指揮したりしながら、半夢半醒の朦朧とした状態で、無限の悠然さを感じていた。


 彼にとって、これは人生の最高の楽しみであった。


 「ん? 流星?」


 御和みかずは目を細めて頭上の輝きをじっと見つめたが、考える暇もなく、その光が彼の背後の遠くない場所に降りてきた。


 ほんの一瞬だったが、「それ」が降りてくるとき、御和は確かに生物のような大きな目を見た。それは不快な残光を放ち、思わず背筋がぞくっとした。酒も完全に覚めてしまった。


 「それは……ビクトール!」

 彼はどうしてあそこにいるんだ?とても危険じゃないか! それに、光源に近づいて一体何をするつもりなんだ?


 御和は少し心配になったが、その瞬間、明るい光は突然消え、ビクトールの姿も夜の闇に飲み込まれてしまった。


 ……


 「幻覚なのか?さっきの酒はあまりにも怪しかった……帰ろう。」



 散らばった草や泥土を払いながら立ち上がろうとしたとき、背後のあの奇妙な光が再び閃いた。御和みかずは振り返ると、ほんの一瞬で背後のオドール城に警報が鳴り響くのが見えた。


 港、市街、主城など、各地域で次々と炎が燃え上がった。東方の世界で最大の港町——そして首都のオドールが、なんと……燃えていた。


 周囲には悲鳴と泣き声が絶え間なく響いていた。建物の崩壊や爆発音が、御和を極度の恐慌に陥れた。


 「……いったい何が起こっているんだ?戦争はもう終わったはずなのに!父さん、母さん——急いで帰らなきゃ!」

 御和はその場に呆然と立ち尽くし、山丘の下にある本来は静かで穏やかな通りを見つめた。しかし、その通りは瞬く間に死神の炎に染まっていき、脆弱な命を侵襲していた……その光景に彼は衝撃を受けた。もはやあの奇妙な光に気を留める余裕はなく、全力で家に向かって走り始めた。


 「父さん、母さん……」

 呟きながら、目はすでに迷子になり、空洞のようだった。支える力は生存への渇望ではなく、家族への心配から来ていた。


 途中で何度も転んだが、痛みを感じることはなかった。



 「そうだ——ビクトール!」

 御和みかずは足を止め、どこに走るべきか躊躇していると……


 「シュッ——」

 一発のミサイルが御和の左側遠くない場所に向かって飛んできた。爆発の風圧で、御和は十メートル以上も吹き飛ばされた。


 「ぐ……」

 血は涙と共に止めどなく流れ出る。「父さん……母さん……」

 発した言葉は誰にも聞かれず、自分の声さえ確認できない。耳元では耳鳴りが続いていた。


 頭はすでに思考できない状態で、御和は突然、すごく疲れてしまった……まぶたが閉じる前に、最後の力を振り絞って山丘の方を振り返り、「ビクトール、戻るな……街には……」と言った。


 そして、次の瞬間は真っ暗になり、五感は完全に失われた。


 「はは……風さんが、彼の耳に届いてくれたら……いいのに。」


 その時、御和は思い出した。数年前、両親と一緒にこの山丘に来たことを。父親が無造作に摘んだ花。それは「涙人花(るいじんか)」と呼ばれていた。


 

そして、この花の花言葉......


 ——「復讐」。













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