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第39話 1017番の対決 2

 受付前でちょっとした騒ぎを起こしたせいで、何故か二階層にギャラリーが集まった。


 これでもこの支部ではそれなりに実績を積んだ私が弓の腕前を披露する、ということで興味を抱いた他の探索者も二階層に着いて来た。


 何時のまにか受付に現れた職員の野田さんも、何故か一緒に二階層に降りている。


「勝負の判定する人間、必要ですよね?」


 と先頭を歩いている。

 その後ろを私、そして顔だけ男。ってちょっと待って。弓はどうしたの、弓は。


「何で弓借りてないの!? 私のは貸さないからね!」

「自分のがあるから大丈夫だよー、ほら」


 片手を上げると、綺麗な青藍の和弓がそこにあった。あれ、さっきから持ってた? あれ? いつから?


 少しずつ濃淡の違う青色のグラデーション。握りと弭、つまり真ん中と両端が濃いめ。要所要所に銀色の飾りが見える。何あれ? 竜の蒔絵? とにかく物凄く派手。

 いつの間にか揃いの矢筒も背負っていて、多分、矢も同じシリーズのが出て来るんだろうと想像出来た。

 どこのドロップ品であんな派手な一式が出るんだろう。


 つい見惚れてしまったけど、なんでこの顔だけ男がこんなに立派な弓矢を持っているのか。

 こっそり【鑑定】したら、今のスキルレベルでの結果は『測定不能』。つまり、私に見ることのできないレベルのとんでもない高品質か、ただの玩具かのどちらか。

 うん、玩具だ、きっと。


 さてと。そろそろ私の自慢の逸品を出すとしましょうか。

 最近やっと【収納】のレベルが五になったので、弓も余裕で入る。

 ギャラリーの前で大袈裟に片手を上に伸ばして取り出す。武器の前にまず【収納】の自慢。


「さすがランク(シングル)……【収納】持ってるんだな」

「そりゃそうだろ、(シングル)だぜ?」


 だから、シングルじゃなくてエスだって。


 ご覧なさいな、これが六十五階層のボスからドロップした最高の品だ。

 朱色の美しい弓。矢も同じく朱色の羽根が着いている。去年入手してからはずっとこれを愛用している。


「何だか凄そうな弓矢だな」

「ランク(シングル)が使うんだから、深層のドロップだろ」


 ギャラリーの潜められた声を拾う。ちょっと気分が良い。


 ちょうどそのタイミングで野田さんが立ち止まる。

 二階層で一番開けた空間だ。

 遠くに何本かの通路が見える。


「はーい、ちゅうもーく! お二人は向こうから出て来るゴブリンを倒してくださーい! 十体を効率良く倒した方が勝ちでーす!」


 後ろのギャラリーにも聞こえるように説明してくれる。

 うん、早ければ良いってもんでもないしね。

 そもそもあの玩具がゴブリンに刺さるのか疑問だけど、ランク(エス)がどういうものなのかをアピールするチャンスだ。


「お先にどうぞー」


 顔だけ男が一歩下がって私の前を開ける。

 じゃあ度肝抜かれちゃってくださいな。


 通路から出て来る凶悪面の二足歩行の子鬼。二体。

 矢を二本番える。このやり方で四匹までは同時に狙える。

 折角だから、わざとあまり狙いを付けずにすぐに射る。その方が多分アピールにはなるから。


 当然のように矢は二本とも子鬼の眉間を射抜く。

 そして後ろから漏れる感嘆の吐息。ちょっと気持ち良い。


 少し間を開けて、今度は三匹。また同時に三匹の眉間へ。再び吐息。うん、良い。


 ちらっと顔だけ男を見ると、にこにこしながら佇んでいるだけ。もっと焦った顔してるかと思ったのに。


「交代! どう、ランク(エス)の実力は?」


 圧勝するのは簡単だけど、ついでだから恥かかせてやろう。

 半分を倒したところで一度前を譲ってみると、顔だけ男は「いいのー?」と野田さんに確認してから私と場所を入れ替えた。


 その見た目だけの弓でゴブリン倒せるわけがないけど、まだ降参はしないらしい。


「時間かけるのも悪いからすぐ終わらせるねー」


 そう言うと、右手を前に伸ばし、掌を奥の通路へ向ける。

 何してんの?

 と。

 暗い通路から沢山の足音。何かが走ってこちらへ近づいている。


 ゴブリンは普通、二、三匹でしか行動しないし、この二階層にはゴブリンしかいない。

 なのに聞こえる足音は十数匹のそれ。

 なんで?


 疑問が解消されることはなく、本当に群れが見えた。

 さすがに後ろのギャラリー達も異常事態に焦り出す。さっきとは違うざわめき。

 なのに野田さんと顔だけ男は落ち着いている。


「はいはーい皆さん! これはモンスターを呼び寄せるスキル【招来しょうらい】でーす」


 やばい、私も知らないスキルが出て来た。何でそんなもの持ってるの。


「短時間にたくさんモンスターを倒したい時にとても役立つスキルですから、皆さんも参考にしてくださいねー!」


 野田さんが平然と恐いこと言ってる。

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