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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

双子と想い人

作者: フジ嵩あき

 


 俺はとにかくあいつと何もかも張り合わなきゃいけないのが嫌だった。


 剣術に、勉学に、儀式、作法に。ありとあらゆるものを俺たちは共に行い、切磋琢磨してきた。


 まぁ、正直それはしょうがないと思うんだ。俺とあいつはこの国をいずれ背負っていく人間だ。人並み以上を求められて当然だし、過酷な状況に身を置くことも大切だということも知っている。


 でも、何もかもあいつには勝てない。というより、何もかも父親にあいつと張り合わされるから順位や勝ち負けが生まれる。そして俺はいつも負ける。


 悔しかった。恥ずかしかった。何より、お前に何一つ勝てない俺なんかが次期国王に決まっている事実に詫びたい気分だった。


 だから、全て競わされてきた俺たちだけど、ひとつだけ競わなくてもいいものがあると知った時歓喜した。順番をつけられることも、負けることもない。


 優劣をつけたりせず、俺を唯一として選んでくれて、それをあいつも喜んで祝福してくれる。なんて幸せなんだろうか、と思った。俺は天才なんじゃないだろうか。



 何故なら、俺は男で、あいつは女だから。



 伴侶は異性を選び、俺たちは別々の人を選ぶ。つまり、伴侶選びではあいつと競わなくていいんだ!


 そのことに気付いてから、初めて自分にとっての異性を意識するようになった。正直この歳になるまで、いつもあいつのことばかり考えていて、恋愛などしたことはなかった。元々モテないのもあるかもしれないが。


 そして、しばらく経った頃、想い人が出来た。花のように明るくて可愛らしい人だった。


 そして、俺は想い人が出来たことをあいつに伝えに行った。変な話だが、政務以外ほぼほぼあいつ中心に回っている日常で、何かあれば(特に何もなくても)、あいつに報告に行くことが俺にとっての普通だった。


 でも、あいつの表情を見て俺は察した。いや正確に言うと、俺の想い女を見つめるあいつの顔をみて、分かってしまったのだ。あいつは、あいつも、俺と同じように、あの可愛い人に恋をしている、とーー。



◇◇◇◇◇



「いや、」



 双子だからってーー。



「こんなとこまで似なくていいだろうが!!」

「五月蝿いぞ、貴様。もう一度のされたいのか」


 目の前には、一見すると大層美しい女が立っている。硬い防護服に身を包んでいても、豊かな身体は抑え付けられることはなく、むしろ重たいはずのそれを押しあげてしまっている。その豊満な瑞々しさと女性としての柔らかさを持ちながら、引き締まった身体は周りを魅了してやまない。その相反するものを内包しながら凛として立つ姿は、無自覚に異性に情欲と加虐心を灯してしまうだろう。


「いった!! レット! お前なぁ、もうちょっと兄に対する敬意というか、次期国王を大切にする気持ちというか、女としての可愛らしさとか、なんつーか、そういうもんを拾ってこいよ!」


 次期国王であり、レットの双子の兄であるマーティアスはプラチナブロンドをたなびかせる美しい妹に向かって吠える。


「安心しろ。私はちゃんと女だし、貴様のことは命を賭けても守るつもりでいるからな。しかし、それとこれとは別だ。稽古中でありながら、訳のわからんことをぶつぶつと。集中しないか!!」


 マーティアスが幼い頃から、全ての物事において競うようにされてきた妹。マーティアスはそんな妹に何十回、何百回、何千回と負けてきた。最初こそは、次は勝とう、次こそは!、と思っていたマーティアスであったが、人というものは状況に慣れてきてしまうものだ。段々と敗北に慣れていき、その上何においても完璧なレットに対して最終的に尊敬の念を抱くようになった。そしてマーティアスはレットに剣術をこうた。初めてマーティアスがそのことをお願いした時のレットは見たこともないような珍妙な顔をしていたものだが、何回も頼み込むといずれ了承してくれた。マーティアスが到底叶わない彼女は、今やマーティアスの剣術の師範をしている。その上、女でありながら騎士団の第二部隊副隊長を任されているほどだ。


「双子の妹に剣を教わる次期国王。ふっ、字面だけでこの国の未来が心配だぜ」

「そう思うのなら、真面目に取り組むことだな」


 今日も今日とて、男の兄より男?漢?らしい妹は、剣を振るった。




◇◇◇◇◇◇


 なぜ俺がこんなにも悩んでいるのかと言うと、ある日、気づいてしまったのだ。



「つーかさー、何でお前が男じゃなかったんだろうな」

「また貴様は、どうしようもないことを」


 鍛錬が終わった後、訓練所から王宮に戻る途中で、マーティアスはもう何度目かわからない問いを口にした。


 歩く二人のことをちらちらと見ている視線とぶつかる。その視線はほとんどレットに向けられたものだ。それも男性だけでなく、女性まで顔を赤らめながらもレットを熱っぽく見つめている。


 この国では、次期国王になる者の婚約者選びは王宮で、貴族から一般市民までの同い年の少女が集められ、一定期間共に王宮で過ごし、次期国王自ら婚約者を一人選ぶ。共に過ごすといっても、広大な王宮なので、一日に一回会えるか会えないかくらいの接点しかない。それこそ王宮に入らなければ、催事などを除いてほとんど王族とは関わらないので、最初は少女たちも婚約者になろうとマーティアスに近付いた。しかし、常に側に仕えるレットにほとんどの少女たちは心を奪われ、今ではマーティアスではなくレットに黄色い声援を送るほどである。


「はぁ、顔でも負けてる俺って!! 双子なのに、双子なのにぃーー!! きぃー、悔しいー!」

「貴様のそういうやかましいところがさらに自分自身の品位を下げてしまっていることにそろそろ気付け」


 そのクールな対応や数多の視線をものともせず颯爽と歩く姿を、泣き真似をしながら指の隙間からちらりと覗く。


「お前はかんっぺきに父上似だもんなー。顔よし、頭よし、運動神経よし、負けなし! 最高じゃん。俺が何度お前を妬み、悔しがってきたか!?」

「そうか? 私はお前の顔、割と好きだがな」


 その言葉に、少しだけ気分が上がる簡単な男がマーティアスである。


「ま、まぁ俺の顔も悪くはないからな!!」

「というより、お前が似ている母上の顔がとても好きだっただけだ」

「なんだよぉ! 褒めるなら最後まで褒めておけよぉ」


 うぅ、と再び落ち込むマーティアスを無視してレットは進む。マーティアスのちょっと先を行くレットが足を止めたのはそんな時だった。


 不思議に思ったマーティアスが、レットの視線の先を辿ると彼女がいた。亜麻色の髪をカールさせて友人と微笑んでいる。レットのような華やかさはないが、柔らかい雰囲気を持った優しい人であることをマーティアスは知っている。そんなところに惹かれたのだ。


 彼女は貴族ではなく、一般市民だ。この国では次期国王の婚約者の身分は問わない。国王陛下の妃、今は亡きマーティアスとレットの母親も一般市民であった。次期国王の婚約者候補になる方法は、ある一定数の人間の推薦書を集め推薦されること。貴族は正直にいうと、金の力で推薦書を集めるのは簡単であり、よく秘密裏に行われている。しかし、お金も特別多く所持しているわけでもない一般市民でそれだけの数の推薦書を集められたということは、それだけ人物や能力で優れている点があるということだ。ちなみに被推薦人がその気はなくとも、推薦書が集まってしまえば婚約者候補として王宮に行くことは絶対とされている。


 可愛い彼女は友人と話が終わったのか手を振って別れ、マーティアスとレットに気が付いた。その瞬間、ぱぁと背後に花が舞いそうなほど嬉しそうにこちらにかけてくる。マーティアスは可愛いなぁ、と思った。その彼女の恋をしているかのような顔を見て、なるほどやはり彼女もレットが好きなのかと一抹の痛みを覚えるが、それもそうかと納得する。




 そして、そのままレットの元に一直線に向かーーーーわなかった。


「マーティアス様!!」


 可愛い彼女はマーティアスに満面の笑みで微笑んだ。マーティアスはその可愛らしさに軽く眩暈がする。


「レット様も警護ご苦労様です」

「ああ」


 勿論、優しい彼女はレットにも言葉をかけることを忘れない。


「マーティアス様、本日はお日柄もよく!」

「あ、ああ、そうだな」


 てっきりレットの元に行くのだと思ってた彼女がマーティアスの元に一番に来てくれて嬉しいが、今まで誰もがマーティアスよりもレット優先であったため、マーガレットの行動に嬉しいのは勿論、疑問も抱いてしまって落ち着かない。


「あ、あの、それで、もし良かったらなんですけど」

「うん?」

「マーティアス様はお花がお好きなので、プレゼントしたいものがあって」


 そっと彼女から手渡されたものは、かなり不恰好ではあるが花を編み込んだおそらく「花冠」なるものだった。


「これ、私が作ったんです! どうでしょうか……」


 大きなくりくりとした瞳がマーティアスを下から一途に見つめる。


「ありがとう! でもこれ、多分編み込み方間違っ!」


 バァン、とレットがマーティアスの頭を叩き言葉を遮る。


「マーティアス様! 大丈夫ですか」

「レット! お前マジで何すんだ! 今痛すぎて顎ががくって、がくってなったわ!!」

「申し訳ありません。毛虫が皇子の頭にいたもので」

「毛虫!?」


 心配して屈んだマーティアスの頭を心配そうに覗き込む彼女と対称的に、レットは冷え冷えとした表情を浮かべている。


「おい! お前、今の叩き方じゃ毛虫俺の頭に叩きつけられてるんじゃないのか」

「ちょっと待ってください、マーティアス様。わたくしが今確認いたします!」


 そしてレットに背を向けた彼女に見えないように、レットは口パクで「余計なこと言うな」と死者も震え上がるような顔で言った。そこでようやくマーティアスもこの状況とレットの言わんといていることを理解する。


「マーティアス様、毛虫は頭に付いておりませんでした! レット様が上手く落としてくれたみたいですね、良かったです」

「そうか! それよりこの贈り物をありがとう。とても嬉しいよ!!」


 食い気味に彼女に礼をすると、嬉しそうに微笑んだ。そこでレットに何も贈り物がないことに気付いたのだろうか。別段、レット自身もそんなことを気にしてはいなかったが、彼女は自身の髪から挿していた花を抜き取って、指輪を作った。そして、レットの右手をとって、その薬指に嵌めた。


「レット様は女の子だから指輪! でもレット様はいつかお嫁に行くから右手の薬指に送らせていただきますね」


 この国では女性の左手の薬指は、婚約指輪や結婚指輪が贈られる場所とされている。


「はは、君は優しいな! でも心配ご無用、レットみたいな女を嫁にもらう物好きはいなっ!」

「百足」


 今度もレットは冷たく言い放ちながらマーティアスの頭をはたき、最後まで言わせてはくれなかった。


 可愛らしい彼女の言葉と贈り物に、嬉しそうに、でもそれだけではない何か切なさを少し滲ませた顔でレットは微笑んだ。

 その横顔を、レットに叩かれた衝撃で地面に倒れ込みながら目にした。


◇◇◇◇◇◇


 改めて考えてみると、彼女と会う時にレットを共にして歩いていたのは初めてだったかもしれない。そのことにマーティアスは今更ながらに気が付いた。彼女に会うのはいつも王宮庭園で、レットが騎士団に居る時に隙を見て政務の休憩をとりがてら植物の世話をしていたからだ。


 いつも優しい彼女はきっと誰にでも分け隔てなく接するのだろうなと思ってはいたが、まさかレットとマーティアスの中でマーティアスに先に笑いかけるとは思ってはいなかった。


 マーティアスを優先する者など、今までいなかった。嬉しさがマーティアスの心に染みわたっている中、ほんの少しの違和感が生まれる。今までなら、思いもしなかった、気付きもしなかった違和感。


 ーーどうして彼女は俺を優先してくれんだろう?


 違和感を意識してからの答え合わせは簡単だった。マーティアスを見つけた時の嬉しそうな顔、マーティアスと話す時にわずかに高くなる声音、マーティアスを見つめる熱っぽい瞳。


 これらの行動から推測できることはただ一つ。


 マーティアスの想い人である可愛い彼女は、マーティアスに恋をしていた。


 思い当たってみれば、なんとしっくりくることか。むしろ、どうして今まで彼女の好意に気付かなかったのか。


 こんな広大な土地で頻繁に彼女に出会っていたのは何故なのか。それはいつも彼女がマーティアスを探して会いに来てくれていたからだった。そんな簡単なことにさえ気付いてはいなかった。


 彼女のマーティアスに対するしぐさや行動が他の人に対するそれとは違うことは一目瞭然であった。実際に気付いていないのは、マーティアスぐらいであるだろう。


 彼女もマーティアスのことを好いている、そのことに気付いた時、心が震えてしまうような喜びを感じた。初恋なのだ。初恋が叶った上に、自分が他者に初めて一番に求められた瞬間だった。


 彼女の笑顔を思い出す。春の花がよく似合うあの可憐な笑顔を。


 しかし、瞬間。気付く。

 彼女はレットの想い人でもあることを。


 レットの彼女を見つめる瞳が忘れられない。あの少し悲しそうな顔が忘れられない。

 

 マーティアスを選ぶ彼女とマーティアスを、レットは祝福してくれるだろうか。


 そうだ、意味がない、とマーティアスは深く思う。彼女が好きだ、しかし、レットに祝福してもらえないと、レットが幸せでなければダメだ、と。


 マーティアスは自分が選ばれないという気持ちを知っている。


 そんな感情を大切なレットに味合わせてしまうのだけはマーティアスは絶対に避けたかった。


 だからマーティアスは決めた。


 大好きな彼女に嫌われることをーー。



◇◇◇◇◇◇



「レット様、マーティアス様は最近お元気でしょうか?」


 レットが彼女と話すことはほとんどマーティアスの話題であったのは、常であった。今日のマーティアス様は、マーティアス様が、と彼女が話すので、レットが騎士団にいる時のマーティアスの行動も大体把握できている。それどころか、彼女は知らないようだが、その時間彼女と話しているということは庭園でサボっているということである。本来ならマーティアスに注意しているところだが、彼女があまりにもマーティアスの話を幸せそうに語るから、レットが本人に注意したことはない。


 しかし、この頃彼女は目に見えて元気がないことや、今の彼女の発言でレットの予想は確信に変わった。


「最近お会いになられていないんですか?」

「そうなんです、少し会えたと思っても、お忙しいみたいですぐにどこかに行かれてしまって、挨拶すらできずじまいでして。お仕事はお忙しいと思うのですが、あまり無理をしすぎてはお身体が心配で……」


 レットはため息をつきながら、目を細める。


「忙しい、ね……」


 レットは恭しく彼女に一礼すると、訓練場の方に足を向ける。


「少し鍛錬してきます」

「今からですか? もうかなり日も沈んでいますし、危ないですよ!」


 彼女の心配する声にもレットは足を止めることはない。その代わりに振り向きながら笑顔で微笑む。


「大丈夫ですよ、私は」


 そして可愛い彼女に聞こえないように呟く。


「鍛錬するのはあいつの軟弱な心ですから」


 ◇◇◇◇◇◇


 もうすっかり日も沈んでしまった。月明かりだけが頼りだ。


 もう何時間、レットと打ち合い続けているのか分からない。


 口の中が乾いて気持ちが悪い上に、息も上がっているマーティアスに対して、レットは静かだ。恐ろしいほどに、静かだ。


「レット、そろそろ、休もうぜ」

「……」


 確実にレットは手加減をしてくれてるが、こんなに長いこと休憩も入れずに剣を振り続けたことは初めてだった。


「おい、返事くらいしろって、どうしたんだよ、お前!」


 レットの打ち込む剣は止まらない。手がジンジンしてきて、マーティアスはついに剣を地面に落とされてしまう。


「いっつ」


 マーティアスが剣を落としたにも関わらず、レットは踏み込んで、マーティアスの首に剣先を当てた。


「弱いな」

「よーやく口開いたと思ったら悪口かよ、自分が弱いことはよく知ってるよ!!」


 突然の鍛錬に、様子のおかしいレット。疲れた身体と、レットの言いようにマーティアスはムッとする。


 それどころか、ここのところ彼女を意図的に避けていることもあって、心身ともに疲れている。彼女に声をかけられても、彼女の姿を見かけても全速力で逃げていた。自分の心を押し殺してマーティアスは彼女と距離をとり続けていたのだ。


ただでさえ彼女を避けてて良心が痛むってのに、なんなんだレットのやついきなり弱いとか言いやがって。


「違う、私が言っているのは貴様の心だ」

「心?」


 剣を下ろさないままレットは言い放つ。


「最近、彼女を避けているだろう」

「なんのことだよ」

「しらを切るつもりか、彼女にあんな顔をさせておいて」


 図星だった。見事に痛いところを妹に突かれて押し黙る。彼女が最近元気がないことは知っていた。知っていたが、マーティアスはどうすることも出来なかった。彼女を選ぶことは、レットを自分と同じ選ばれない側にしてしまうことだから。それだけはマーティアスは嫌だった。マーティアスはレットにはいつでもーー。


「仕方ねぇじゃん! 俺は、俺は」

「彼女の気持ちを、何より貴様自身の気持ちを知っていながら。お前の近頃の行動は先導者としても、人間としてもありえない」

「……」

「彼女を大切に思っているくせに、受け入れるのが怖いのか、何かを選び取ることが恐ろしいのか」

「……」

「それとも」


 静寂の中で、月だけが強く存在を主張している。


「私に、同情しているのか」


 今までの冷たい様子は、レットが必死に取り繕っていたものだった。彼女のしんしんと雪の降るような表情は決壊し、苦しげに悲しげに歪んだ。


「そうだったら許さない、絶対、絶対に、許さないぞ! 私のせいで二人を邪魔するなんて、」

「レット」

「私は、ただ、想っているだけで」

「レット!」

「それだけで」






「マーガレット!!」


 首元にある剣を退け、手が僅かに痛みを覚えたが、お構いなしにマーティアスは妹を強く、強く掻き抱く。


「ごめん、同情なんかじゃない」


 心の底から伝える。


「俺は、お前に、いつでも笑っていてほしいだけなんだ!!」


◇◇◇◇◇◇


「お前は相変わらず泣き虫だなぁ、マーガレット」

「……っ……」


 マーティアスが久しぶりに、本当に数年ぶりに呼んだレットの本名、マーガレット。兄が付けた彼女の愛称が、レット。後に、本人の男前な性格と優秀な能力に後押しされ、周囲もレットと呼ぶようになった。可愛らしいマーガレットという名前よりも、レットの方が定着し、広まってしまった。


「私……の……」

「うん」


だったんだ、と小さな小さな声がした。


「はつこい、だったんだ」

「うん」

「それなのにっ、おまえはっ、何をしているんだ……彼女に悲しそうな顔をさせて、誰が頼んだ、お前に、彼女を遠ざけることを、誰が」

「ごめん」

「本当に、馬鹿だろう、お前。お前だって初恋のくせに……」


 声を殺しながら泣きながら、マーガレットはマーティアスを咎めた。しかし、その言葉の端々には、マーティアスと彼女の両方を大切に思っていることがあらわれていて。


「俺は、お前のことも大切で、そんなお前が、その、彼女のことを……」

「だからといって、私が貴様と彼女の不幸を望むはずないだろう、私という人間を疑っているのか」

「そうじゃないけど、マーガレットが俺以外をあんなに大切にしてること自体初めてだったっていうか、だから」

「当然だ、お前のことをずっと前から好きなんだぞ彼女は。そんな彼女を私が嫌うわけがない」


 新事実にマーティアスは驚く。彼女はいつからマーティアスを想ってくれているのだろうか。


「手、大丈夫か」

「ん? ああ、大したことないよ全然」

「そうか……悪かった」

 

 マーガレットは謝りながらも、心配そうにマーティアスの手に目をやっていた。浅く切っただけなのに、騎士団に所属しているマーガレットの方がもっと酷い傷を負ったことがあるのに。


 マーガレットは優しい子だった。幼いマーティアスが心配になるくらいに優しくて兄想いの女の子だった。


 マーティアスがマーガレットと競わされるようになった原因は、幼い頃のマーティアスの病弱さが所以だった。病気がちでほとんど部屋から出ることすら出来ない。それでも長年子どもができなかった国王夫妻の長男であることは変わりがないから、国王としての教育は行われた。幼いマーティアスにはそれらはとても辛いものであったが、いつも一緒にいた双子の兄妹であり友人でもあるマーガレットと共に行うとマーティアスは楽しそうに国王教育にも従った。そのためマーガレットは、本来マーガレットには必要のない剣術や勉学を学ぶことになった。その合間合間で、本来の刺繍などの皇女教育も行っていたのだからマーティアスはマーガレットに頭が上がらない。


 マーティアスは知っている。マーティアスの悪口を言っていた貴族の子どもをボコボコにした後、腫れ上がった手には目もくれず、兄を侮辱されたことに悲しみ一人陰で泣いていたことを。兄を侮辱されたことが悔しくて悔しくて悲しくて、人知れず泣いていたマーガレットに誰より幸せになって欲しいと願っていた。


 しかし結局、婚期や結婚相手を見つけることが難しくなると分かっていても、マーガレットは能力を買われ、皆に求められた騎士団への入隊の申し出も断らなかった。騎士団に入って、マーティアスを支えるためだろう。


 そんなわがまま一つ言わないマーガレットが唯一望んだのが、可愛いあの女性だった。しかし、その女性はマーガレットを選ばなかった。それどころか俺に好意を寄せている。その事実に胸が詰まる。


「レット」

「っ、なんだ」


 いまだしゃくり上げたまま、落ち着かないマーガレットに声を掛ける。


「お前は、俺に負けてないぞ!」

「は?」

「何故なら、俺と彼女は婚約者でも、ましてや恋人でもない!! 彼女から想いを告げられてもいないしな!」


 ドッ、と鈍い音がした後、派手な音がなる。


 マーガレットの拳で、マーティアスは軽く吹っ飛び近くの訓練場のゴミだめに頭から突っ込む。


「貴様、今日こそ本当に死にたいらしいな。」


 女性の方から告白させる気か腑抜けめ、と雄弁と目が語っている。


 ゆらり、と魂が抜けたような動きで剣を抜き迫るマーガレット。


「ちょ! ちょっとタンマ! タンマだから!! レット! 落ち着けっ」

「……」

「そんなこと本当に思ってるわけないじゃん! 冗談だよっ」

「……」

「ただ、お前に泣き止んでほしくて!」


 どこかにぶつけたのだろう。血がダラダラと頭から流れるが知ったこっちゃない。このままだと確実に死ぬ、と察知し必死にマーティアスは言い訳を繰り返す。手なんかより、よっぽどこっちの方が重症である。


 先の言葉は冗談ではあるが、心の底からマーガレットを励ますために、その思いだけは至極本気だったのだが。


「そう言うわけで! じょっうだーんだからね! ねっ、だから剣しまって!」


 しばらくの説得の末、マーガレットはチン、とよくやく剣を鞘にしまった。どうやらマーティアスの寿命は無事に延びたようだ。


「冗談で良かったよ。私を馬鹿にしただけじゃ飽き足らず、貴様ではなく彼女自らに想いを告げさせようという情けない奴かと殺意が沸いてしまった」


 マーティアスは気付かれないように息を吐いた。


「私は貴様の家族として、友人として、師として、そんな愚かな男に育てた覚えはないからな」


 こいつは俺の処刑執行人か何かなのだろうか。ガタガタと震えながら、なおもゴニョゴニョとマーガレットに言い訳をしていると、マーガレットがふっと笑った。


「本当に、お前は変わらないなぁ」


 久しぶりに見るマーガレットの笑顔を見てマーティアスは安心する。マーガレットの泣き顔もしばらく見てなかったが、笑顔も同じくらい見ていなかったと改めて気付く。マーガレットは滅多に表情に出して笑わないが、マーティアスは願っている。いつでもマーガレットには幸せに、笑っていて欲しいと。


「少し落ち着いたし、帰るか」

「あ、ああ」

「? なんで私より後ろを歩くんだ?」

「そんな小さいこと気にすんなよ、今日は後ろな気分なんだ」

「そうか?」


 せめて今日だけでも己の命のためにマーガレットの後ろを死守しようと思ったマーティアスだった。


「なんか聞きたいことがあるんじゃないか」

「なんでそう思うんだよ」

「お前は気になることがあるとそわそわ落ち着かないからな。見てるこっちが鬱陶しい」


 お前、今後ろ見てねぇじゃん!と、前を歩きながらこちらの動きを察している恐ろしい妹に心の中でツッコミを入れる。


「言いたいことがあるなら言え。言わないと後で後悔することになるかもしれないぞ?」

「言うっ! 言うよ…」


 マーティアスは意を決してマーガレットに尋ねる。


「お前、女が好きなのか?」


 偏見のために、家族にそういう趣向の者がいるという恐れのために、言い淀んでいたわけではなく、単純にこの質問によってマーガレットが嫌な思いをするのではないかと思って躊躇ったのだ。いまだこの国では同性婚は認められていない。マーティアスが気付かなかっただけで今までだって、こんな思いや告げたくでも告げられないことがあったのではないかと、優しい妹が心配になった。それに自分の双子の兄に想い人を奪われて、こんなにすぐにマーティアスがずけずけと尋ねるようなことではないのではないかという思いから、質問をすることに二の足を踏ませた。


「別に、そういうわけじゃないと思う、というか分からない、が正しいな」


 マーティアスの心配の大きさに対して、マーガレットの返答は随分とあっさりしたものだった。


「初恋だって言っただろう? 私だって、彼女に恋をするまでそもそも誰かを好きになったことすらなかったさ」

「そうなの?」

「ああ、誰かさんのおかげで私はそれまで、どうすれば物事を上手く教えられるのか、誰かさんを強くすることが出来るのかばかり考えていてな」

「俺が弱いばっかりに、誠に申し訳ありません」


 マーティアスはマーガレットを心配する気持ちから一変、軽く死にたくなって白目をむく。マーガレットの心配事や悩み事は、おそらくこの十数年ほぼマーティアス絡みであろう。マーティアスが強くなれば、マーガレットの憂いはなくなる。そう、それだけの話である。マーティアスが強くなればいいだけの、簡単なはずの話。


「でも、私の人を見る目は確かだったってことが分かったから良かったさ」


 マーティアスの謝罪など、ほんの少しも耳に入ってない様子でマーガレットは言った。マーティアスはマーガレットの言っていることが分からず、首を傾げた。


「ん? どういう意味?」


 マーティアスの問いには答えず、マーガレットは続ける。


「彼女を、頼んだよ」

「……」

「本当に冗談であってほしいが、間違っても彼女から告白させるようなことはするなよ。彼女は十分頑張った。後はお前の男の見せどころだ」


 素直にマーガレットに示される幸せを受け入れていいのか分からない。だって、それじゃあマーガレットはーー。


「返事!」

「はいっ」

 

 マーガレットの鋭い声に反射的に反応してしまう。


「まったく……本当に手のかかる」


 次の瞬間、満ち満ちた月を背景にして、マーガレットはふわりと微笑んだ。失恋の痛みはそのままに、だけど薄暗さや嫉妬と言った感情はその表情には欠片すら残っていなくて。ただただ、愛しい二人を祝福する淡くて儚いその微笑みは、到底マーティアスでは及ぶこともできないほど慈愛に溢れた女のものだった。



「次期国王陛下とその妃に、どうか多大なる幸せを」



◇◇◇◇◇



「母上、私、もうお茶会は結構です」

「あらぁ、どうして?」


 今日はいつも病弱なマーティアスに付きっきりで、同年代の女の子たちが行なっているお茶会など行ったことも主催したこともなかったマーガレットにとって、3回目のお茶会参加だった。


 今朝、マーガレットがお茶会に行くと知って「俺も行く!」と6歳にもなって駄々をこねていたマーティアスを母が宥めながら、送り出してくれた。


 兄様、と内心呆れながらもマーティアスがそんな風に自分と離れるのを嫌がっている姿を見て、何故か母が号泣していた。二人の母親は涙脆い人であった。


 そんな訳はわからないながらも、朝から心温まる出来事があったマーガレットの気分は、その向かったお茶会で霧散する。


「マーガレット様ってマーティアス様のためにしなくてもいいことさせられてるんでしょう、お可哀想に」


 頼んでもいない同情、その言葉だけでも不快だが、それだけではなかった。


「マーガレット様、マーティアス様は何のご病気なの?父が薬を調達しようと仰っていたわ」

「マーティアス様って下賤の女に大層似てらっしゃるとか…マーガレット様は陛下そっくりでお美しいのに」

「身体が弱いマーティアス様の代わりにマーガレット様が陛下の後をついだらいかがでしょうか、正直マーティアス様には国王として優れているところなどありませんもの」

「マーガレット様は本当に素晴らしい方ですわ、それに比べてマーティアス様は正直……」


 どうして、関係もない奴らに私の大好きな家族を悪し様に言われなければならないのだろう。


 お茶会の参加者の娘たちは皆宰相や貴族といった、マーティアスとマーガレットの父親である国王陛下と共に政務を行っている者たちの娘だった。少女たちからはマーティアスをどこかに追いやって、それかいっそ殺してしまって、マーガレットにとりいろうとしている汚さが滲み出ていた。幼いながらも親の言っていることを真似して懐柔しようとしてくる汚さ。


 マーティアスは元々身体が弱かったが、今のように部屋から出られないほど悪化してしまったのは、あるパーティーの時にマーティアスに盛られた毒のせいだった。死んでしまうんではないかと三日三晩寝込んだマーティアスの隣で泣きじゃくるマーガレット。大丈夫だから泣かないで、と目を覚ましたマーティアスが辛そうに手を差し出した記憶がまだ新しい。


 別段、お茶会など参加しなくてもよかった。しかし、マーティアスに付きっきりなマーガレットに気を遣って母がせっかく参加させようとしてくれたお茶会だった。


こんなお茶会、参加しなきゃ良かった。お家で母上と、マーティアスと一緒に父上の帰りを楽しく待っていれば良かった。


「マーティアス様には良い点など何一つない」


 その一際大きな声が耳に入った瞬間、マーガレットはポットを手に取り、机に座る少女たちに勢いよく中身の紅茶をぶっかけた。


 少女たちのあげる悲鳴がどこか遠く聞こえる。それほどまでにマーガレットは怒りに染まっていた。


「何をなさいますの! 皇女様だからってこんなことしてただで済むと思わないことね! お父様に言いつけるわ!」


 ギャーギャーと口々に騒ぐ声の中から、なんとか聞き取ることのできたものに反応する。


「どうぞご勝手に。その場合は母上やマーティアスを愚弄したことを、私も正直にお伝えしましょう。国王陛下の家族を愚弄したのです、つまり国王陛下を愚弄したも同じこと。不敬罪に問われるのはあなた方のお家の方だと思いますが」


 それだけ言い残してマーガレットはお茶会を後にした。


 その夜、帰ってきて沈んだ様子を問われても何も答えなかったマーガレットを、母は追及しなかった。マーガレットは、母やマーティアスが馬鹿にされたことをあえて伝えて、二人を傷付けたくなかった。


 父親が帰りが政務で遅くなる時は、3人で身を寄せ合って眠りにつく。その日もそんな日だった。


「私の可愛いマーガレット、お母さま、あなたがそんなふうに悲しい顔をしているととても悲しいわ」


 マーティアスが寝入った後、小さな声で母はマーガレットに話しかけてきた。マーガレットは、母の優しく甘い声に誘われてお茶会でのことを泣きながら吐露した。


「マーガレットは優しいわね」

「そんなことない、今だって、本当は言うべきじゃなかった」


 母の優しさに甘えて、伝えた言葉で母を傷付けてしまったと思った。


「優しいわよ、マーガレットは。あのね自分じゃなく誰かのために笑ったり泣いたり怒ったりできる人は強くて優しい人なのよ、だからマーガレットは優しい子、そして、ありがとうね」


 マーティアスに良いところなんてひとつもないなんてありえない、マーティアスはマーガレットを褒めるが、マーガレットの方がマーティアスを褒めたい気持ちでいっぱいだ。


 マーティアスは優しい、いつも自分に笑顔で話しかけて明るい気持ちにしてくれる。そして、植物を育てる才能もある。マーティアスがマーガレットの誕生日に送ってくれたお手製のバラはとても美しかった。王に適した才能ではない。しかし、日々嫌々ながらも向き合っている。その重圧に耐えている。マーガレットはマーティアスがいるだけで救われている。兄が大好きなのだ。勿論、父上も母上も大好きだ。マーガレットはそんな大好きな家族がいて、とても誇らしいのだ。


「私、心配です。ちゃんとマーティアスを大切にしてくれる人がいるのかどうか。周りは敵だらけ、嫌になる」


 マーガレットは声を上げて泣いた。後からマーティアスが起きてしまったんじゃないかと思ったが、マーティアスは寝入ったままだった。実はこの時、マーティアスは寝たふりをしていて、マーガレットの話を聞いていたが、マーガレットの望み通り寝ているふりをしていたのだ。そのままマーガレットは母に抱かれ泣き疲れて眠りについた。


 それから程なくして母は亡くなってしまった。


◇◇◇◇◇


 18歳になった頃、マーティアスと楽しそうに話すある少女をよく見かけるようになった。優しそうな人で、マーティアスを陰で悪く言っていた令嬢たちのような嫌な感じはしなかった。マーティアスも彼女も幸せそうだった。


 ある時、彼女が他の令嬢から人目につかないところで囲まれていた。その令嬢たちは貴族の中でも上の地位の出の娘たちで、彼らの親は今でもマーティアスを陰で馬鹿にしている。そのため、その娘である彼女たちも未だにマーティアスを嫌っている者ばかりだった。


 令嬢たちはマーティアスと仲良くしていることを咎めていた。それはマーティアスへの嫉妬からくる感情による行動ではなく、マーティアスのことは嫌いだが自分たちより下の一般市民が次期国王の婚約者になってしまうかもしれないことへの恐れからくる行動だった。そのためマーティアスを馬鹿にし、彼女を突き飛ばしたりしてマーティアスに近付かないように脅していた。

 

 その一連の令嬢たちの行動にマーガレット吐き気がした。すぐに止めに入ろうとしたけど、彼女の言っていることに体が固まってしまった。


「どうしてそのように深く知りもしない人をそんなふうに言えるんですか! 王宮の庭園に植えられているあの美しい花々を育てたのはマーティアス様です! マーティアス様と実際にお話して、あなたがたにマーティアス様の魅力を知ってもらいたいところですが! その血気盛んな様子ではマーティアス様にご迷惑なので、僭越ながらわたくしがマーティアス様の魅力をひとつずつ……」


 彼女はマーティアスを馬鹿にされたことへ怒ったのだ。その事実にマーガレットは驚いた。


 それからは彼女による独壇場だった。早口な上に話しているうちに興奮してきたのか何を言っているのか所々分からない、しかし確実にマーティアスのことを称賛していた、美辞麗句を並べて。マーガレットでさえもそこまであいつは立派じゃないだろう、と少し引いてしまったぐらいだった。


 彼女はマーティアスオタクであった。


 案の定、囲んでいた令嬢たちはマーティアスに本気で恋をしている彼女を気持ち悪がって退散していった。言葉ーーというよりマーティアスについてのオタクトークだったがーーによって、令嬢たちに勝ったのだ。


 マーガレットは茂みの中で吹き出しそうになるのを耐えながら、心は温かい気持ちでいっぱいだった。


 最初はマーティアスを大切にしてくれている彼女に対して好意を感じ、彼女の行動に感動しているだけだと思っていたが、それが恋だと気付いたのはしばらくしてからだった。



 私はマーティアスのことを想う彼女に恋をしたのだ。



 マーティアス、マーガレット。そんなに泣かないで。あなたたちにはこれからたくさんの良いことがある。美味しいものを食べて、素敵なものを見て、かけがえのない経験をして、愛しい人に出会う。あら、マーガレット、そんな人はいないって? 心配しないでもきっと居るわよ、お母さまにお父さまがいたように。マーティアスとマーガレットにも、二人の良いところや優しいところをきちんと分かってくれて好きになってくれる素敵な人が絶対いる。断言できるわ! 今は会えないかもしれないけど、いつか絶対に会えるから!! そしたら、その人を大切にするのよ。


 死ぬ間際、母はこんなことを教えてくれた。



◇◇◇◇◇



 夢を見た。幼い頃の夢。なかなか夢なんてみない私が懐かしい夢を見た。初めて失恋したからだろうか。



 今日は晴天、綺麗な青空、おまけに休日。

 ベッドから出て、窓を開ける。入ってくる風がとても気持ちがいい。こんなに綺麗な空だと届くだろうか。



 母上、聞こえていますか。

 無事に会えました。

 母上の言っていた素敵な人に。

 母上から聞いた時は半信半疑だったけど、本当にいたんですね。

 私たち、ちゃんと見つけられました。



 マーティアスのことを大切にしてくれる女の子をーー。





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