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悪鬼5人組の1匹、長谷川の身柄を確保した俺達は、クリスマスの買い出しに行き、クラとリア充になれた喜びを爆発させて真鈴達からドン引きされた。

急にポールが日本を離れることになった。

東欧で有る問題と取り組んでいる彼の『連隊』が支援を必要としているらしい。

既にベクターが先発して出発していて何か深刻な状況のようだった。

別れを惜しんで涙にむせぶ四郎を慰めながら、ポールは日本を後にした。


多摩山中ではスコルピオがかなりの日数の張り込みをしてくれているが、それでもワイバーンも週に1~2度は出せる限りの人数で張り込んでいる。


特に何も起こらずに日が過ぎて行った。

そろそろクリスマスキャンペーンの用意をしないと、と、喜朗おじがそわそわし出した。

小屋で張り込む晩も何やら紙に色々とデザイン画を描いている。

『ひだまり』クリスマスキャンペーンの制服のデザインだろう。

ジンコは折に触れて分厚い洋書を読みふけってメモをとったり数式を暗記したりしていた。俺も少し日本語で書かれた本を読ませてもらったが、宇宙での軌道制御に関する惑星の何たらかんたらなど、とても理解が出来ない内容の本だった。

やはりジンコは凄いな。


死霊屋敷では巨大なもみの木を敷地内で見つけ注意深く明石や喜朗おじが屋敷の近くに移植した。

地下のボイラー内にある市蔵の灰を土に混ぜて見たら圭子さんが栽培している野菜などがとても育ちが良くなるのでもみの木でも試したら効果があったようだ、

クリスマスイブの前後にだけ飾りつけをすることになった。

暖炉の間と書斎からよく見える位置に移植したもみの木を眺めては司と忍はニコニコと笑顔になった。


来週にはキャンペーンを始めると言う時期に俺達に朗報が届いた。

あの5人組の悪鬼の内、名前と顔が割れている長谷川を栃木で発見したとの事だ。

俺達ワイバーンとスコルピオの合同チームで長谷川の身柄を確保する作戦を立案し、クリスマスキャンペーン数日前に決行する事にした。

今の段階では唯一有力な手掛かりになりそうなのは長谷川だけだ。


俺達は明石が恐怖した敵味方不明の協力な悪鬼に注意を払って、長谷川が潜伏しているマンションを包囲した。


どんなに最悪でも生け捕りにしなければならない。

長谷川は唯一の情報源なのだから。


マンションの近くに陣取った圭子さんがスポッターの真鈴と共にサプレッサーを付けたSR25を構えて狙いを付けているが、決して頭や心臓は吹き飛ばさないようにと事前の打ち合わせで念入れしてある。

圭子さんを含めて3つの狙撃チームが近くの建物に陣取り、敵味方不明の強い悪鬼の出現にも備えてある。


8階建てのマンションの4階に長谷川は住んでいる。

どうやら一人暮らしのようだった。


俺達ワイバーンとスコルピオ、合計30人以上で奴の部屋を取り囲んでいる。

警察の身分証が役に立ち、奴の両隣の部屋に頼んで盗聴器を取り付け、ベランダの仕切りを破って窓からも突入する準備を整えた。

2人の私服姿のスコルピオメンバーが奴のドアホンを鳴らす。

その背後、少し離れた廊下の隅には40口径のUMPやオリジン12ショットガンを装備した突入隊員がうずくまっている。

奴がベランダから逃げようとしてもベランダ側にも重装備に隊員が待機しているし複数の狙撃銃が奴を狙っていて即座に行動不能に出来るように狙いを付けてあった。


午後3時を回った頃、作戦を発動し、やはり窓からベランダに飛び出した奴は圭子さん達狙撃チームによって両肩を撃ち抜かれて、ベランダ側に待機していた隊員たちによって取り押さえられた。

奴をバンに連行する途中、はなちゃんが奴の心を探ったが、どうやら見事に自閉モードにしているらしく、はなちゃんが呆れた声を上げて顔を横に振った。


まぁ、後は岩井テレサの組織の方で拷問するなり薬物を注射するなりなんなり情報を聞き出してくれるだろう。


奴が連行されて行くのを見守っていた俺達はそそくさと戦闘服から普段着に着替えて車を飛ばして銀座に向かい、クリスマスプレゼントの買い出しに向かった。

普段着の着こなしにいまいちレパートリーが無い加奈と凛の為に、真鈴とジンコが何パターンかの服をコーディネイトするとの事で張り切っていた。

俺やクラ達もそれぞれのパートナーの為のプレゼントを買いに行った。


俺はユキの為にそこそこ高価だがあまり嫌味にならない程度に装飾された数十万円程度の時計を買った。

本当は指輪を…とも一瞬思ったが、まだ付き合い始めて数か月だし、そして俺自体がいつ死ぬか、殺されるか判らない危険な事をしているのだ。

経済的に余裕があってもそちらの問題の方が遥かに重要だ。


俺もユキと幸せになりたいと思う。

思うがしかし…。

なんとも複雑な気分になった。

デパートの近くの道路が見渡せるカフェを買い物帰りの待ち合わせ場所にした俺は買い物を済ませたクラとコーヒーを飲みながらクリスマスで浮かれた感じの街を眺めた。


「いや~、去年はこんな風景を見ながらリア充死ね!って呪文のように言ってましたよ~!」


クラが苦笑いを浮かべた。


「ええ?クラもそうだったんだ?

 俺も年内に終わるかどうか判らない書類の山を押し付けられてパソコン叩いたりコピー取ったりしながらリア充死ね!って呟いていたよ。」


俺とクラがお互いに見つめ合った。

そして固く抱き合った。

そしてお互い苦労したけど今が幸せでリア充になれて、無限非リア充地獄から抜け出せて本当に良かったと互いに讃え合った。

お互いに讃えながら、俺もクラも本当に凄く嬉しくなって涙が出て来た。

俺とクラは涙を流してお互いを讃えあった。

リア充万歳!リア充万歳!非リア充の皆さんの席はあちら、遥か見えないほどの遠方にお座りください。こちらは素敵なリア充の席でございます。

非リア充の方達はあちらに…あっち行けぇええええ!


買い物を済ませた真鈴とジンコと加奈と凛が何かぎこちない引きつった笑顔で俺とクラを遠くから見ていた。

後から真鈴達に聞いたら、俺とクラは何かとても気持ち悪い2人組に見えて声を掛けるのに躊躇したそうだった。


まぁ、良いじゃないかリア充なんだし。


俺達は夕方遅くに死霊屋敷に戻り、早い時間に代わりにシフトに入っていてくれたスコルピオのメンバーと交代するために真鈴達がクリスマスキャンペーン制服に着替えてクラが運転するランドクルーザーで『ひだまり』に向かった。


やはりハロウィーンとか違うかかなりエロ可愛い制服姿だった。

『ひだまり』の売り上げはケーキの注文も含めるとやはり新記録を更新していた。


順調だな~!と俺はコーヒーを淹れながら思った。

『ひだまり』は12月26日から2日間お休み、そして12月は30日まで営業、新年は少しゆっくりさせてもらうと言う事で1月4日から営業と言う事にしてあった。

そう、俺達は働き過ぎだよ。


そして、避難用の秘密トンネルは年明けには開通。

そして出口には小振りだが頑丈な小屋を作る事にした。


これで最悪最低な状況でもワイバーンメンバーは岩井テレサの敷地に眠る大いなる存在の所まで逃げ切る事が出来る。


「彩斗、まあ、これを食べて見ろよ!」


明石と四郎が大皿に盛られた見た事も無いような立派なイチゴを持って来た。


「圭子がハウスで育てたイチゴなんだがな、やはり市蔵の灰を土に混ぜて育てた奴なんだがな、収穫したんだよ、すげえ甘いしなほのかな酸っぱさは良い具合のアクセントになって無茶苦茶に美味いぞ!」


俺は大振りのイチゴを手に取って頬ばった。

美味い!

確かに今まで食べた事が無いほど、練乳が自然に掛かっているんじゃないかと思うほど豊かな甘みだが、ほんのりとした酸味がアクセントになって決して嫌味じゃ無く爽やかささえ感じる後味。

これは俺が食べた中で最高のイチゴだった。


「明日から『ひだまり』で出すイチゴはこれにしようと思うんだが。」

「景行!グッドアイディアだよ!

 これはきっと大評判になるよ!」


俺達は何かブランド名でも考えて直売を始めようかとも思うほど美味しいイチゴだった。


これであとはクリスマスパーティでプレゼント交換、そして年越しだな、と思った俺だが、今までの人生でこんなに充実した1年があっただろうかと思う程に素晴らしく恐ろしく、素晴らしく仲間に恵まれ、素晴らしく生きがいを見つけ、素晴らしくプライベートが充実した1年だと思った。







続く




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