大小な代償の代償
ねぇ、知ってる?街外れの、人の住んでない大きな家にある条件で入るといるんだって、人が。
どんな人だって? さぁ、見たことないからわからない、でも見てみたくない?
あれから十数年たって振り返ってみればよくある怪談だった。
街の外れにある廃墟、夜の丑三つ時にあるルートを通っていくとその廃墟には人がいると。
集まったのはいつもの三人、ビビりの僕と、果敢なあの子、心配性のあの子の妹。言い出しっぺはもちろんあの子。
怖くてたまらなかったけど、男としてカッコ悪いところは見せられなかった。
決められたルートは無茶苦茶で、電柱と壁の間を通り、横断歩道の白線だけを踏んで道を渡ったり、塀の上を歩いたりと誰が言い出してどうやって覚えたのかも怪しい道順を満月の月明りだけを頼りにビクビクと少しだけワクワクしながら辿り、ついについた。
確かにあの廃墟だった。
いつもならボロボロでおどろおどろしい廃墟は今や絢爛豪華なお屋敷だった。
本当にあの廃墟なのかと辺りを見渡したが確かにあの廃墟の立っている場所だ。
屋敷の前で右往左往としていると、不意に扉が開いた、ギィと扉だけ古く無遠慮な音を立てて。
吸い寄せられる様に僕たちの足は扉を潜り屋敷の中を目指していく。僕たちの意思を無視して。
勝手に動く足を止めることもできず、喉の奥から湧き出てくる悲鳴を掻き消すことだけしかできなかった。
やがて足は扉をググり、屋敷の中の玄関ホールの真ん中で止まった。
同時に音もたてずに扉もしまった。
「あぁ、騒がしい、騒がしいったらありゃしない」
おなかの底から響くような、獣の唸り声のような声がどこからともなく聞こえてきた。