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第五話   ご褒美

一五五八年(永禄元年)七月中旬   尾張国清洲城足軽長屋



〜織田信勝〜



浮野の戦いが終わり、家に帰って来た。ふー、疲れたな。体がバキバキだ。にしても一日で色んな事が起きたな。

本当に俺は人を殺したんだな……。思っていたよりもあっさりしているというかなんというか……。能力値の精神が少し関係しているのかもしれない。……あっ、能力値だ。今どうなっているんだろう?見てみよう。



 名前:織田勘十郎信勝(東郷泰人)

 レベル:22(12650/17200)

 年齢:21

 職業:織田家近侍

 状態:疲労

 体力:48/100

 筋力:39     

 頑強:31

 敏捷:42

 器用:33

 知能:49

 精神:44

 技能:剣術(上級)、弓術(上級)、鉄砲術(初級)、格闘術(中級)、百舌鳥使い(中級)、算術(中級)、鑑定(中級)、弁術・説得(初級)、超集中(上級)、人たらし(固有)、急成長(固有)

 スキルポイント:24

 装備:無し



マジか!!めちゃくちゃ上がってる!!これが『急成長』の力か!!いやぁ凄いなぁこれ……。利家にも勝ってるんじゃないか?あとで見に行ってみようかな。スキルポイントもだいぶ余ってるなぁ。次は何に割り振ろう。次の戦は恐らく桶狭間の戦いになると思う。今から二年後だ。……今は戦闘技能を取ろう。後々落ち着いてから内政系の技能を取ればいいか。先ずは生き残る事を優先して考えよう。


今回の戦で俺の大幅昇進が決まった。今は一足軽兵で部隊の構成員程度の役割で戦の時にしか呼ばれなかったけど、これからは兄の近侍となり、本丸に出仕しなければならない。俺は元々、森三左衛門可成の足軽兵だったので、これからは織田信長直属の部下となる。

基本的には訓練と、兄の補助、内政にも関わったり、評定にも参加する様だ。今迄とは扱いが大きく変わる。……ちなみに給料も高くなる。……まぁどうでも良いか。


ちなみに利家は先の戦での活躍により、赤母衣衆(あかほろしゅう)に選ばれた様だ。めでたいな。佐々内蔵助成政も黒母衣衆に選ばれたみたいで、一緒になって盛大に祝った。利家と一緒に住んでいるまつさんも大喜びだった。……この時代の女の人は綺麗な人が多いな。……ちなみに信勝の嫁はこの世界線ではいない。史実では高島局?だった筈……。色々調べてみたけどそんな名前すら無かった。史実では俺の子だった信澄、信糺は兄の子で、俺の養子になっていた。しかし、俺が足軽になった時に兄の元に返した。二人の母親は養観院だ。本名は忘れた。接点が無いからね。……ちなみに俺が転生する前、信勝は男色が酷かったらしい。……想像したくもない。


だから俺は一応独身ということになるな。兄からは早く嫁を見つけろと言われたけどまだいい相手がいないんだよな。正直身分は気にしないから能力の高い人だといいな。立花誾千代や本多小松みたいな感じの。


……話を戻そう。利家の家で行った宴会は凄かった。今回の報酬の銭を使った為、利家はまつさんにめちゃくちゃ怒られていた。ちょっと怖かった。

利家曰く今年中に祝言をあげるとの事だ。目出度いね。……だから俺も兄に早く嫁を見つけろと催促されたのだろうか。利家、やってくれたな。

その日は浴びる様に酒を呑んだ。日が昇るまで騒いでいた。次の日は案の定二日酔いだ。前世では呑んだ事が無かったからな。……二日酔いってしんどいんだな。



―――



〜織田信長〜



ふーっと大きな溜息を吐いた。やっと全ての報告に目を通し終わった。新しく尾張上四郡を手に入れ、領内の様子を報告させた。まぁ良くも無く悪くも無くといったところだ。そして新たに吸収した岩倉織田家臣団の処遇、戦後処理等々……。これも必要な事だと分かっている。……が面倒だな。


此度の戦では若い者達の活躍が目立った。良い事だ。次の世代が育っているという事は家が安泰だという事に繋がる。

勘十郎を俺の側におき、政務にも関わらせる。他にも(利家)、内蔵助、猿もおる。奴らを育てていく事が天下の道にも繋がるであろう……。


「誰か!茶を持って来い!」


「はっ」


小姓に茶を持って来るよう伝えた。家を大きくすればするほど悩みも同じ様に大きくなっていく。一つ一つ解決していかねばならんな。

小姓が襖を開け、茶碗を持って来た。一口啜る。うむ、美味い。身体の疲れが飛んでいくように感じた。

……今考える事は今川と一色の事だ。今川治部大輔義元は武田、北条と婚姻同盟を結び後顧の憂いを断ち、嫡男に家督を譲り自身は三河の統治に力を入れている。奴の狙いは上洛であろう。いずれ戦うことになる。

一色は、何度か美濃に兵を出してはいるが、中々決定打にはならない。何か奴等の度肝を抜く様な事をせねばならん……。

取り敢えず今は領内の統治を優先しよう。新しく銭兵も雇わねばならんな。忙しくなりそうだ……。



一五五九年(永禄二年)十月下旬   尾張国清洲城本丸自室



〜織田信勝〜



休暇を貰った。


兄の元に出仕してから一年と三ヶ月経った。毎日毎日、算盤を弾き、報告書を読み、まとめ、評定に参加し、意見を求められた。ブラック企業も真っ青の扱い様だ。普通の人なら倒れるぞ。……まぁお陰様で能力値は上がったけど。



 名前:織田勘十郎信勝(東郷泰人)

 レベル:23(5130/19100)

 年齢:22

 職業:織田家近侍

 状態:疲労

 体力:71/100

 筋力:39     

 頑強:33

 敏捷:42

 器用:37

 知能:52

 精神:45

 技能:剣術(上級)、弓術(上級)、鉄砲術(初級)、格闘術(中級)、百舌鳥使い(中級)、算術(中級)、書法(初級)、鑑定(中級)、弁術・説得(中級)、弁術・論破(初級)、町割(まちわり)(初級)、治水(初級)、超集中(上級)、人たらし(固有)、急成長(固有)

 スキルポイント:26

 装備:無し



訓練は毎日しているけどやはり『筋力』や『敏捷』は上がりにくい。でも、内政系の能力は大幅に上がった。技能もスキルポイントを使ってないけど幾つか習得できた。……兄のパワハラによって。スキルポイントは何に使おうか迷ってる。沢山ある能力の中から何が一番俺にとって有効なのかちゃんと見極めないといけない。


ちなみに今日は一年と三ヶ月ぶりの休暇だ。

兄に


『嫁探しに行きたいので休暇を下さい』


と言ったら


『……わかった』


と、渋々了承された。ふふふ、嫁を見つけろと言ったのは間違いだったな。残りの政務は自分でやるんだな。ニヤリと笑った。


ちなみに今は筆を使って巻物に日記を書いている。転生した事は書いていない。稲生の戦い?の後からの出来事をこれから書く様にしようと思った。こういうのは後世にとって大事な物になるからな。書いといて損はしないだろう。……字も上手くなるし。

……さて、今日はこのくらいで良いかな。

取り敢えず今から町に出よう。ちゃんと銭を持って、ご飯や団子などを食べに行こう。そうだ、まつさんにもお土産を買って帰ろう。結婚祝い的な感じだ。ワクワクしてきたな。今思ったら転生してから初めての休暇じゃないか?……精一杯楽しもう。



―清洲城城下―



おぉ、やはり凄い人の数だな。商人がそこら中で商売をしている。町は活気付いている。俺も行こうかな。


まずはご飯を食べたい。この時期は一体何が良いんだろうか。いつも城では用意された物を食べたり、前田家にお邪魔して一緒に食べたりしたな。……俺ってもしかして乞食か?


少し通りを歩いていると何軒か店が目に入った。蕎麦、鰻、餅……全部美味しそうだなぁ。迷うな。

まずは蕎麦から行ってみようか。未来の蕎麦と昔の蕎麦違いはあるのだろうか?



―――



……うん、美味い。正直、転生してから何年も経っているから蕎麦の味は忘れた。でもなんだか……沁みる……。

よし!切り替えて次は何を食べよっかな〜。



―――



めちゃくちゃ食べたなぁ。茶菓子も茶も美味しかった。また時間があれば来てみよう。……段々肌寒くなってきたな。まつさんに扇子も買えたし今日はこれぐらいで帰ろうかな。いやぁ楽しかっ……なんだ?人溜まりができている。喧嘩しているのか?口論も聞こえる。と思ったら声の一つは女性の声か!?

俺は考えるよりも先に行動していた。女性の声が聞こえた瞬間に人溜まりに向かって走り出した。すると若い女の人と小さな子供を囲んで男たちが怒鳴りつけているのが分かった。俺は女の人の目の前にいた男を蹴飛ばし、女の人の前に立った。


「大丈夫か?怪我は無いか?」


手を差し伸べると女の人は一瞬戸惑っていたがハッとなって俺の手を取り、立った。


「有難うございます。怪我は……大丈夫です。それ程痛くありません」


……よくよく見ると顔が少し腫れていた。腕も強く掴まれ赤くなっている所がある。……許せない。隣の子供に目を向け、ニコッと笑い『大丈夫か?』と声をかけるとコクッと頷いた。見た感じ怪我はない様だ。この女の人が守ってくれたのだろう。俺は一度頷き、反転して男たちを見た。俺に蹴飛ばされた男はまだ倒れたままだ。ピクピクして、起き上がる気配がない。後頭部を本気で蹴ったからだろう。


「お前なにしてくれてんだ?」


坊主頭でいかにも悪役みたいな顔をした男が話しかけてきた。


「お前たちこそ女性に対して何をしているのだ」


少し圧のある声で喋った。周りに野次馬が増えてきた。……あまり大事にはしたくなかったのに……。


「そこのガキと女は俺に借金してんだよ。ただの取立てだ。邪魔者はさっさと帰れや」


……ふむ、借金か……。


「どれくらい借金しているのだ?」


「お前が知る必要あんのか?さっさと消えろや!」


別の男が声を荒げ、俺に詰め寄り、睨んできた。俺も負けじと睨み返す。


「……面倒だな」


「あぁ?」


目の前に来た男の顎を思いっきり殴る。男は膝から崩れ落ち、そのまま失神した。泡を吹いて倒れている。

それを見た他の男たちが殺せ!!と叫んで襲いかかってきた。

……浮野の戦いに比べれば全然怖くない。

数十秒で男たちは全員地面に這いつくばっていた。……誰も殺してはいないよな?……やってしまった。頭に血が昇ると暴走してしまう……。悪い癖だ。直さなければ……。

くるっと振り向いて二人の元に行く。二人はポカーンとした顔をしている。少し可笑しかった。


「二人は姉弟なのか?」


女の人が慌てて


「は、はい。私は波瑠(はる)、この子は藤七郎(とうしちろう)と申します。私たちは坂田村の百姓の子で御座います」


「そうか、俺の名前は織田勘十郎信勝だ。清洲に出仕している。何か有れば俺の名前を出して構わん。俺も頻繁に様子を見に来ようと思う。頼みたい事有れば何でも言ってくれ」


二人は目を合わせて驚いた様な顔をしている。


「何故そこまで気にかけて下さるのでしょうか?私たちにはお返しする事はできません……」


俯いたまま波瑠が話した。申し訳なさそうだった。


「お返しなど求めておらぬ。俺が首を突っ込んでしまった事で其方達に危害が出るやも知れぬ。そうなれば俺は後悔するだろうと思ったらからだ。何も気にする事は無い」


波瑠は少し思い詰めた様な顔をして何かを考えている様だ。


「……分かりました。有難う御座います」


波瑠が頭を下げ、藤七郎が慌ててそれに倣い頭を下げた。二人の背中は少し痩せている様に見えた。……これも戦国の世だと思った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 槍術は覚えないんかね?
[気になる点] 蕎麦の時期っていっているのは、季節のことでなく時代のことじゃないかな。 まだ麺状の蕎麦は存在していないといいたかったのでは?
[気になる点] この時期の蕎麦は、切り蕎麦はなく。 そばがきみたいな物しかないと思うが。
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