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第四話   浮野の戦い

一五五八年(永禄元年)七月初旬   尾張国清洲城評定の間



〜織田信勝〜



「明日、岩倉を攻める」


兄の一言に皆が頷いた。


清洲にある評定の間で軍議が行われた。なぜか足軽の俺や利家も呼ばれている。

軍議の内容は簡単なものだった。清洲と岩倉の間の地形は険しいから迂回し、先ずは浮野(うきの)へ行き、そこで信清勢を待つという事だ。

信清とは俺らの姉上が嫁いでいる相手で、犬山城主だ。兄は二月ほど前に和解し姉を嫁がせた。

俺たちは二千を、信清は千を率いて攻め込む。


岩倉の状態だが、内部が纏まっておらず現当主の信賢が前当主の信安と弟の信家を追放した事で足場が不安定の様だ。……危ない所だったな。もし俺が兄と戦っていたら今の岩倉の様に周りから攻められていたかもしれなかった……。あの判断は間違っていなかったな。


さて、俺も足軽兵として攻める事になった。()にとって一応初陣だ。少し、いや、めちゃくちゃ緊張している。当たり前だよなぁ。今から殺し合いをするのだから……。

不安な顔をしているのを見て気を遣ってくれたのだろうか。利家が話しかけてくれた。


「勘十郎、如何した。緊張しておるのか?震えておるぞ」


ニヤニヤしながら話しかけてきた。まるでいたずら小僧の様だった。


「ふふふ、これは武者震いだ又左。緊張などしてない」


……ちょっと声が上ずった。大丈夫か?気付かれてないかな?

又左は気にしてない様だ。良かった……。


「ならば良いのだがな。……死ぬなよ勘十郎」


そう言うと又左は歩いて行った。何か用事があった筈なのにわざわざ俺に話しかけてくれた。良い奴だな。お前も死ぬなよ。



一五五八年(永禄元年)七月初旬



―浮野―



浮野に付くと反対側に岩倉勢が陣取っていた。恐らく三千程だろう。此方は二千、犬山から千が来ているとの報告はあるが、手筈通り挟撃をしてくれるのか少し不安だ。


俺は今、軍の最前列にいる。一応今の能力値を見ておくか。



 名前:織田勘十郎信勝(東郷泰人)

 レベル:10(1400/2200)

 年齢:21

 職業:織田家足軽

 状態:健康(高揚、不安)

 体力:100/100

 筋力:26     

 頑強:20

 敏捷:26

 器用:24

 知能:28

 精神:36

 技能:剣術(中級)、弓術(上級)、鉄砲術(初級)、格闘術(初級)、百舌鳥使い(中級)、算術(中級)、鑑定(初級)、弁術・説得(初級)、超集中(上級)、人たらし(固有)、急成長(固有)

 スキルポイント:0

 装備:鬼切丸、足軽鎧



ちなみにスキルポイントは全部筋力に使った。多分これが攻撃力に影響すると思うんだけど……。能力値が上がっても見た目に変化は殆ど無い。……もうちょっとムキムキになっても良いんじゃないかな。


心臓の音が煩い。周りにも聴こえそうなぐらい煩い。尋常じゃないくらい緊張している。こんな事は初めてだ。ゲームの大会に出た時よりも緊張している。


もうすぐ戦が始まる……。本陣から合戦の合図があれば前線の俺は敵軍に突撃をしなければならない。止まれば後ろに押され踏み潰される。止まる事は出来ない……。進んで進んで進み続けなければならない。……死にたくない……!


『ぶぉーー!!』


法螺貝が鳴った!!合戦の合図だ!!落ち着け、慌てるな、逸るな。大将からの指示を待て……。


「全軍、突撃じゃー!!」


『おぉーー!!』


号令とともに走り出す!!このタイミングで技能の『超集中』を使う!!するとまるで海の中に入ったかの様な感覚に陥った。周りがスローに見える。いける、落ち着いている。

矢が降ってきている。すると体が勝手に反応し、自分の周りの矢を全て鬼切丸で薙ぎ払った。敵軍に動揺が見れる。これはチャンスだ、と思い更に速度を上げた。背後から声が聴こえるが何と言っているのかは分からなかった。


敵軍の目の前まで来た。あまりの速さに驚いている様で俺への対応が遅かった。目の前の敵を両断しそのまま刀を返して横に回転斬りをした。周りの敵は殆どいなくなってしまった。まさか鎧ごと斬れるなんて、素晴らしい切れ味だと思った。

敵は俺の事を警戒している様で誰も突っ込んで来ない。ならばこのまま敵本陣に向かおうと思い、一直線に敵を斬り殺していった。



―――



〜織田信長〜



「報告!右翼優勢!敵の第一陣を突破し、本陣に迫る勢い!」


「うむ!良くやった!下がれ!」


「はっ!失礼致しまする!」


伝令が下がるのを見届けてから周りに視線を向けた。


「右翼の指揮は森三左衛門可成(よしなり)殿でありますね、流石は攻めの三左でありますな」


「うむ、少し妙な事があった様だがな……」


「妙な事とは?」


「……あれは右翼が優勢というよりは右翼の中の一部分が突出している様に俺は見えた。恐らく余程武勇の誉れ高い者が居たのであろう。合戦後が楽しみだ。また新しい逸材を見つけれたやもしれぬなぁ」


クックックっと笑うと池田勝三郎恒興(つねおき)が不思議そうな顔で此方を見ている。


「犬山勢はどうだ?」


「はっ、岩倉勢の背後から攻めかかり、挟撃に成功しているようです。このままいけば岩倉勢は多大な損害を被る事になるかと」


「うむ、間違い無いな。この戦貰ったな」



―――



〜織田信勝〜



いったいどれほどの敵を殺したのだろうか、百を超えてからは数えていない。『超集中』の効果は後どれほど続くのだろうか。この技能は視野が広くなる代わりに周りの音が入りづらくなると言う欠点がある。もう少し練度を上げれば改善されるのだろうか。

不思議と疲労感は無い。恐らく『超集中』のお陰だろう。取り敢えず効果が続いているうちに倒しまくらなければ。


それからまた何人か討ち取ると、目の前に立派な馬印を立てている騎馬武者がいた。恐らくあれが総大将だな?


「敵軍総大将と見受けられる。俺は織田家足軽、織田勘十郎信勝!」


「……!織田信勝……。……そうか。皆、殺れ!」


騎馬武者は名乗らず、周りの騎馬兵に指示を出して俺に突撃させた。

騎馬兵とはリーチの差が有る。いくら太刀とはいえ馬上からの槍には敵わない。

そこで俺は飛んだ。ジャンプすると騎馬兵よりも上に目線があった。そのまま一人の騎馬兵を袈裟(けさ)斬りで倒して、倒した騎馬兵を足場にして他の騎馬兵に襲い掛かった。僅か三十秒程で騎馬武者の周りにいた騎馬兵を討ち取った。


「……大人しく、その首を寄越すのだ」


そう一言言うと敵騎馬武者は


「……降伏致す……」


と、小さい声で言い、下馬した。

すると『超集中』の効果が切れたのか、ドッと疲労が出てきた。倒れそうになるも平静を装った。まだ油断はしてはいけない。俺を騙そうとしているのかもしれない。或いは影武者の説もある。


「織田兵衛信賢だな?」


そう問うとゆっくりと頷いた。……一応鑑定もしておくか。



 名前:織田兵衛信賢

 レベル:13(2215/4600)

 年齢:20

 職業:岩倉織田家当主

 状態:健康(絶望、不安)

 体力:66/100

 筋力:13     

 頑強:11

 敏捷:18

 器用:25

 知能:21

 精神:19

 技能:剣術(初級)、弓術(初級)、槍術(初級)、算術(中級)、治水(中級)、建築(初級)

 装備:騎馬鎧、


どちらかと内政官の様な能力値だな。でもこの能力値ならば心配は必要無いな。

俺は織田信賢を押さえ付け、息を大きく吸って、吐いた。

そして、大声で我等の勝利を叫んだ。


『敵総大将、織田兵衛信賢降伏致した!!我等の勝利だー!!』


一瞬、沈黙があった。しかし、直ぐに周りで勝鬨(かちどき)が起こった。幸運にも敗戦兵は全て降伏した。無駄な戦闘は無かった。

生き残った……。勝ったのだ……。あまりの嬉しさにガッツポーズをあげた。死ななくて良かった……。



―――



〜織田信長〜



本陣にて此度の合戦の仕置を行う。本来であれば清洲に戻ってから行うのだが、夏場ゆえ首が腐食してしまう恐れがあるため、俺の本陣で全てを済ましてしまおうという事にした。

今俺の目の前に縛られている男がいる。織田兵衛信賢。最初報告を受けた時は耳を疑ったわ。まさか右翼が本陣急襲を敢行していたとはな。しかもその立役者があの勘十郎であった事には伝令に聞き返してしまったわ。右翼の先陣を率いて敵陣の隙を狙い一点突破……。並外れた戦術眼よ。もし、あの時奴が降伏していなければ……。いかんいかん思考に耽ってしまったわ。仕置を始めなければな……。


「此度の仕置を始める。まずはその方、織田兵衛信賢の処遇についてだ。お主何故俺に降伏した?」


兵衛を睨み付ける!すると兵衛は決まり悪そうに目線を逸らした。ふん、詰まらん。睨み甲斐の無い詰まらぬ男よ。

兵衛は少し沈黙した後、ぼそっと一言発した。


「……戦意が……折れ申した」


戦意?此奴は何を言っておるのだ?本当にこの様な小物が総大将なのか?信じられん……。


「我等は挟撃を受け、撤退するか、このまま前進するかの判断の最中でありました。某は後ろに活路を見出し、撤退の指示を出したのです」


ふむ……、まぁ妥当な判断だな。後ろの方が兵数は少ない。撤退する方が被害は少なく済み、籠城に備える事が出来る。この判断は間違っては無いだろう。まぁ正解でも無いがな。


「するとそこに一人の足軽兵が現れたのです。名は織田勘十郎信勝、貴方の弟でございます。その足軽は体型に似合わぬ大太刀を持っておりました」


「……」


「某は供廻り衆にその足軽を殺すように命令しました」


「……」


「しかし、一瞬にして某の供廻り衆は返り討ちにされました。騎馬していたにも関わらず、足軽兵に殺されたのです」


「その様な光景を見てしまっては戦う気など失せてしまいました」


「……ふむ、お主の言い分は分かった」


……さて、如何するか。


「……お主は追放処分と致す。ある程度の金銭を渡すゆえ我が領内から立ち去れ。次俺の目に入れば殺す」


「はっ!寛大な御処置、有難うございまする!」


「連れて行け!!」


……よし、これで一つの問題が終わったな。次は首実検か……。此度の戦で我等は800を討ち取った。主に右翼勢の手柄だ。その中でも一際目立っていたのが勘十郎だ。此度の戦の被害が予想以上に少なかったのも奴の働きによってだ。とても喜ばしい事であるな……。


名だたる武将の首実検が終わった。著名な者としては、林弥七郎、織田七郎左衛門、山内猪之助盛豊、などがいた。そして、岩倉織田家は我等に吸収される事になった。

遂に尾張統一を果たしたという事になるな……。

ここまで来るのに六年もかかってしまった。人間五十年、残り半分で天下統一……。急がねばならんな。

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― 新着の感想 ―
[一言] ノーマルミッションクリア報酬があるはず
[良い点] 自分はステータスを見てニヤニヤできる人間なので、好みの話です 主人公の行動力があるので、成長に期待できます [気になる点] これから説明がされるかもしれないので必要なのかわかりませんが、ス…
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